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2011年知恵理誕生日記念【知恵の輪が解かれる時】


1月20日(日)・PM1;45


日曜日の昼。普段は誰もいないはずの学校の屋上にこの日3人の人影があった。



???side



「はぁ…はぁ…」


「あはは♪限界ですか♪」



息が極限まで上がった日向の目の前で勝ち誇ったようにそう言うのは他でもない。


いつもは彼の右目を支配する眼帯をも凌駕する笑顔を持つ彼だが今の彼の顔にはニヒルな笑顔が浮かんでいる。




「はぁ…はぁ…」




片膝をつき手に握る模造刀を握りしめる日向。


そんな彼の瞳の先にはいつもとは違い銀色の長髪をポニーテールにする彼の幼なじみの姿。



――時間はない。日向はどうしてもあの幼なじみ知恵理のもとへと行かなければならないのだ。



だが……。




「そう簡単にはここを通させるわけにはいきません」




彼に立ちはだかる“親友”という名前の大きな壁。


それを越えなければ彼は知恵理のもとにはたどり着けないのだ。




「はぁ…はぁ…。お前を越えて…俺は必ず知恵理のもとに……行く!!」


「ヒナ君……」




日向の言葉に知恵理は少し頬を赤く染める。


輝喜は日向の言葉を聞いて両手にそれぞれ構える2丁のモデルガンを構えなおしそして日向は……。







`







「俺は絶対に知恵理のポニーテールをといてみせる!!」




――なぜか無償に張り切りながら模造刀をかまえなおすのだった。



何やってるんだこいつら?

???side




「出来た〜!!」




とある真っ暗な部屋の中。1人の少女がまるで悪の大首領のような笑みを浮かべながらそう呟いた。


そしてその手にはまるでマグマのようにブクブクと泡をたてる怪しい薬が入ったビーカー――ではなく1枚の紙が握られている。


その雰囲気は彼女のもともとの可憐な容姿とは裏腹にかなりマッチしていた。




「……ふふふ。明日が楽しみだな〜」




彼女は太陽のような笑顔を浮かべながら呟く。


その瞳には今の今まであった悪の大首領のような雰囲気を完全に潜ませて完全なる乙女の雰囲気を出している。



――それは恋する乙女の熱い瞳だった。



彼女はその熱い瞳を壁の向こう。となりの部屋にいる日向へと向ける。


あの寝ることが生きがいの彼はきっとすでに寝ていると思う。


だけど彼女にはそれで良かった。いやそれだけで彼女の心は満たされたのだった。




「明日はちゃんと1人で起きてね“ヒナ君”♪」




誰もが見惚れる彼女の穏やかな微笑みは今彼だけのものであった……。






日向side




「う…う〜ん……?」




年明けから20日がたった朝。1年に1回この日だけは1人で起きると決めている俺は眠たい目を擦りながら重たい体を持ち上げる。


その瞬間1月の肌寒い寒気が俺を包み込むように襲ってきた。




「………さむ」




布団から出るのを戸惑わさせる寒さが肌を刺す中俺は布団を引きずるようにしながら立ち上がる。


座敷童のような格好をしながら俺は部屋から飛び出すとそこにはいつもよりも何色も色褪せてしまった寂しい空間が待っていた。


いつもなら制服にエプロンを纏った我が自慢の銀髪幼なじみが朝飯を作っているが今日はいない……。


俺は色気のないその部屋を遠い目をしながら眺めるのだった。




「……今日は知恵理の誕生日だな“兄貴”」




俺は寂しい思いを誤魔化すためにそっと言葉を紡いだ。



毎年1年に1回だけ訪れる“知恵理のいない”この寂れた朝に終止符を打つために……。




――――――――


――――――


―――





バタンッ!!!!!!




「さて!!今年は勝たせてもらうぜ!!」




そう言って俺は元気よく家を出た。


では改めましておはようございます!!知っていると思うけど“不知火日向”だ。


今年は絶対勝つ!!



――ん?なんでいきなりそんなに元気になってるかって?


