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PACE2→She is my pace marker...

    †序章†

 

 

やばい。

相当やばい。

 

左右にきられるハンドル。

軽くステップを踏むような勢いで踏まれる、アクセルとブレーキ。

そんでもって、マシンガン並みに吐き出される、大量の悪態。

僕の隣の男。

名前は鈴欠。

僕の師匠で、とりあえず高位悪魔の彼(と僕。)は、ただ今本気で逃走中だ。

 

「んだょ、俺のドラテクに勝とうなんざ、2000年早い!!」

 

左に切られるハンドル。いやもう、タイヤとか悲鳴あげてますけど。

師匠をおってきているのは、実は敵じゃない。

 

『鈴欠ぁ!!!今日という今日はゆるさん!さっさと縄に付けぇ!!!』

 

司令官様、および、本部の皆様方だ。

 

「あー、ったく。スピーカーなど使ったらご近所に迷惑だろう、相変わらずの無能っぷり、痛み入るな。さてと…。」

 

ハンドルから両手を放した彼は、ダッシュボートをあけた。前なんか全然みてない。

 

「し、師匠っ!!!前っ!壁っ!」

 

相当なスピードがでているうえに、前をみない師匠は、あった。

と何かをひっぱりだして、無表情でハンドルを切る。

 

「無線のナンバー忘れててな。やっと見つけた。とりあえずなぜか勘違いをしている司令官に話をつけないとか…。」

 

勘違いじゃない、断じて勘違いじゃない。

明日書類をだすって言った師匠は、突如女の人に追いかけられることになり失踪。

…実は地球に降りてたんだけどそれは内緒で。

書類が届かなかった司令官さんはもうお怒りで。

二週間ぶりにあらわれた師匠を思い切りひき逃げ未遂してみたりして、今にいたる。

…ひき逃げされかけた師匠は一応右肩を強打してるはずなんだけど、本人が忘れているようなので無視。っていうか、自業自得。

 

「あ〜こちら2030、司令官、少し落ち着け。以上」

 

『落ち着けない根源が何いいやがる!とまれ!』

 

「あ〜、とりあえず…とまると命が危ない様がするのだが。」

 

『お前が止まらなくちゃ俺の命が危ないんだ!』

 

「ほー。あ、俺には関係がないんだが。」

 

さらりと言った師匠は何故かご機嫌。

なんかいいことでもあったのだろうか。…もしかしてMとか。

 

『そんなに言うなら俺にだって考えがあるぞ。』

 

「何?」

 

『お前の100年代の恥ずかしい過…。』

 

ぶちん。

 

「ぇ。」

 

師匠が無線のコードをぶっちぎった。

 

「の、野郎。」

 

「は、はぃ?!」

 

「………殺す。」

 

短い宣言と共に、師匠がハンドルを切った。すごい勢いでユーターンする、車。 

「し、師匠前前前!」

 

目の前には、司令官さんを乗せた車のフロントガラス。

 

「俺を馬鹿にするなんざ、三億年はやい。」

 

短いことば。すれすれで衝突を避けた師匠は車を止めた。

 

「ん、やりすぎたか。」

 

ひょこっと、窓から顔をだした師匠は、罰の悪そうな顔をした。

 

「……おい。」

 

「はい?」

 

「コレは、逃げるべきか、降伏するべきか?」

 

師匠の人差し指の先。

銃を持った人たちがにっこりわらっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁったくもー。鈴欠サン無茶すぎません?」

 

「ひき殺されたくなかったから逃げたんだ。」

 

「せいとーぼうえいじゃないっスよ。明らかに過剰っスもん。」

 

「そんなことはないさ。俺が少しばかり力があるだけだ。あの馬鹿司令官よりもな。っ!」

 

「はーいはーい。はい、手当て終わり。頑張って説教受けてくださいね。この歳になって説教食らう人、俺ははじめて見ましたけど。レアっスねぇ。」

 

