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第四話 悪魔との戦い

     第四話  悪魔との戦い



サイファが<罪焼き尽くす断罪の焔剣>を手にし、皆と共に地上へと戻ろうとしている時。


その頃の地上に残った部隊はユリーシャ達の帰りを待っていた。




<SIDE:副戦士長>


ユリーシャ様がサイファさん達と地下へ行かれてからだいぶ時間が経ちましたがまだお戻りになりません。


もしかしてユリーシャ様達の身に何か起きたのではと思うのですが、封印の間へと続く通路は神聖魔法の使える者しか通れないらしく、私は付いて行く事が出来ず、此処で大人しくユリーシャ様のお帰りを待つしかできない自分に歯噛みしています。そうしていると、


「部隊長殿、大変です。北の空より黒きものが此方に向かっております。」


戦士が慌ててやって来て、そう言った。


「黒きものとは何だ。」


私がそう問うと、


「魔獣の様な生物の大群だとしか解りません。」


戦士はそう答えた。


「なに、魔獣の大群だと。ならば魔法師隊を集め射程距離に入り次第、氷の槍で迎撃するのだ。」


私はそう指示を出し、他の戦士たちを集め地上に落ちた魔獣の討伐を行うように此方にも指示を出した。


そして、その魔獣と思しきものが射程距離に入り、魔法師隊による氷の槍の魔法で攻撃した。


氷の槍が当たる寸前に黒い靄のようなものにより氷の槍は霧散した。


「な、奴等は魔獣ではないのか。まさかあれが悪魔なのか。」


私は驚愕の声をあげる。


悪魔の姿は、目は赤く、背には蝙蝠のような翼膜を張った翼を持ち、手の爪が異様に長い猿のような姿をしている。そのため魔獣と間違えてしまった。


悪魔が使う魔法ににより精霊魔法が無効化されたという報告は受けていたが、悪魔自身に精霊魔法が効かないなどといった報告は受けていないぞ。


先ほどの魔法で悪魔達は此方に気付いたようで、此方に急降下してくる。


「い、いかん。戦士達よ魔法師達を守るのだ。」


私は急ぎ戦士達に指示を出す。


戦士達は急降下してくる悪魔達を向かえ討とうとするが、悪魔の爪は剣や鎧といった物ごと戦士たちを切断する。


「な、何なのだ此れは、あ、悪魔とは此れほどの者なのか。」


私は、余りのことに狼狽してしまい、戦士達に次の指示を出すことも出来ず呆然としてしまっていた。


それにより多くの戦士や魔法師達が悪魔に殺されていく。


その様を見て私は正気を取り戻し、残った者達に指示を出すが、時すでに遅く戦士達は混乱し私の声が届いておらず、その間にも悪魔により一人また一人と戦士達は殺されていく。