んなの決まってんだろ!!






さっきまでのあのシリアスムードはただの寝不足だったからだ!!


以上!!何か文句あっか!?もちろん問題nothingだろ?



――まぁ実際は憂鬱の理由はもう1つあるんだけどな。


昼間や夜は知恵理の誕生会で楽しいんだけど朝はやっぱ思い出しちまうんだよ。


今日は知恵理の誕生日と同時に……。




「うぃーす日向」




再び憂鬱な気持ちになりかけたとき俺の耳を元気な声がつんざいた。


朝のこの時間にこんな場所で意味不明な登場をしてきた謎の人物。



通称【助っ人“馬鹿弟”】



――が現れた。




「……まさかと思うが今年の俺側の助っ人はお前なのか真備?」




そんな助っ人“馬鹿弟”こと羽前真備の登場に俺はあからさまに肩を落とす。


なぜならこいつはこの闘いにはまったくと言っていいほど役にたたないからだ。




「なんだよもっと喜べよ日向……今年の日向側の助っ人は俺だけだぜ?」


「……最悪だ」




俺は真備の言葉にさらに落ち込み床に膝と手をつくいわゆるorzの格好になる。


なぜなら今回の闘いの勝率がガクッと下がってしまったのだ。


その理由は……。




「知恵理の側には凪と輝喜が助っ人に行ったのかよ」


「そういえば家を出るときに姉貴が“自分のくじ運を恨むのね”って伝えてくれって言われたぞ?」


「……凪。じゃあ遠慮なく恨ませてもらうぞ」




あんたのせいで今回は負け戦だぞクソ神様!!


あんたなんて大嫌いだこのあほんだら!!!!!!


俺はあんたの存在を信じてるよ!!じゃなきゃ誰も恨めないからな!!!!!!


だからそんなあんたが大嫌いだー!!!!!!




