第五話 上級悪魔
第五話 上級悪魔
此処はエルドライド王国。ユリーシャ達が此処を出て一日半が過ぎようとしていた。
王都では今日も変わらない日常が続くと誰もが思っていた。姫がいる限りこの国は魔王の脅威に晒される事など無いと誰もが信じていた。
そうあの二柱が現れるまでは。
<SIDE:????>
わし達は魔王様の命によりエルドライド王国に行き其処から神聖魔法の使い手とある物を奪いに来た。
「ふむ、神聖魔法による結界じゃな。わしではちと骨が折れそうじゃわい。公爵である卿ならこの程度の結界の破壊なぞ造作も無かろう。」
わしが公爵にそう言うと。
「当然であろう、この程度の結界など造作も無いわ。」
公爵は答え、力を振るい結界を破壊する。
「ほう、さすがは公爵。わしではこうはいかんじゃろうな。」
わしはそう言い、王都に入る。
「おい、貴様、我より先に行こうとはどういうつもりだ。」
公爵はそう言い、憤慨する。
「ふん、その様な細かいことを気にする必要は無いじゃろう。」
わしはそう言い、更に城を目指し進む。
「待たぬか、貴様。」
公爵がそう言い、追いかけてくる。
「ふむ、前方に武装した者共がおるようじゃな。」
わしはそう言い、力を手に集め前方に力を解き放つ。
風と雷が荒れ狂い扇状に広がり人も建物も破壊し尽くす。
「まあこの程度でいいじゃろう。」
わしはそう言い先を急ぐ。
「おい、貴様、どういうつもりだ。」
公爵がそう言うが、わしは、無視して進む。
「貴様、いいか加減にせんと我の怒りを買うぞ。」
公爵がそう言う。
「五月蝿いのう、さっさと行かねば目的の者が逃げてしまうではないか。」
わしがそう言うと
「ぐ、そういう事ならさっさと言わぬか。」
公爵がそう言い、先を急ごうとすると、
「止まれ、此処から先へはいかせんぞ。」
人間の戦士がそう言い、わしら等を取り囲む。
「ふむ、邪魔じゃな。」
わしがそう言い、再び、力を手に集め、周囲に放つ。
風の刃が切り裂き、雷が走り感電し肉を焼く。
「邪魔者はいなくなったようじゃな。」
わしはそう言い、城へ歩みだす。
しばらく歩き、城に到着したわし等はまず王を探すことにした。
適当な人間を捕まえ脅し、王の場所に案内させる。
そうして此処、謁見の間にきた。
「人の王よ我の目的は、命の樹の枝と神聖魔法の使い手だ、大人しく渡せ。さすればその方の命は助けてやろうぞ。」
公爵がそう言い、力を持ちて、王を脅す。
「悪魔などに大事な娘を渡せる訳が無かろう。後、そのような樹の枝なぞ知らぬ。」
王はそう言い、公爵に剣で斬りかかる。
「ふん、成らば死ぬがいい。」
公爵はそう言い、力を解き放つ。
王は、その身を焼きつくされ死にいたった。
「お父様。」
突然、入ってきた娘はそう言い、わし等に向かい神聖魔法により攻撃してきた。
「エデンよ。私にその力を貸し与え給え。彼の者を撃ち貫く光となれ、ブラスト。」
収束された力が光の波動となり公爵を襲うが、その力は公爵の身に纏う闇により相殺される。
「その程度の力ではこの闇の衣さえ貫くことも出来ぬは。」
公爵はそう言い、一瞬で娘に近ずき手加減した手刀で意識を刈り取る。
「後は、命の樹の枝を捜し、持ち帰るだけだな。」
公爵がそう言う。
「ふむ、それならば宝物庫にでも放り込んであるじゃろう。そんなことより何者か解らぬがこの辺りを散策させていた部下共が全滅したようじゃ。わしは其方の方が気になるので行って来るぞい。」
わしはそう言い、公爵の奴が何か言っておるが無視し、部下の気配が消えた辺りに座標を繋ぎ転移する。