そして、しまいには私も悪魔の攻撃により瀕死の重傷を負ってしまった。


私は死んでしまうのか。ユリーシャ様のお役に立てずにこのまま死んでしまうのか。


誰かが、こちらに走ってくる。あれはユリーシャ様。


ユリーシャ様が血で汚れるのも気にせず、私の傷口に触れ魔法で癒そうとして下さっている。


「もう・・・ざいま・・・ユリ・・・さま・・つき・・でき」


私は最後まで言えずに命を落とした。


<SIDE:END>




<SIDE:ユリーシャ>


私たちが地上に出て目にしたものは、地獄絵図といった惨状でした。


キョウヤさんとサイファさん達が何か話をしておられますが、私は生きている方がいないか辺りを見ることに集中し話を聞いていませんでした。


そして私は一人生きている方を見つけることが出来ました。


その方は、副戦士長でした。副戦士長は酷い怪我をしていて今にも死んでしまいそうでした。


私はせめてこの方だけでも救いたいと思い、副戦士長の下へと駆け出しました。


後ろでキョウヤさんの制止を声振り切り、副戦士長の下へ行きました。


そして傷口に手を当て魔法を使おうとした時、副戦士長が話し掛けてきました。


「もう・・・ざいま・・・ユリ・・・さま・・つき・・でき」


そこまで言われたとき、突然グシャっと副戦士長の頭が踏み潰されてしまいました。


それを見てしまった私は、


「いやーーーーーー。」


と叫び、茫然自失となりその場にへたり込んでしまいました。


悪魔が私にその手を振り下ろそうとしていることにも気付かずに。


<SIDE:END>




<SIDE:サイファ>


私たちが地上に出ると其処には、百を超える魔獣の様な者が無数の死体の山を築いていた。


「な、何なんですか、この魔獣の数とこの惨状は。」


私はこの光景にうろたえながらそう言うと、


「魔獣じゃない。悪魔だ。まあ下級の悪魔だからそれ程梃子摺ることもないだろう。」


キョウヤさんがそう言う。


「え、あれが悪魔なの。魔獣と見分けが付かないんだけど。」


リーファがそう言い、


「悪魔は何かしらの動物の姿をした者が多い、魔獣との見分け方は背中に蝙蝠のような翼膜の張った翼があれば悪魔だ。魔獣が持つ翼は鳥のような羽毛に覆われたものが殆どだからな。」