「……はぁー。凪から例の物貰ってんだろ真備?さっさとよこしやがれ」




ひとしきり心の中で神様への恨みを叫んだ俺は真備に右手を差し出す。


これは毎年恒例のこと。


それを受け取った瞬間にゲームスタートとなるのだ。




「はいはいこれのことだろ……今年は勝とうぜ日向?」


「ん。サンキュ。それと勝つなんて当たり前だろ?」




真備がポケットから三つ折りにして小さく折り畳まれた紙を出して俺の差し出した手に渡す。


それを受け取った俺はさっそく受け取った紙を開きながら真備の言葉にしっかりと応えた。


長い付き合いだから必要以上の長ったらしい言葉はいらない。それが俺と真備の関係だ。




【第4回 誕生日宝探し】




そう書かれた紙を見て俺達は闘志をみなぎらせるのだった。






┏━━━━━━━━━━┓


〜〜宝探しルール説明〜〜


①今大会は“探す側(日向)”と“隠す側(知恵理)”に別れて行われる


②日向側には1人知恵理側には2人助っ人が参加する


③朝7;00〜昼2;00まで行われ日向側は宝を見つければ勝ち宝を最後まで守り抜いたら知恵理側の勝ち


④負けたチームは罰ゲームとして知恵理の誕生会の後片付けをする。ただし知恵理はこれには含まれない


⑤なおこれは毎年知恵理を楽しませるために行われる大会である


┗━━━━━━━━━━┛





「で?今回の宝は何だったんだ日向?」


「あぁ…俺が昔プレゼントした【桜の髪留め】だってさ」


「髪留め?」




真備が不思議そうな顔で聞き返してくる。


だがそれも無理はない。なぜなら知恵理はこれまで1度も髪留めを使ったことがなかったからだ。



あれは……特別だから。



たぶん知恵理もそれが分かってるから今回あれを使ったんだろうな。




「……まぁいいか。じゃあさっそく探しに行こうぜ最初のヒントは何だったんだ?」




俺の哀愁が漂う様子を悟ったのか真備はそう言って話をそらしてきた。


まったくこいつは本当にいいやつだよ……。




「……あぁ。じゃあさっさと終わらせるか!!」




だから俺はありがたく真備の気遣いにのらせてもらうことにした。


空元気かもしれないけど元気よくそう言った俺に真備も笑顔になって俺の持つ紙を覗き込んできた。




「え〜となになに……」




“AM7;21”宝探し開始。






知恵理side



「知恵理。その髪型似合ってるわよ♪」


「ありがとうナギちゃん♪」




こんにちは♪姫ノ城知恵理です♪


今日の私は少し違っちゃっています。


理由は簡単。今日の私はいつもおろしている長い銀髪を頭の後ろの方をリングで止める。いわゆるポニーテールという髪型をしているからです。




「2人とも。急いで行かないとヒナタンとマキビンが来ちゃいますよ?」


『は〜い♪』




ちなみに現在はナギちゃんとコウ君と一緒にとある場所に向かっています。


その場所とは……。




「輝喜。梅ちゃんの許可は取れたの?」


「もちろんですよ♪やるときはとことんやるのがあなたのポリシー何でしょうナギリン?」


「その通り!!」




ナギちゃんとコウ君の会話に出てくる皆さんは梅ちゃんことを覚えてるかな?


じゃあ忘れた人のためにおさらいタ〜イム!!



梅ちゃんこと“松竹梅太郎”は私達のクラスの担任で私達とは中学1年から同じクラスなの。


学校内ではフレンドリーな性格だからかなり人気な先生だから私達は敬意を込めて“梅ちゃん”って呼んでいるんだ。



というわけで梅ちゃんの説明をしたしさっきのナギちゃんとコウ君の会話で分かったと思うけど私達が今向かっている場所は……。




「知恵理見えてきたわよ。私達の闘いの地が……」


「チエリン。今回は今回はあそこで絶対勝ちましょう」




振り返って私に笑顔を見せてくれる2人に私も微笑み返すと目の前の建物を見つめました。


普段から通っているこの大きく白い建物。




「うん。絶対勝とうね2人とも♪この“桜時学園”で」






{unkown}side



[{赤青緑黄…}の{2③}{*①}{0③}{3②}が{αβ9}する人の為に考えた物]



《解きたい人はまだ下には行かないでください》










最初に書かれた紙にはどうやら暗号らしき言葉でこう書かれていた。


おそらく普通の人間ならこれを解くのにかなりの時間がかかるだろう。



だが皆さんはお忘れかもしれない。今作品の主人公であるこの少年。


IQ200の天才であることを。




「……そうか分かった!!」


「はやっ!?」




暗号を解き始めてからわずか5分。日向が暗号を解読することに成功していた。




「お前もう分かったのかよ!?早すぎだろ!?」


「問題nothing!!こんなの朝飯前だっつうーの!!」




実際に日向は朝飯前である。




「んじゃあ説明するから耳の穴しっかり開いて聞けよ?」


「おう!!」




そう言うと日向はまず暗号の{赤青緑黄…}のところを指差す。


そこの部分に含まれる意味とは?




「真備。この4つの単語から考えられる言葉はなんだか分かるか?」


「……なめられたもんだな日向。そんなものが分からない俺じゃないぜ!!」




真備はどこか自信満々な様子で日向の言葉を鼻で笑いながらそう言う。


その瞳には迷いなんてなく1つの答えしか見えていなかった。






「【ゴレンジャイ】に決まってんだろ!!!!!!」






――ただし間違った答えであったが……。




「違うわ!!なんで答えをすっ飛ばして別のものにしてんだよ!?」


「え!?違うのか!?」




本気でそう思っていたらしい真備はかなり驚いた表情で叫んだ。


朝からかなり近所迷惑である。




「てめーの頭の中は一体どうなってやがんだよ!?赤青緑黄から想像つくものがゴレンジャイって幼稚園か貴様は!?」


「んなわけねーだろ!!最近の仮面ラダーとか面白いんだぞ!!高校生でもみてる奴いんだぞ!!ダルとかオガとかなめんなよこの腐れ主人公!!」


「知るかっ!!しかも仮面ラダーじゃなくてゴレンジャイの話だろ!!さらに言わせてもらうと話が月あたりまで脱線してるわ!?」


「知るかそんな――」


「言い訳していいわけ!?」


「それお前のセリフじゃねーだろ!?」




――不毛な闘いはこれからさらにかつ無駄に30分も続いた。


お前らもっと真面目にやれよ!?




