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PACE2-4→わになみだ6

†お願い†

 

 

 

君に名誉をあげよう。

 

左胸に美しく。

 

君に恐怖をあげよう。

 

左胸に奥深く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**********

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高い高い塔を見上げ、鈴欠は人知れずため息をついた。

機嫌が悪そうなのは呼び出されたのが嫌なのか、ただ単に天使の大群に教われたからか。

白いワイシャツは所々赤くなり不思議な文様を描いている。

重々しい音をたてて扉が開く。つまらなそうに目を細めた鈴欠はもう一度ため息をついて足を踏み入れた。

 

「あぁ、やっと来たよ。」

 

「あらあら血塗れ、綺麗なお顔が台無しだわ。」

 

「彼に聞こえないように言いなさいよ。機嫌悪そうじゃない。」

 

「あいつはいつでも無表情だからな。」

 

声の主の姿は見えない。当たり前だ、まわりは闇で囲まれていて、何かが見えることはありえない。

鈴欠はかまわず歩をすすめていたが、ふと、止まった。

 

「…灯りつけないのか。」

 

「敬語、忘れているよ。君はそれがいいんだけど、それは二人きりの時にして。みんなが嫉妬する。」

 

「申し訳ありません。」

 

ぱちん、という音。それを合図に部屋中の蝋燭に火がついた。

永遠につづく部屋、天蓋付きの黒いベッド。そして四人の男女が浮かび上がる。

 

「やぁ、久しぶりだね。何年ぶり?君はなかなか集まりにこないから忘れてしまったよ。」

 

色素の薄い髪をした男が軽く手を振る。鈴欠はつまらなそうにため息をついた。

 

「…10年くらいだろ。」

 

「あら、10年も?通りでかわったと思ったわ。まだ下等種族の方々とお付き合いなさってるの?」

 

赤い髪をした女が、同色の瞳を細めて笑う。

 

「あまり禁句を口走ると殺されるから注意しろよ。あいつは気が短い上に下手に強いから。」

 

そう答えたのは黒髪の男。軽くネクタイを緩めると隣の女に、なぁ。と相づちを求める。

 

「そうね、あたしとしてはその格好どうにかしてほしいけど。血塗れじゃない。」

 

茶髪を揺らしてそういった女に一瞬視線をやった鈴欠は、すぐに目をそらした。

 

「皆喧嘩しないで…あぁ、よく来たね。待っていたんだよ。君のことを。」

 

「有難うございます…。」

  

静かに頭を下げた鈴欠に、闇を背負った神はほほえむ。

 

「いらっしゃい……シュリアシェリア。」

 

ほほえんだ鈴欠…いや、シュリアシェリアは、そっと神に口付けた。

 

「さて…皆に話があるんだ。僕のお願いきいてくれる?」

 

全員が静かに頷いた。

 

「どうぞ神の御心のままに。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*.゜・。.・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝、ふと目が覚めると師匠が机で爆睡していましたとさ。

 

「ぇ。師匠…?」

 

突っ伏しちゃってるからたぶん寝てるんだろう。向こう側に落ちた左手がだらんとたれ下がってる…。

窓の外はまだ薄暗い。今から起こしてベッドに寝かせようか、微妙に悩みどころだ。

 

「どぅしよ…。」

 

「弥殿…起きていたのか。」

 

「あ、基さんおはようございます。どこにいってたんですか?」

 

ドアをあけて入ってきた基さんに問うと、きびきびとした返答が帰ってきた。毎回思うけど、基さんってかっこいい。

 

「外で少しばかり司令官殿に報告をいれていた。…鈴欠様はそんなところでお休みになっているのか…。」

 

「みたいです…。起こしたほうが………!」

 

何か、聞き慣れない高い大きな音がして言葉を止めた。それがモニカさんの悲鳴とわかったのは数秒後。一番反応が早かったのは寝ていた師匠だった。

 

「早いな…。」

 

僕らなんか目に入らない様子で、師匠は立ち上がる。上着を取るとさっさといってしまった。

 

「弥殿も。」

 

「あ、はい。」

 

あわてて基さんのあとを追う。白い廊下の向こう側。礼拝堂の様子がおかしかった。

 

「…!」

 