キョウヤさんがそう言い終わったとき、ユリーシャさんが突然駆け出した。


「待てユリーシャ、一人で行動するな。」


とキョウヤさんが止めようとするが、ユリーシャさんは聞かずにそのままか駆けていった。


「紫苑、ユリーシャを追ってくれ。」


キョウヤさんが、シオンさんにそう言い、


「わかった。」


と言って地を蹴り、ユリーシャさんの後を追いかける。


私は<罪焼き尽くす断罪の焔剣>に手を掛けようとしたら、


「その剣は極力使わないようにしろ、いくら原罪がないとはいえそれでも全く罪が無いという訳ではないのだからな。それを使いすぎれば自身が焼き尽くされるぞ。」


キョウヤさんがそう私に忠告してくる。


「兄さんそれ本当なの。」


リーファがそう聞いてくる。


「ええ本当ですよ。ですが悪魔に対抗するためにはこの剣に頼る必要があるのです。」


私がそう言うと、


「だが下位の悪魔にまで使う必要は無いだろう。」


キョウヤさんがそう言う。


「下位の悪魔にも精霊魔法が効かないのでは、やはりこの剣に頼るしかないのです。」


私がそう言い張ると、


「解った。ならサイファ達はユリーシャの護衛に廻ってくれ。悪魔は俺と紫苑で討つから。」


とキョウヤさんが言ったとき、


「いやーーーーーー。」


とユリーシャさんの叫び声があがった。


叫び声の聞こえた方を見ると、顔や服を血や肉片なんかで赤く汚れたユリーシャさんがへたり込んでいた。


そこに悪魔が今、正にその手をユリーシャさんに振り下ろそうとしていた。


「兄さんユリーシャが殺されちゃう。」


リーファが私にそう言ってきたが此処からでは私にはどうすることもできない。


「大丈夫だ、紫苑が間に合った。」


キョウヤさんがそういった時、悪魔が突然、炎に包まれ悪魔は絶命した。


そしてシオンさんがユリーシャさんの前に陣取り尾に火を灯し悪魔達を威嚇する。


悪魔達は先ほどの事もありシオンさんを警戒している。


「すごいあの悪魔が炎一発で死んじゃった。」


リーファはそう言い、驚いている。


「二人はユリーシャの下へ言ってくれ。」


キョウヤさんがそう言い、片刃の剣を抜刀し、そのまま悪魔の方へ行きすれ違いざまに悪魔に斬り付け、すぐさまその場所を離れ別の悪魔に攻撃する。


なぜキョウヤさんの剣は悪魔に通じているのでしょうか。


悪魔の皮膚や体毛なんかは鉄の剣ぐらい簡単に弾くはずですのに。


そう思い、キョウヤさんの剣をよく見てみると剣に何か力場のような物を纏っているのが解った。あれがキョウヤさんが言っていた魔力なのでしょうか。


「兄さん、キョウヤの戦いに見惚れてないでユリーシャの処へいくよ。」


リーファがそう言い私を引っ張る。


「ええ。解りましたから引っ張らないで下さい。」


私はそう言い、ユリーシャさんの処へ向かい、


「シオンさん此処は私とリーファで何とかします。シオンさんはキョウヤさんの処へ行って下さい。」


私はシオンさんにそう言い、ミスリルソードを抜き、


「エデンよ、その力を私に貸し与えよ。」


そう唱え、私は神聖魔法に使うエデンの力を剣に集中させ、近くに居る悪魔に斬りかかる。私の剣はなんの手応えもなく悪魔を両断した。


「兄さん、何をしたの。」


リーファが驚きながら聞いたきた。


「剣にエデンの力を纏わせて斬りつけただけですよ。」


私はリーファにそう答えた。


「え、いままでそんな事したこと無かったよね。どうして行き成りそんなこと思いついたの。」


リーファがさ更にそう尋ねる。


「キョウヤさんの戦いを見ていたら剣に魔力ですか。それを纏わせていた物ですから、私にも出来ないかと思いやって見たのです。ですが剣から気を散らすとエデンの力が霧散してしまいますね。これを維持しながら戦い続けるのはかなり難しいですね。」