〜30分後〜



「……この言葉が示す内容は【色】だ」


「【色】?」



あれから2人は殴り合いの喧嘩になりかけるもたまたま近くを通りかかった“金髪で医者で片言な日本語”の人に止められて現在に至っている。


ちなみにその人は去り際に



「コマッタコトガアッタラ“クリニック”ニクルトイイデスヨ?」



と言って立ち去って行ったとてもいい人である。


話を戻そう。




「まぁまず【色】のことは置いといて次は簡単そうな{αβ9}の方から説明するぞ?」


「あぁ」




{赤青緑黄…}の所から最後の{αβ9}の所に指を移しながら日向はそう言うと真備は頷く。




「最初に聞いておくが真備。お前が日本語以外で知っている言語を教えてくれ」


「………英語?」


「その間がかなり気になるがまぁ今は無視してさすがのお前も笑顔は知っているみたいだな」




真備は目を反らしながら黙って頷いた。


本当に真備は中学三年生なのだろうか?




「……じゃあ真備。英語は何の文字でできているか知ってるよな?」


「……………万葉仮名?」




真備のボケに敬礼!!




「お前万葉仮名なんてよく知ってたな!!」


「へ?あ、ありがとう?」




しかも逆に日向に誉められてるし!?




「さてそれはそれで置いといて……真備?英語はアルファベットで書かれてる。これテストに出るから覚えとけよ?」


「お、おう」


「で、このアルファベットなんだけど。実はアルファベットの語源こそがここに書いてある二文字αとβなんだよ」


「……それが?」


「お前も鈍いな?いいか?アルファベットの語源はαとβ。この暗号に書かれてあるのは{αβ9}つまりこれが示すのはアルファベットの9番目の文字ということだよ」




日向の言葉に真備は指を曲げてアルファベットを数え始める。


ていうかアルファベット自体は知ってたみたいだな。




「……F…G…H…I?」


「ん。そういうことさ」




真備の右手の指が全部曲がって左手の指が小指を残して曲がったのを確認した日向はいよいよ最後の暗号を指差した。


真ん中にある一番ややこしそうな暗号である。




「最後の暗号だ。……とそれを解く前にと」




日向はそう言うと右のポケットからある物を取り出した。


赤い色の【携帯電話】である。




「携帯電話か……?」


「あぁ。最後の暗号にはこれがいるんだよ」




日向は真備の言葉を聞きながら携帯電話を開きメールの覽を開く。


そして新規メールの覽を開いて真っ白な何も書かれていないページを開くと真備に見せた。




「いいか真備?携帯のメールをうつためにはこんな風に数字の部分を何回か押して文字をうつんだ」




そう言うと日向は真備に見えるように5の数字を5回押してな行を一周させる。




「……すまん。俺機械音痴だから分からん」


「気にするな。これはただの俺の自己満足だ」


「そうだったの!?」


「……で。これと暗号の関係だけど……」


「無視して進めんな!?」




説明しても無駄だと分かった日向は真備を無視して話を進めた。




「この暗号の普通に書かれた数字の部分。これは押すボタンを指定してるんだと思う。*があるからこれは確かだ。次にこので囲まれた数字の方。これは押す回数を表してるんだと思う……それを踏まえて携帯に入力すると……」