転移先にいた者は人間二匹にエルフが更に二匹それと獣が一匹か。
「わしの兵達を狩ったのはお前達か。」
わしがそう聞くと、
「そうだ。そしておまえも狩りとってやるよ。」
黒髪の雄がそう言いよった。
「かっかっかっ、笑わせてくれよるわい。わしを狩れるものなら狩ってみよ。」
わしはそう言い、雷撃を放つ。
「金行を持って木行を克す。金克木。」
黒髪の雄がそう唱え剣でわしの雷撃を斬りよった。
「なに、わしの雷撃を斬ったじゃと。貴様何者じゃ。」
過去にはわしの雷撃を防ぐ者はおった、雷撃に耐える者も居った。この世界でも防ぐぐらいはできる者もおるじゃろう。
じゃが、わしの雷撃を斬る様の者とは出会ったことなぞないわ。
本当にこやつは何者ぞ。
<SIDE:END>
<SIDE:恭夜>
「なに、わしの雷撃を斬ったじゃと。貴様何者じゃ。」
悪魔がそう言い、驚愕している。
「サイファ達は今のうちに下がれ。こいつは俺と紫苑で何とかする。」
俺はそう言いつつ鞄から包みを取り出す。
「いえ、私も戦います。」
ユリーシャがそう言ってきた。
「駄目だ、相手は上級悪魔だ。悪魔との戦いに慣れていないユリーシャ達では足手まといにしかならない。」
俺はそう言いながら包みを広げる。
「キョウヤさんはあの悪魔に勝てるのですか。」
サイファがそう聞く。
「厳しいが勝算はある。」
俺はそう言い、広げた包みから、十本の鏢を取り出し腰に挿す。
「解りました。私達は下がっています。」
サイファはそう言い、ユリーシャ達を連れて後ろに下がる。
「紫苑、速攻でいくぞ長引けばこっちが不利になる。」
俺はそう言い、五本の鏢を悪魔に投げる。
悪魔は風と雷撃で打ち落とそうとする。
「金行を持って木行を克す。金克木。」
俺は呪禁を唱える。鏢は風と雷撃を貫き、悪魔に当るが突き刺さらず皮膚を微かに傷つけただけに終わった。
「どんだけ、硬いんだよ。」
俺は愚痴る。紫苑がその隙に狐火を三つ放つが悪魔は風を纏い、狐火を吹き散らす。
「わしに傷を負わすとは、貴様本当に何者じゃ。」
悪魔がそう言い、雷を纏い突進してくる。
俺はそれを交わしつつ、
「俺はお前らのような悪魔や妖なんかを狩る退魔師だ。」
俺はそう言い、縄鏢を一本地面に突き刺す。
「なに、退魔師じゃと。なぜその様な存在がこの世界にいる。」
悪魔はそう言い、辺り一面に雷を降らす。
俺は鏢を一本を斜め上に投げ呪禁を唱える。
「知るかよ。金行を持って木行を克す。金克木。」
雷は鏢に吸い寄せられるかのように鏢に集まりそのまま鏢は地面に刺さり雷は地中に流れていく。
紫苑が背後から狐火を飛ばすが、風の刃によりかき消された。
俺は移動しつつ、符を取り出しそれに魔力を込め悪魔に向かい符を投げ、
「火精炎術 爆炎烈破。」
と唱え術を発動させる。
符が弾け、炎が爆発し炎と熱風が悪魔を襲うが、風を纏いそれを防ぐ。
俺は縄鏢を一本また地面に刺す。
紫苑は幻術を用い自身を隠し爪を伸ばし横合いから奇襲する。
「ぐあ、こしゃくな、獣風情がぁぁ。」
悪魔の胴を紫苑の爪がえぐるが致命傷まで至らず悪魔が咆える。
更にこの隙を突いて符に魔力を込め、悪魔の足元へ飛ばし、
「土精地術 地隆爆砕」
と唱える。符が地面に溶け込み地面が盛り上がり突然爆ぜる。
悪魔は空を飛び、爆発は回避したが、飛び散る土砂までは回避できずに視界を奪われる。
俺は鏢を一本さらに地面に突き刺す。
その間に紫苑が狐火を放つ。が、悪魔は風を纏い土砂と共に狐火も吹き散らす。
「伯爵であるこのわしが人間と獣風情に翻弄されているじゃとう。その様な事が認められるわけが無かろうが。」