私はそう答え、先ほどと同じようにし悪魔を切り伏せる。


そうしていると、キョウヤさんがなにか魔法を使うようですね。


キョウヤさんは左手に紙の様な物を持ち術を唱える。


「水精水術 暴竜水烈破」


紙の様な物が弾け、其処から長大な水の蛇のようなものが現れ多数の悪魔を飲み込み屠る。


そしてキョウヤさんが、


「紫苑、やっちゃえー。」


と云うと、シオンさんが、


「コーン。」


と一声大きく鳴く。すると天から無数の雷が悪魔に降り注ぐ。


それにより大半の悪魔が死に絶えた。


残った悪魔もキョウヤさんに斬り殺され、シオンさんに焼き殺されていく。


これは悪魔が全滅するのも時間の問題ですね。


さて此方は如何したものでしょうか。


「ユリーシャさん正気に戻って下さい。」


私はユリーシャさんの肩を揺らしながらそう言うが、ユリーシャさんは全く反応せずに、


「もういや、何も見たくない。」


ユリーシャの目は虚ろで涙を流しながらそう呟くだけで他に何もしようとはしません。


「ユリーシャ、僕達と魔王を倒しに行くんでしょ。」


リーファがそう言うがユリーシャさんからの返事はありません。


「私達の声はユリーシャさんに届いていませんね。」


私がそう言うと、


「うん、僕達じゃ駄目みたいだね。」


リーファがそう言い、ため息を付く。


そんなことを話をしていると悪魔を狩終えたキョウヤさんとシオンさんがこちらにやって来た。


「ユリーシャの様子はどうだ。」


キョウヤさんがそう聞いてきた。


「正気に戻ってくれません。」


私がそう言うと、


「そうか、よっぽどショックが大きかったんだな。だが此の侭ほっとくことも出来ないな。」


キョウヤさんがそう言い、ユリーシャさんの方へ歩み寄り、


「ユリーシャ、何時まで呆けている。」


キョウヤさんがそう言い、ユリーシャさんの頬を叩く、


「お前は、魔王を倒しこの世界に平穏を取り戻すのだろう。それともお前は自国の民が魔王に蹂躙されるのを指を咥えてただ見ているつもりか。」


更にキョウヤさんは声を荒げそう言った。


ユリーシャさんは目に光を取り戻し、


「違います、私は民を見捨てるような事はしません。」


と言った。


「漸く正気に戻ったか。あんまり心配掛けるなよ。」


キョウヤさんがそう言った。


「ご迷惑かけてすいません。私は何をすべきかを思い出しました。」


ユリーシャさんはそう言い、私達に頭を下げ、


「キョウヤさん。こんな情けない私ですが此れかも力をお貸し戴けますか。」


更にユリーシャさんはキョウヤさんにそう聞かれた。


「ああ、俺はこの世界のことは殆ど知らないんだからちゃんと案内してくれよ。」


キョウヤさんはそう答え、優しく笑い掛けた。


ユリーシャさんは少し顔を赤くし、


「はい、案内いたします。」


と嬉しそうに答えた。


「此処を出る前にまずはユリーシャさんを綺麗にしなくてはなりませんね。」


私がそう言うと、


「あ、そうだね。そんな血塗れのユリーシャを見たら皆逃げ出しちゃうもんね。」


リーファが私に続けてそう言うと、


「もう、酷いですリーファさん。」


ユリーシャさんがそう言い、頬を膨らます。


「そう言う訳ですから、ユリーシャさんは顔と髪を洗い、服を着替えてきて下さい。」


私がそう言うと、


「はい、解りました。では少し待ってて下さいね。」


ユリーシャさんがそう言い、馬車の方へ歩き出す。


「ユリーシャ一人じゃ大変だと思うから僕も一緒に行くね。」


リーファがそう言い、ユリーシャさんの後を追う。


私はキョウヤさんに話しを聞こうと思ったのですが、キョウヤさんは戦士達の死体を集めていた。それを見た私は何をしているのか解らない為、


「キョウヤさん、何をなさっているのですか。」


と聞いた。


「ああ、この者達を埋葬しようと思ってな。」


キョウヤさんはそう答えながら、死体を拾う。


「私も手伝います。」


そう言い、私も死体を集める。


「助かる、さすがに一人じゃきついなと思っていたんだ。」


キョウヤさんがそう言って、笑う。


「キョウヤさんやシオンさんの使う魔法はなぜ悪魔に効くのですか。」


私は作業を続けながらキョウヤさんに尋ねた。


「そういわれてもな、精霊魔法がなぜ無効化されるのか見てもいないしな、それで精霊魔法と俺の術との違いなんか解らんぞ。」


キョウヤさんも作業を続けながらそう答える。


「そうですか、解りませんか。」


私は落胆した声でそう答える。


「ただいえることは、俺も紫苑も精霊に力を借りていないということぐらいかな。」


キョウヤさんはそう答えた。


「どういうことですか。」


私は声を荒げ、そう聞いた。


「う~ん、俺の場合は符に書かれた術式により魔力をそのまま、水や火に変換しているだけだしな。紫苑の使う炎は生まれ持った能力だから俺も紫苑も精霊を間にいれてないんだ。」


キョウヤさんがそう言ったのですが私には理解できないところがあったのでもう少し詳しく聞こうと思ったら、


「ただいま戻りました。」


「ただいま。」


ユリーシャさんとリーファが戻ってきました。


「あの、お二人は亡骸を集めてなにをしようとしているのですか。」


ユリーシャさんがそう尋ねる。


「このまま野ざらしにしとく訳にはいかないから火葬にしその後埋葬しようとしていんだけど。」


キョウヤさんがそう答えると、


「すいません。本来なら私がしなければならない事なのにお二人にこの様なことをさせたしまい本当に申し訳御座いません。」


ユリーシャさんはそう言って私とキョウヤさんに頭を下げる。


「気にするな。此れは俺が勝手にやったことだからな。さてこれで最後だな。紫苑火を付けてくれ。」


キョウヤさんがそう言い、シオンさんが、


「わかった。」


と言い、死体に火を放つ。死体はゴオーと燃え出した。


「さて、少しこの場所を離れて少し遅い昼食にするか。」


キョウヤさんがそう言うと、


「クウー、おなかへった。」


間髪いれずにシオンさんがそう言った。


「そうですね。馬車に食料がありますので、其方の方へ移動しましょう。」


ユリーシャさんがそう言うと、


「すまん、お昼はまだお預けみたいだ。」


キョウヤさんがそう言い剣を抜き警戒する。


「キョウヤさん何事ですか。」


私がそう聞くと、


「何者かが此処に転移しようとしている。」


キョウヤさんがそう答えた直後、空間が歪み其処から悪魔が現れた。


その悪魔は牡鹿のような姿をしており尾は燃え立っていて、背には翼膜の張った翼を持ち頭には立派な鹿の角を生やしている。


その悪魔が私達に、


「わしの兵達を狩った者はお前達か。」


としわがれた声で話し掛けてきた。


この悪魔は先ほどの群れのボスなのでしょうか。


アスモデウス程ではありませんが、強大な力をひしひしと感じます。


一難去って又一難といったところでしょうか。


私達はこの悪魔に勝てるのでしょうか。











作者の桔梗です。

また新たな悪魔が出てきました。

本来ならこの悪魔との戦闘まで終わらせるつもりだったのですが、

これ以上書くと一万文字を超えそうなので此処で区切らしてもいます。

次話も出来るだけ早く投稿したいと思っています。


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