ピポパピ……




日向は光速にもなるスピードで携帯に文字を入力していく。


すると最後に出てきた文字は……。




「ぐ…ん…し…【軍師】」


「【軍師】ってなんだ?」


「昔闘いにおいて様々な戦略を考えたいわゆる軍隊の頭みたいな人物のことだよ……で。これを合わせてみると……」


「【色】の【軍師】が【I】する者の為に考えた物?」




これを見ても真備には未だに分からないみたいだ。


そこで日向は文字をかえはじめる。


【色】→【蜀】に【I】→【愛】に変えて再び真備に見せた。




「……読めねー」


「これは(しょく)って読むんだ。つまり蜀の軍師が愛した人のために作った品物を探せってことだよ」




日向が説明すると真備は難しい顔のままだが何とか納得はしたみたいだ。




「……でもよ。これじゃあ誰だかわかんねーじゃん?しかも作ったものもわかんなくねーか?そんな状態でなんで図書館に行くんだよ?」




そう言って図書館の方へ歩き出そうとした日向は真備の言葉に立ち止まる。


すると日向はくるりと一回転すると最高に嫌らしいを浮かべながら唇を震わした。









「名軍師【諸葛亮孔明】を調べるためさ!!」






知恵理side



「はい…はい……本当にありがとうございます。」



ピッと音を立ててナギちゃんは携帯を切ると少し悔しげな顔でこちらに振り返る。




「たった今ゲイル先生から連絡があったわ。どうやら日向達が暗号を解いたみたいよ」


「はははは♪やっぱり早いねヒナタンは♪」




ナギちゃんの言葉を聞いたコウ君が本当に楽しそうに笑いながらニコニコとそう言いました。


そんな様子を見ているとコウ君はこのゲームを楽しんでるように見えるけど……握力で潰れたさっきまで食べていた右手のリンゴのせいでその考えは真逆になってしまっていた。




「コウ君リンゴ……」


「あらら。これはもう食べられないな♪はははは♪」




目が笑ってない!!??




「そんなことはどうでもいいのよ!?それより問題はこれからについてよ!!」


「う、うん……ヒント①の謎はヒナ君達解いたんだよね?」


「えぇ。残念ながらそういうことになりますね」




コウ君は右手をハンカチで拭くとやれやれと肩をすくめる形になる。


そしてコウ君はため息をつきながら肩に担いだゴルフバッグを担ぎ直すと私を手招きして歩き出しました。




「コウ君。それ使うの?」


「はい。ナギリンの方も今日は本気で勝ちにいくみたいです。家からあんなものまで持ってきてますから」




コウ君が肩に担ぐゴルフバッグがゆらゆらと揺れる様子を見ながら私はさらに不安になりました。


階段を上がる脚を止めて後ろを振り返るとナギちゃんもすごく怖い顔で両手に光る物を構えていた。



ほ…本当に大丈夫なの?



自分の顔が引きつるのを感じながら私は小走りにコウ君を追いかけていった。






日向side



「……そうだったのか」



図書館にて【孔明】について調べた俺はそう呟くと持っていた本をパタンと閉じる。


あれからおそらく2時間くらい。俺はやっとこさ知恵理の暗号をとくことができた。




「ぐぅー…ぐぅー…」




ちなみに横で本を枕に眠りについているバカは調べはじめて約2分くらいで眠りにつきやがった。



――こいつ本当に何しに来やがったんだよ……。



気持ちよさそうに寝息をたてる横のバカ。


周りにいる図書館の利用者もかなり迷惑そうだ。




「おい。起きろ真備」




図書館だということを考慮して少し小さな声でそう言いながら真備の肩を軽く揺らす。




「ぐぅー…ぐぅー…」




だがその程度で起きる真備じゃなかった。



――はぁ…俺も今度からは知恵理に迷惑をかけないように早めに起きようかな…いや起きる!!



ちなみにこれは朝日向の寝顔を見るのを楽しみの1つにしている知恵理に却下されました。




「真備!!いい加減起きろ!!」




今度はかなり静かにしかし強めにそう言いながら激しく肩を揺らす。




「うーん……うっさい…死ね……ぐぅー…ぐぅー…」




ブチッ!!!!!!




