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閑話 リリスとフローラ

     閑話 リリスとフローラ


恭夜達がサミジナを倒し宴会後眠りについている頃、険しい山々に囲まれた魔王の居城のその一室で眠るフローラは悪夢にうなされていた。



<SIDE:フローラ>


「何故お前だけが生きている。我等は無残にも殺されたというのに。」


背後から何者かにそう言われ、振り返ると、


其処に居たのは、額から血を流し、体中傷だらけの青白い顔をしたお父様でした。


「お、お・・とう・・さま。」


私はそう言い、二三歩後ずさりしました。


「フローラ様。貴方はなぜまだ生きているのですか。」


誰かが又私の背後からそう言います。


「私達は死んだというのに、貴方様だけが何故生きているのです。」


更に背後から別の声がします。


私は恐る恐る振り返ると其処に居たのは、城に使えていた血まみれな兵士達でした。


「ひ、どうして此処に居るの。」


私は又も後ずさりしながらそう呟いていました。


次に現れたのはメイド達でした。


メイド達も他の者同様に血まみれで生気が感じられません。


「姫様。姫様も私共の元へ来て下さい。」


メイドの一人がそう言います。


「姫様が死んで下さいましたらまた私達がお遣いいたしますわ。」


更に別のメイドの一人がそう言います。


「い、いやー。」


私はそう叫び、その場から逃げ出しました。


無我夢中で走り、通路の角を曲がったところで誰かにぶつかってしまいました。


「あ、す、すいませ・・。」


私は咄嗟に謝ろうと謝罪の言葉を口にしましたが、ぶつかった人を確認した時、絶句してしまいました。


其処に居たのは、首が半分千切れかけ、左腕がありえぬ方向に折れ曲がり、白いローブを己の血で真っ赤に染め上げたユリーシャが其処にいました。


「姉様。私も死んでしまいました。エルドライドの民もみんな死んでしまいました。」


ユリーシャがそう言い、後ろを向きますと、ユリーシャの背後から一様に血まみれとなったエルドライドの民達が此方にやってきます。


「さあ、姉様。姉様もこっちに来て下さい。」


ユリーシャがそう言い、ナイフを持って私に近づいてきます。


「嘘よね、嘘ですよね、ユリーシャ。」


私はそう言うが、ユリーシャは止まらず近づいてくる。


そしてナイフを振りかぶり、


「いやー、やめてー。」


私はそう叫び、ベットから飛び起きました。


「はあ、はあ、・・・・・夢?。」


私は呼吸を整えてそう呟く。


「くすくす。危なかったわね。」


私のすぐ傍に妖艶なる美女が蝙蝠の様な羽の生えた黒猫の首を鷲掴みにして立っていました。


「貴方は誰ですか。それとその猫のような者は何なのですか。それに危なかったとはどういう事ですか。」


私は矢継ぎ早にそう聞きます。


「あらあら、そんなにいっぺんに聞かれても答えられないわ。」


妖艶な美女がそう言いいます。


私が何かを言おうとすると、


「心配しなくても順を追って答えてあげるわ。まずは私は夜魔の女王リリスよ。それでこの

私の眷属の一柱で夢魔族の悪夢ナイトメア男爵・バロンよ。危なかったと言ったのはこの猫が貴女に悪夢を見せていたの。あのままだと貴女はこの猫に殺されていたわ。」


リリスさんがそう言います。


「え、どういうことですか。」


私が慌ててそう聞きますと、


「この猫は人の負の感情を餌にしているの。」


リリスさんはそう言いいます。


「え、それってその猫は私の心を食べようとしていたという事ですか。」


私がそう言いますと、


「ええ、そうよ。心を食べられた人は体は生きているけど精神は死んでしまうわ。そうなれば何も話せず、何も感じないただの人形の様になってしまうわね。」


リリスさんがそう言います。


「それは貴女が命じたのですか。」


私がそう聞きますと、


「いいえ違うわ。もし私が命じたのなら助けるはずないじゃないの。」


リリスさんがそう言います。


「では誰が命じたのですか。」


私が声を荒げそう聞きます。


「そうね。この猫に命令できるのは私を除いて魔王だけよ。」


リリスさんがそう言います。


「魔王が私を殺そうとしたのですか。私を利用しようとしていたのではないのですか。」


私がそう言いますと、


「ええ、魔王は貴女を利用してエデンの意思に接触しようと考えているわ。でもそれはあなたの意思は邪魔だと思ったのでしょね、だから精神を殺して操り人形のようにしようと考えたのだと思うわ。」


リリスさんがそう言います。


「それでエデンの意思と接触できるのですか。」


私がそう聞きますと、


「ええ、可能よ。エデンの意思と会うには鍵を持ってエデンの力を扱えし者が扉に触れるだけでいいの。その時、生きてさえいればエデンの力を扱えし者の意思が有ろうと無かろうと関係ないの。」


リリスさんがそう言います。


「な、それではなぜ始めからそうしなかったのですか。」


私がそう聞きます。


「貴女にこの世界の真実を知って欲しいと思っていたからよ。でも、それが面倒になってしまったんでしょうね。」


リリスさんはそう言います。


「面倒になったとはどういうことですか。」


私がそう聞きますと、


「思っていた以上にこの世界の者達の抵抗が激しくてね、魔王の計画が半分も進んでいないの。本来の計画なら鍵は少なくとも二つは手元にあるはずなのに一つしかなく、命の樹の枝と善悪の知識の樹の枝両方が揃っている筈だったのに手元にあるのは善悪の知識の樹の枝のみなのよ。」