はじめに見えたのは投げ出された白い足。黒のサンダルは足から外れて不思議な形におかれている。

次に見えたのは体。黒い服は変な色に変色して、左胸に傷がある。

嫌な予感。

もしかしてこれ…。

そっと、基さんを見上げる。

基さんは師匠をみていた。

無残なサラさんを、冷静な表情で見下す師匠を。

床を汚す大量の血液。

白い手は何かを求めるように肘掛にかかっていた。

 

「……っ…。」

 

師匠が、やったんだろう。

わかってる。これが仕事なんだ。わかってる。

でも、師匠が恐い。

 

「…サ、サラ、さんがっ……し、神父様どうしよう…!」

 

「…モニカさん落ち着いて。早朝で悪いですが然るべきところに連絡しましょう。彼女もこのままでは可哀想ですから…リーザさん何か掛けるものを。……リーザさん?」

 

頷いて走っていったモニカさんに対して、リーザさんは床を凝視したまま動かなかった。

 

「リーザさん?」

 

「あ、あっ、はい。なんですの?」

 

「…大丈夫ですか…?いや、大丈夫なわけないですけど…。」

 

師匠がリーザさんを覗き込む。少し考えたあと、何か耳元でささやいた。

 

「わ、かりましたわ。持って参ります。」

 

そういったリーザさんはその場にそぐわないような笑みを浮かべて歩いていった。少しぞっとする笑い。

 

「さて…あぁ、ほかの方はいつもどおり仕事をお願いします。それとサラさんの旦那さんと町の方に連絡を。」

 

師匠の声に集まっていた人が散々になっていく、最後にサラさんに向かって十字をきると僕らのほうに歩いてきた。

 

「…。」

 

「…ししょ…。」

 

「あぁ基、今日は頼んだ。今日一日、俺は休業。」

 

「師匠っ!」

 

「大声で呼ぶときは父さんと呼べ。ついでに綺麗事はききたくない。それと、これが俺の仕事だ。」

 

冷たく言い放った師匠が上着を翻して歩いていく。追い掛けられなかった。

 

「…。」

 

振り替えれば、無残なサラさんが天井を見上げてる。見開かれた目からは、涙のあとが伝っていた。

そっと、目をふさがれる。

 

「…あまり、見ないほうがいいかと。」

 

基さんがそう言ってはじめて、悲しくなった。

昨日言葉をかわしたばかりなのに。今日はもう動かない。

なんだかそれが不思議で悲しくて目を閉じた。

頬に何かが伝わる。

 

「弥殿?」

 

「…すみません。大丈夫です。」

 

基さんにはそう言って部屋に戻った。いると思った師匠はいなくて代わりに端末が震えてる。

 

「…。」

 

無視してベッドに寝転んだ。

もう一回寝よう、よく解らないし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆。・゜.*。・゜.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弥が寝入った頃、そっと部屋のドアを開けた鈴欠はため息をついた。

 

「やっぱりこうなるんだな。」

 

その呟きは何処へ向けたのか。弥と鈴欠しかいないこの部屋では返事が返ってこない。

 

「…なんというか、俺も俺か。」

 

「鈴欠様?」

 

「あぁ、基。何だ?」

 

いつものように鈴欠が振り向く。それは本当にいつもと同じで、酷く痛々しく見えた。

 

「このままでよろしいのか。」 

 

「よろしいもなにもどうしようもないだろう?」

 

「だが。」 

 

「あらかた予想はしていたさ。まぁ打開策はないからどうしようも無いんだが。」

 

くつくつと笑った鈴欠は、まぁどうにかなるさ、と呟く。それは基に言っているのではなく、自分に言い聞かせているように、基には感じた。

 

「鈴欠様は……。」

 

「あぁそうだ基。神から贈り物を貰ってきたからお前に託す。」

 

人の話は全く無視の方向で鈴欠は話を進める。咎める気も失せたらしい基は、小さくため息をついた。

 

「……何か。」

 

「あぁ、天使20人だ。」

 

「…は?」

 

「いい反応だな。天使20人。まぁこんな贈り物、俺に言わせれば悪趣味この上ないが。まぁ神の贈り物を無下には出来ないからな。」

 

だから頼んだ。と鈴欠は笑う。それに引きつった笑いを返した基は、ふと切り返した。

 

「鈴欠様への贈り物なのだから鈴欠様が受取るのが道理ではないか。」 

 