後に勉強のため図書館に来ていたとき。この様子をたまたま目撃した桜時学園中等部2年1組の女子生徒は確かにその音を聞いたと語った。


そしてその瞬間周りの温度が5℃下がり日向の顔がこれ以上にないほど笑顔になったとも……。




「……O.K.そっちがそのつもりなら……皆さん最初に謝っておきます。ご迷惑をかけてごめんなさい」




淡々と…冷徹に告げられた言葉に彼女は震えが止まらずただその場にいた全員がコクコクと頷くしかできなかったそうだ。



――わ、私確かに見ました!!不知火先輩の背中に鬼の顔をした阿修羅の姿を!!



彼女が涙ながらに語ったその日の出来事は“魔王が生まれた日”と後に語られるようになるのだった。




「……問題nothing」




ガシッ!!!!!




冷徹とも呼べる声を出しながら俺は真備の頭をガッシリと鷲掴む。


だがそれでも真備は起きなかった。



――クククッ…そうしてられるのも今のうちさ。



俺が笑顔だった顔の唇を歪ませると周りにいた全員の顔が青ざめた気がした。


なんでだろうな?




――まぁ、今はそんなことより……。









`










「さっさと起きろ……!!こんの【検問消去】が!!!!」




ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!ガンッ!!




「ッギャーーーー!!!!!!」




容赦なく頭を机に何度も打ちつける彼の姿はその場にいた人すべてのトラウマとなった……。




――――――――


―――――


―――





「……そうか。あれが臨死体験というものだったのか」




さっきまで日向達との出会いは…とか。マックで会ったあの兄ちゃん結局注文しなかったな…とか一時ぼやいていた真備は何かを悟ったようにいきなりそう呟いた。



ちなみに図書館はあの後すぐに館長さん直々が出て来て追い出された。


だけどその際追い出された理由が……。




「お客様…!!どうか!!どうかテイクアウトで…!!」




――あれどういう意味だったんだろうな?


あと本をテイクアウトってどういうことだよ?


マックじゃないんだから本の貸し借りをテイクアウトなんて言うなよな。




「…………はっ!?」




ん?どうやら真備が気付いたみたいだな。




「大丈夫か真備?」


「……(ビクッ)」




俺が真備に声をかけると真備は脅えた様子で体を震わせる。



どういうことだ?“記憶”が消えるように頭打ちつけたはずなんだけど……?




「……どうした真備?」


「(ビクッ)い、いや何でもない!!何でもない……んだけどよ……」


「?」




はっきりしない物言いをしながら真備は頭をひねるように首を傾げる。


だがその間。真備は俺からは必ず俺から3メートル距離を取っていた。


そんな真備の様子を見た俺はその瞬間悟る。



――真備は……。




「お前を見た瞬間に体が固まるというか…勝手に動いて距離をとっちまうというか…とにかく体がお前を拒むんだよ?」




……本能的に俺の危険性を体で感じたのだろうと。




「……気にすんな。俺はそれでも全然問題nothingだからな?」


「そ、そうか。じゃあ気にしないことにするか」




未だにビクビクと体を震わせる真備。


そんな真備の姿に俺は笑いを堪えるため敢えて真備に近付いていく。




「なぁ真備?」


「(ビクッ)どどど…!!どうしたんだ日向!?」




俺が真備の肩に手をおいてそう言うと真備は少し顔をひきつりながらガチガチと振り返る。



――あ〜ぁ。どもりすぎだろ真備のやつ。



俺のほうを振り返った後もどうやら拒絶反応らしく体を震わせる真備。



やばっ。なんか俺の中にあった“ドSの導火線”に火が点いちまったみたいだ。



そう思ってしまうほど今の真備はいじりがいがありおもしろい。


だから俺は真備に全力で営業スマイルを創ると語りかけるのだった。




「真備。お前助っ人だったよな?」


「あ〜…うん。助っ人か助っ人じゃないかと言ったら……まぁ人によって見方それぞれだし……つまりなんだ?」




明らかなる動揺を見せる真備。俺はそんな真備にさらなる追い討ちをかけるためにある行動に移った。


今の真備が俺に対して本能的に恐怖を抱く理由でありその最も根本的な最初の行動……。



ガシッ!!!!