悪魔がそう言い、風と雷を纏い俺目掛け突進してくる
く、此れは交わせない。狗法の金剛を使い耐久力を上げ、抜刀術の構えを取る。
「金行を持って木行を克す。金克木。」
と呪禁を唱え、抜刀する。悪魔の片側の角を斬り飛ばすが俺も突進を喰らい弾け飛ばされる。
「グアアアアア、わしの角があああ。」
悪魔は喚き散らす。
「うるさい、きょうやきずつけた、ゆるさない。」
其処には闇を纏った紫苑がいた。紫苑の周囲に暗く揺らめく炎の様な物が幾つも現れる。
「さようなら、虚無の海で後悔しなさい。」
紫苑は底冷えするような声でそう言い、暗い炎の様な物が悪魔を包む。
悪魔は元から其処にいなかったかの様に綺麗に消え失せた。
やばい此の侭じゃ紫苑の封印が解ける。
俺は痛む体を無理やり起こし、紫苑の元へ行く。
「紫苑、俺なら大丈夫だからな。」
俺はそう言い、紫苑の頭を撫でる。
紫苑の闇が俺の手を蝕むが気にせず頭を撫で続ける。
「クゥ~。きょうや、だいじょうぶ。」
何時もの紫苑に戻り、そう聞いてくる。
「ああ、大丈夫だ。」
俺はそう答えながら紫苑の頭を撫でる。
「よかった。」
紫苑はそう言い、気を失う。
俺は紫苑を抱き上げユリーシャ達の処へ行く。
「どうにか終わったな。」
俺はそう言うと、その場にへたり込む。
「大丈夫ですか、キョウヤさん。」
ユリーシャがそう聞いてくる。
「打ち身で体中が痛いがまあ大丈夫だ。」
俺がそう言うと、
「先ほどのシオンさんは何なんですか。」
サイファがそう聞いてく。
「紫苑の封印が感情の爆発で解けかけたんだ。」
俺がそう言うと、
「封印とはどういう事ですか。」
サイファは更にそう聞いてくる。
「ある理由によって、紫苑本来の力と人格を封印しているんだ。」
俺がそう言うと、
「その理由は聞かないほうが良いみたいですね。」
サイファがそう言った。
「すまん。そうしてくれると助かる。」
俺がそう言うと、グウゥ~と誰かのお腹が鳴く。
ユリーシャが顔を真っ赤にしながら、
「すいませ~ん。」
と小さくなりながら誤る。
「しょうがない、かなり遅くなったが昼食にするか。」
俺は笑いながらそう言い、荷馬車の方へ皆と歩き出す。
荷馬車に着いた俺達は、まず食材をみて何を作るか考えることにしたが、
「そういえば、誰が料理するんだ。」
俺がそう言うと、
「え。」「あ。」「あれ。」
左から順番にユリーシャ、サイファ、リーファがそう驚きの声を上げた。
「もしかして誰も料理できないのか。」
俺がそう聞くと、
「すいません。私はそういう事をさせて貰えませんでしたから。」
ユリーシャはそう言い、又小さくなる。
「僕は一様出来るけど、人間の口には合わないと思うよ。」
リーファがそう言う。
「どういうことだ。」
俺がそう聞くと、
「僕達、エルフは森と共に生きる民だかた料理に火を使わないんだ。だから全部基本的には全て生で食べることになるよ。」
リーファがそう言う。
「なあ肉とかも生で食べるのか。」
俺がそう聞くと、
「お肉は食べないよ。お肉の変わりに虫の幼虫なんかを生きたまま食べるんだよ。」
リーファはそれが美味しいんだよねとサイファと頷きあっている。
「うげ、マジか。それはさすがに御免だな。」
俺がそう言うと、
「私もそれは遠慮させていただきます。」
ユリーシャがそう言うと、
「美味しいんだけどなー。」
残念そうにリーファがそう言う。
「焼いた物は食べられるのか。」
俺はリーファにそう聞くと、
「うん、食べられるよ。」
リーファがそう返事した。
「だったらしゅがない俺が作るか。」
俺がそう言うと、