ここは医務室。

本部と呼ばれるビルに連行された師匠は、まずはじめにここに詰め込まれた。

白衣のお兄さんは師匠のことを知っているらしく、開口一番に

「お久しぶりっスね〜。」

と言って師匠ににっこりした。どことなく誰かに似ている気がする。…誰だろう。

 

「まぁ、肩大事にしてくださいね。」

 

「わかってる…。お前から頼めないか?鈴欠は無能だから仕事はできないとか、なんとか。」

 

ため息をついたお兄さんは、黒髪をかきあげて言った。

 

「そりゃ無理っスよ。鈴欠サンが無能じゃ、世界中のみんなが無能ですもん。もち、俺含め。」

 

「よく言う…。ったく、仕方ないか…。」

 

ネクタイを締めなおした師匠が、小さく舌打ちをする。

それを見たお兄さんは、小さく吹き出した。

 

「ま、幸運を祈りますよ。薄幸な鈴欠サン。」

 「本当についてない。」

 

「まぁそう言わずに。鈴欠サンに憧れる人だっているかもじゃないですか。」

 

それって相当物好きなんじゃないかなぁ。師匠は微妙な表情をして、ため息をついた。

「…怒鳴られに行ってこよう。」

 

「いってらっしゃい。あ、兄貴によろしく言っといてもらえます?」

 

「あ〜…会いたくない、却下。」

 

「はぃはい。じゃぁいってらっしゃい。」

 

軽く手を振った師匠がドアを開いた。廊下には色々な人が歩いていて何だか不思議だ。

 

「ほら、よそ見してると迷うぞ。馬鹿。」

 

「言っときますけど僕は馬鹿って名前じゃないですから。忘れ病の師匠様。」

 

「…いい度胸だな、貴様」

 

見下してくる金属色の瞳は、さすがにちょっと恐い。

何となく後ろに後退した時、後ろから声がかかった。

 

「これはこれは、見ない顔だと思ったら久しぶりだな。生きてたのか。」

 

嫌味全開。師匠の表情が最悪、と語っていた。

 

「……生憎…死ぬようなことをしていないのでね。…そっちこそ元気そうじゃないか。」

 

「まぁね。なんだか表が騒がしかったが、また君か?問題児のしずかくん?」

 

ぴくっ、と師匠の眉があがった。

話しかけてきた、金髪の男の人を一瞥すると一転、にっこりほほえんだ。

ついでに、師匠がうれしくて笑うところを、僕は見たことがない。

 

「しずかとは何処のどなた様だ?ヨウ。」

 

「君のことだよ。それと俺を呼び捨てにするな。」

 

「お前に言われる筋合いはないな、瑛。」

 

「茶化してるのか?」

 

「さぁな。」

 

満面の笑み。

(よう)と呼ばれた金髪のその人は、つまらなそうに師匠を見下ろした。

…そう、師匠のほうが、ほんの少し背が低いのだ。

 

「久々に顔をみたと思ったら説教か。下らない奴だなぁ。」

 

「そーゆーあんたはいつにも増して忙しそうだな。下半身鈍ってるんじゃないか。」

 

際どいです師匠。

どうやら二人は仲が悪いらしい。

廊下のど真ん中で睨み合う二人は、ある意味注目の的だった。

 

「女にうつつ抜かしてられるほど、暇じゃないんでね、一緒にするな。」

 

「これは心外だ。現つを抜かしてるわけじゃない。これが、俺の、仕事だ。」

 

言い切った師匠の肩に手がかかった。

 

「違うよなぁ。お前の仕事はそうじゃないよなぁ?ん?」

 

さーっ、と師匠が青くなった。

 

「鈴欠ぁ?俺の言ったことを聞かずに何でこんなところで油うってんだぁ?」

 

「あ〜。いや、これには色々わけが…。その…。なぁ、弥。」

 

こんなときばっかり、話を振らないでください。

これ以上すると、本気で師匠を呪いそうな司令官さんに、僕は言った。

 

「ちゃっちゃとつれてってください。この馬鹿師匠を。」

 

 

 

連行される師匠の目は、メデューサ並に恐かったとさ。

 

つづく

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