頭を鷲掴むことだ。




「(ビックーッ!!!)」




今までで一番の反応をしてガタガタと全身がバイブレータのように震える真備。


記憶からはあの映像を引き出すことはできないがどうやら体は耐えられないらしい。


だが今の俺はドS全開のサディスティック俺。だから俺は容赦なく真備の頭を鷲掴む手に力を加えながら全力の作り笑顔で再び問いかけた。




「もう一度だけ聞くぞ?お前は俺の助っ人なんだよな……?ま・き・び?」


「あ〜…うん。助っ人か助っ人じゃないかと言ったら……まぁ人によって見方それぞれだし……つまりなんだ?」




はい。死刑決定。




「……そうかそうか。どうやらお前は“また”俺に殺されたいらしいな?」


「……へ?イテテテッ!?」




再び阿修羅解放をしながら俺は極限まで手に入れた力を強めていく。


言い忘れていたがここは桜時市の繁華街“街”だ。


俺と真備のやり取りはこの場にいる人全員の振り返った顔を青くしていた。




「ギブッ!!マジでダメだって日向!!!!」


「うるさい!!!!お前とりあえず死んでこい!!!!そんでもって2回死んで2回生き返れ!!!!」


「え!?結局生きてていいの?」


「あぁ……じゃなきゃ俺の生き地獄は味わえないからな!!!!!」


「いっそ殺してー!!!!!!」




断末魔にも似た真備の叫び声が街に響き渡る。


そんな様子を見ていた街の人々は真備を哀れみ日向を恐れるのだった。



――こいつら……絶対関わったらだめだ。



完全なる正論である。




――――――――


―――――


―――





「こんちわー」


「……」




死にかけている真備を引きずりながら俺はとある場所にやってきていた。



そこは全体的に白い塗装が施されており桜時市では比較的新しい建物。


普段ならあまりお世話になりたくないところだが俺達にとっては第2の家にも近い場所。


そして……この建物の主は俺にとって喧嘩をする理由を教えてくれた恩人。




「ハーイ!!オフタリトモドウシマシタ?」




ゲイル・ハルトマン。それがここ“桜時クリニック”の主にして俺の恩人。




「ゲイル先生……誤魔化さないでください?」


「フフフ……バリテイマシタカ」




そして彼こそ今回の知恵理側の宝探し最後のヒントを持つ男である。


知「わーい!!私の誕生日記念だー!!」


日「おめでとう。チエ」


凪「ハッピバースデー!!」


輝「ふふふ。おめでとうございます知恵理」


真「うんうん。本当にめでたいな!!」


作「いやー実際忘れかけてたんだけどとりあえずおめでとうな知恵理」


知「うん。ありがとう♪」


日「……ところで作者。今回はかなり中途半端なところで終わったよな?」


凪「確かに……知恵理の誕生日なのにもうちょっとしっかりしなさいよね!?」


作「うっ!?し、仕方ないじゃないか……だって長くなりそうなんだもん!!」


作&知以外『もん!!??』



問題点はそこではない。



知「……でもみんな?私の誕生日なのはいいんだけど……ちょっと雰囲気的におかしい部分がなかった?」


真「おかしな部分?」


輝「えぇ。少しシリアスな部分もありましたよね?」


日「……朝俺が起きたときのシーンとか」


凪「宝が“桜の髪留め”だということとか」


作「ちなみに“桜の髪留め”については本編の第二部で重要な物になります。あとシリアスムードなんですが……実は“空”が関係してるんですよ」


日「兄貴が?」


作「はい。ということでこの話の後編は“空”の誕生日2月7日に投稿したいと思います!!」


凪「……なんか結局期限に間に合わなかっただけのように思えるのはあたしだけかしら?」


輝「心配しないでください。俺もそう思っていましたから」


真「俺もだよ」


知「次回は私の誕生日パーティーもあるんだ♪楽しみにしててね〜♪」


日「問題nothing…?」



次回に続く!!

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