「キョウヤさんお料理できるんですか。」
ユリーシャがそう聞いてくる。
「出来るという程のものではないが、簡単なものなら作れる。」
俺がそう言い、適当に食材を選ぶ。
「ユリーシャ、此れなんだ。」
見慣れない食材が有った為、ユリーシャに聞いてみると、
「それはクファの実というものです。甘くてとても美味しいんですよ。」
ユリーシャはそう言い、実を一つ剥き俺に差し出す。
食べてみると、甘味が口の中に広がり、飲み込むと後味がさっぱりしていた。
「甘くて美味いな。後味もさっぱりしていて食べやすいな。」
俺がそう言うと、
「そうでしょう。でも食べ過ぎてしまうと、お腹壊しちゃうんですよね。」
ユリーシャはそう言い、何かを思い出したように顔を赤くする。
「ユリーシャは食べ過ぎてお腹壊しちゃったことがあるんだあ。」
リーファがそう言い、ユリーシャをからかう。
ユリーシャは益々顔を赤くする。
「こら、リーファ。余り人をからかうものではありませんよ。」
サイファがリーファを嗜める。
「まあそれぐらいにしておけ。」
俺がそう言い、食材を選びを再開する。
「作るものは大体決まったな。」
俺がそう言うと
「何を作るのですか。」
ユリーシャがそう聞いてくる。
「野菜の卵閉じスープに鶏肉の塩焼きと後はこのパンで終わりかな。」
俺がそう言い、食材を見せて荷馬車の外へ出る。
「僕も何か手伝おうか。」
リーファがそう言ってきた。
「そうだな。それじゃ野菜を一口サイズに切ってくれるか。」
俺がそう言うと、
「うん、解った。」
リーファはそう言い、板の上で野菜を切り始めた。
俺は鞄から鍋とフライパンを取り出す。
「あの、キョウヤさんそれ明らかに鞄より大きいですよね。それはどうやって入っていたんですか。」
ユリーシャがびっくりしたような感じで聞いてきた。
「ああ、鞄の内側に空間拡張の術式を刻んであるから、見た目よりずっと沢山のものがはいるんだ。」
俺がそう答えつつ、鍋に水を入れフライパンと共に火に掛ける。
「そんな便利な物が有るんですか。」
ユリーシャがそう言ってくる。
「でも、見た目はこんなんでもかなりの物が入っているから持ったら驚くぐらいに重いぞ。」
俺がそう言い、持ってみるかとユリーシャに言ってみると、
「持ち上がりません。」
ユリーシャが持ち上げようとするが持ち上がらない。
「な、重いだろう物がたくさん入るからといって良いことばかりではないということだよ。」
俺がそう言うと、
「そうですね、でもキョウヤさんは普通に持っていますよね。」
ユリーシャがそう言う。
「ああ、俺は慣れているからな。ユリーシャ位なら背負って一日ぐらいなら歩けるぞ。」
俺がそう言うと、
「本当ですか。」
ユリーシャがそう聞く。
「ああ。」
俺がそう言った時、
「キョウヤ、野菜切れたよ。」
リーファがそう言って、切った野菜を持ってきた。
「お、サンキュウ。じゃあさっさと、作りますか。」
俺はそう言い、野菜を鍋の中に入れ、フライパンにバターを引き鶏肉を置き再び火に掛ける。鍋が沸騰する間に、卵を割り、おわんに入れ卵を溶く。
鍋が沸騰してきたら、火から離しコンソメや塩で味付けし溶き卵を入れ軽く掻き混ぜる。後は蓋をして置いておく。
鶏肉の方はひっくり返し、じっくり焼く。
その間に、パンを切って軽く火で炙りバターを塗っておく。
焼きあがった鶏肉を熱々のうちに一口サイズに切り皿に盛り付けて、スープをおわんに移してパンを添えて出来上がり。
「さて、紫苑を起こして、食べますか。」
俺がそう言うと、
「きょうや、おなかへった、ごはんちょうだい。」