「馬鹿言うなよ。俺は今日裁判日だ。それも環境が違うからたぶん動けない。戦える奴はお前しかない。これでも反論するか?」

 

基は小さくため息をついた。項垂れるように頷いて椅子に座る。

 

「鈴欠様、大丈夫なのか?」

 

「……ん、まぁ、死にはしないからな。」

 

「だが……。」

 

「ん、そんなに心配か。じゃぁ俺は寝るからあとは全部頼んだ。よし。」

 

「は?!」

 

「ん、じゃぁ頑張ってくれたまえオスカーくん。」

 

「ま、待て鈴欠…。」

 

言葉は追いつかず鈴欠はひらひらと手を振って寝てしまった。

 

「……。」

 

全くもって無責任な高位悪魔の行動に、静かに頭を抱えた基はため息をついたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「起きたか?」

 

「ぁ、はい。」

 

かけられた言葉に、思わず言葉を返す。そうか、と呟いた師匠は、窓枠に手をかけて外を眺めていた。

 

「あの…。」

 

「ん?」

 

「……大丈夫ですか?」

 

「……あぁ、まだ、時間じゃないからな。」

 

「そう、ですか。」

 

会話が途切れた。

 

「…今日、礼拝堂に行くなよ。」

 

「はい?」

 

「…まぁいいが。」

 

なんだろう、首を傾げると師匠が時計をみた。そろそろ寝るか、と呟く。

 

「あの。」

 

「あ?」

 

「師匠は、つらくないんですか?」

 

師匠は窓の外を眺めたまま、しばらく黙っていた。

風が吹き込んで少し肌寒い。師匠の髪がゆらゆらゆれて何だかきれいだった。

 

「…解らないな。」

 

「え。」

 

「…つらいかなど、もう忘れたさ。なんといっても初仕事は400年以上前だ。…忘れないとやっていけない。」

 

師匠の言葉は小さくて。やっと聞き取れるくらいだった。

 

「…そう、だな。つらかったのかも知れない。」

 

「…。」

 

「こういう仕事は…できれば、やりたくない。」

 

「…師匠。」

 

「…まぁ…しなくてはならない事だからな、文句は言わんさ。」

 

肩をすくめた師匠がため息をついた。窓から離れ、静かに閉じる。

 

「まぁ、おまえにこの仕事は向かないだろうから参考にするなよ。…俺は少し休む。」

 

「師匠あの…。」

 

「あ〜あ〜いいからお前ちょっと黙れ。いいか?ガキはガキなりに無駄なことやってればいい。それについて、俺は咎めない。ただし、あー……あまり心配を掛けるな、怪我とか病気とかしたらコトだろうが。心配なんだよ馬鹿だから。…………ぁ。以上っ!」

 

今師匠なんていった?

予想外の言葉に頭がついていけなくて問い返す。

 

「え、今師匠なんて…。」

 

「同じコトは言わん!ていうか一生言うかあんなこと!」

 

「えー?師匠心配なんですか?」

 

「聞こえてるなら聞くな!つーか黙れ!」

 

「やーですよー。へー師匠心配なんですかぁ〜。」

 

からかうとベッドに座った師匠は乱暴に頭をかいて、それから顔をあげた。

 

「ちょっとこっち来いお前。」

 

「はい?」

 

近寄っていくと頭を捕まれた。左手で鷲掴み。結構痛い。

 

「…眠れ光の因子。すべての刻を止め、忘却の海に沈め。プログラムnd0006標準展開実行。」

 

師匠の言葉が止まると閃光が走った。意味が解らないまま、意識が飛ぶ。

 

ぱたりと倒れた息子を受けとめた鈴欠は、彼特有の嫌な笑みを浮かべてつぶやいた。

 

「大人はずるいんだ。覚えておけ。」

 

そっとベッドに寝かせると、小さくため息をつく。時計をみてもう少しか、と独り言を落とした。

 

「……つらいさ。こんな仕事など、できればやりたくない。」

 

つぶやかれた言葉は本心か…それとも…?

 

 

 

 

 

 

 

  

 

落としてきたものをもっていた。

感情

正常

純粋

なくしたものをもっていた。

確かな未来

平等な優しさ

それと

誰かに向けられる深い愛


ごめんなさい!!!今回長いですι話はさほど進展していないのに…なぜでしょうιι

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