紫苑がそう言って俺の元へ駆け寄る。
それを見て皆が笑う。紫苑は訳が解らずクゥ~と首を傾げる。
食事を始める前に、
「紫苑人型に為ってくれるか。じゃないとご飯が食べられないぞ。」
俺がそう言うと、紫苑は、
「わかった。」
と言い、人型に変化した。
「これがシオンさんですか。」
サイファが驚きの声を上げる。
「きょうや、ごはん、はやく。」
サイファの事をむしして、紫苑はご飯を強請る。
「解ったよ。ご飯にしよう。」
俺がそう言い、スープやパンを皆に渡し、食事を始める。
「美味しいです。キョウヤさんは何でも出来るんですね。」
ユリーシャがそう言ってきた。
「何でもという事はないぞ、俺にも苦手なものもあるさ。」
俺がそう言うと、
「キョウヤの苦手なものってなに。」
リーファがそう聞いてきた。
「俺の苦手なものは、音楽だな。歌を歌えば音程が外れ、笛を吹いては音が出ず、なんて事が起こる。」
俺がそう言うと、
「きょうや、うたへた。」
紫苑がそう言う。
「へえー、そうなんだ。キョウヤ歌ってよ。」
リーファがニヤニヤしながらそう言う。
「絶対お断りだ。」
俺がそう言う。
「ちぇ、けち。」
リーファはそう言い、唇を尖らせる。
「すみませんがキョウヤさん、先ほどの悪魔なのですがどの様に倒すお積りだったのですか。」
サイファはそう聞いてきた。
「ああ、本当なら鏢を用いて結界を張り、その中に閉じ込めて、強力な術で滅ぼす積もりだったんだけどな。」
俺がそう言うと、
「実際はどれ程の勝算があると思っていたのですか。」
サイファは更にそう聞く。
「勝算は八割がた上手くいくと思っていたんだがな。」
俺がそう言うと、
「あの、相手の情報など殆ど無かったのにどうしてそんなに勝算が高いと思われたのですか。」
ユリーシャがそう聞いてきた。
「あいつの名はフルフル。ソロモンの七十二柱が一柱で伯爵の爵位を持ち風と雷を操る。此処まで情報がそろっていればそれに対する策も立つというものだ。」
俺がそう言うと、
「ど、どの段階で悪魔の真名が解ったのですか。」
サイファが驚きながらそう聞いてきた。
「あいつの姿を見た時にはおよその見当はついていた。確信したのは、風と雷撃を使ったときだな。」
俺がそう言うと、
「キョウヤさんは悪魔について詳しいのですか。」
サイファがそう聞く。
「有名処は大体記憶しているぞ。先ほど言ったソロモンの七十二柱やセブンなんかは全て覚えているな。」
俺がそう言うと、
「セブンですって。ねえアスモデウスというものは知らない。」
リーファが慌てて聞いてきた。
「アスモデウスはソロモンの七十二柱の方にも出て来るのだが、セブンとしてのアスモデウスは、色欲を司り、魅了の魔眼で女性を性の虜にしてしまう力があり、剣の公爵とも言われる程の剣技を持つ者と云われている。」
俺がそう言うと、
「公爵ですか。それはどれ程の位なのでしょうか。先ほどの悪魔は伯爵と言っていましたがそれよりは上なのですよね。」
サイファはそう聞いてきた。
「サイファは爵位について何も知らないのか。」
俺がそう聞き返すと、
「ええ、私達は森から滅多に出ることもありませんし、私達には爵位なんて階級を表すものはありませんから。」
サイファはそう答えた。
「そうか。なら知らなくてもしょうがないか。悪魔の爵位は上から大公、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵となっている。大公や公爵が最上級悪魔とされ、侯爵、伯爵が上級悪魔で、子爵、男爵が中級悪魔とされている。下級悪魔は名はあるが爵位を持たない者で、最下級の悪魔は名さえ持っていない。」
俺がそう説明すると、
「そうですか、解りました。教えて戴きありがとう御座います。」
サイファはそう言い、何か考えているようだ。
「リーファ、なぜアスモデウスの事を聞いてきたんだ。」
俺がリーファにそう聞くと、
「うん、僕達の集落がアスモデウスに襲われたんだ。禁断の樹の枝を差し出せって。でもどうして僕達の集落に禁断の樹の枝があるって解ったんだろうね。」
リーファがそういった。
「ソロモンの七十二柱の中には隠された宝の在りかを教える悪魔も何柱かいるからそいつが教えたんだろうな。」
俺がそう言うと、
「うわ、そんな悪魔も居るんだ。」
リーファはそう聞くと驚いていた。
「そういえば、ユリーシャこの次の予定地は何処になっているんだ。」
俺がユリーシャにそう聞くと、
「えっと、次は私の国と友好国であるラスティハイト王国へ行こうかと思っています。あの国の王様なら私も面識がありますし、私達の力になって下さると思います。」
ユリーシャはそう言い、地図を広げ、
「此処がラスティハイト王国です、今居るのが此処ですからずっと南下して五日程で着きますが今はこの湖に幾つのもの頭を持つ蛇の化け物が住み着いてしまったそうなので大きく迂回しなければなりませんが私達にはそれほど時間がありませんので、この湖を通りたいと思います。」
ユリーシャがそう言う。
「できれば俺はパスしたいのだがそうも言ってられないか。」
俺がそう言いため息をつくと、
「きょうや、へびきらい。」
紫苑がそう言う。
「まあ誰にでも苦手なものがありますよ。ですがこの湖を通らないと二十日程かかってしまいますね。どうするかは、此処から南西にある町へ行きその湖の情報を集めてからと言うのはどうでしょうか。」
サイファがそう言うと、
「そうですね。その蛇がどれ程のものかの解りませんし情報を集めてからのほうがいいでしょうね。では早速出発の準備を始めましょうか。」
ユリーシャがそう言うが、
「待った、今から出発してその町に着くのは深夜になるぞ、それにあの戦士達もちゃんと埋葬してやりたいから出発は明日の朝にしないか。」
俺がそう言うと、
「そうですね。戦士の皆さんは私の為に命を落とされたのですから、せめて埋葬するぐらいはしないといけませんね。」
ユリーシャはそう言い、戦士達の亡骸を埋める為の場所を見に行った。
「キョウヤさん。時間が有る時で構いませんから手合わせしていただけませんか。」
サイファがそう言ってきた。
「ああ、構わないぞ。でも今日はさすがに疲れたからかんべんな。」
俺がそう言うと、
「ええ、解りました。では約束しましたよ。」
サイファがそう言い、ユリーシャを追う。
俺もユリーシャの元へ行き、埋葬するための穴を術で開ける。
符に魔力を流し地面に符を張り、
「土精地術 沈降流渦」
と術を唱える。符が地中に消え、半径五m程の蟻地獄のようなものが出来、しばらくすると地面の沈降が収まり大きな穴が出来た。其処に戦士達の亡骸を入れていく。
全ての戦士達の亡骸を入れた後、土を被せる。
そして最後に皆で戦士達の冥福を祈り黙祷を捧げた。そのとき、ユリーシャの持つ杖が光、今作った墓から三十にもなる青白い光が現れ、ユリーシャの杖に吸い込まれた。
そしてユリーシャは気を失った。
作者の桔梗です。
今回の話は、予定外のことが多く8500文字までいってしまいました。
文章を纏めるのが下手で申し訳ありません。
次回は間話としてさらわれたフローラの話になると思います。