リリスさんがそう言います。


「え、鍵は一つだけではないのですか。」


私がそう聞きますと、


「ええ、鍵は四つあるの。全て揃えて初めて鍵としての効果を持つの。」


リリスさんがそう言います。


「鍵のありかは解っているのですか。」


私がそう聞きますと、


「ええ、解っているわ。一つは妖精族が住まうアリバドーネ樹海に、一つはクラディス聖王国に、最後の一つはアルビナ火山の火口の中にあるわ。」


リリスさんがそう言います。


「幻惑の樹海にクラディス聖王国それにアルビナ火山の火口の中ですかどれもこれも困難なところにあるのですね。」


私がそう言いますと、


「問題はこれだけではなくて、神器を持つ国の攻略も難儀しているの。」


リリスさんがそう言います。


「神器って、<罪焼き尽くす断罪の焔剣>だけではないのですか。」


私がそう聞きますと、


「いいえ、他にもあるわ。ラスティハイトには<裁き下す全天なる光>と呼ばれる槍があるそうよ。それと、グランシャトー王家には<闇切り裂く光り纏し剣>があるわ。でもこの国はおかしいの、<闇切り裂く光り纏し剣>はこの世界にある筈の無い神器なの。この神器はこの世界とは別の世界で語られていた神器なのよね。」


リリスさんがそう言います。


「え、この世界に無い物が存在するなんてどういうことですか。」


私がそう聞き返しますと、


「それは私にも解らないわ。でもあの国は何かしらの秘密があるのだと思うわ、なんせ王族の誰もエデンの力を使えないのだから。」


リリスさんがそう言います。


「そう言われればあの国は結界すら無いのでしたね。」


私がそう言います。


「ええ、あの国はあれ以外にも神器を持っているでしょうね。たった一つの神器だけで私達の軍勢を三度退ける事などできないでしょうから。」


リリスさんがそう言います。


「悪魔の襲撃を三度も退けているのですか。」


私がそう聞き返しますと、


「そうよ。詳しくは知らないけどデーモン達は三度とも全滅させられたそうよ。其処から推察するにあの国は対軍用の神器も持っているのでしょうね。」


リリスさんがそう答えます。


「対軍用の神器ですか。それはどのような物なのでしょうか。」


私がそう聞きますと、


「そうね。幾つか候補があるわ。一つは弓ね。一度に無数の矢を降らす事が出来る弓の神器もあるの。二つ目は槍ね。これは投擲用の槍で着弾地点を吹き飛ばすような神器があるわ。三つ目は杖ね。これは風を自在に操ったり、天候を自在に操作したりと千差万別な神器があるわ。」


リリスさんがそう言います。


「色々有るのですね。」


私がそう言います。


「これでもほんの一部でしかないわ。私の知らない神器もまだあるぐらいだしね。」


リリスさんがそう言います。


「もう一つ聞きたいことがあるのですがあるのですが構いませんか。」


私がそう言いますと、


「私に答えられる事なら構わないわ。」


リリスさんがそう言います。


「私の妹のユリーシャの事なんですけど無事なのでしょうか。」


私がそう聞きますと、


「貴女の妹と言うと・・・ああ、恭夜と共に旅をしている娘ね。ええ、無事よ。今頃はキシュウ湖を抜けラスティハイトに向かっている頃でしょうね。」


リリスさんがそう言います。


「キシュウ湖には毒が充満しているのにですか。それにキョウヤという方は誰ですか。」


私がそう聞きますと、


「まずは恭夜の事から説明しましょうか。恭夜は此処とは別の世界、地球の秋津島いえ今は日本と呼ばれる国から此方の世界に来た者よ。符術という術を使い、伯爵であるフルフルを倒し、侯爵であるフェネクスを退けた者よ。」


リリスさんがそう言います。


「え、フルフルを倒したのエルフの方ではないのですか。それに、フジュツですか。それは悪魔にも効果が在るのですか。」


私がそう聞きますと、


「フルフルを倒したのは正確に言うと恭夜ではなくてその者と共にいる紫苑という妖狐よ。それと符術は妖魔を屠る手段として創られた術よ。それ故に私達にも効果があるわ。最も幼稚な術なら闇の衣に阻まれますけどね。それとキシュウ湖は恭夜が使役する神獣に乗って渡ったそうよ。その途中にヒュドラを倒し、毒を浄化したそうよ。」


リリスさんがそう言います。


「なんだか物語でも聞いているようです。」


私がそう言いますと、


「くすくす。そうねこの世界の者ならそう思うかもね。でもこれは事実よ。恭夜ならラスティハイトに向かったサミジナも何とかするでしょうね。」


リリスさんがそう言います。


「サミジナですか。階級は何ですか。」


私がそう聞きますと、


「階級はフェネクスと同じ侯爵よ。」


リリスさんがそう言います。


「侯爵ですか、」


私がそう話し出したところで、突然扉が開きアシュが戻ってきました。


「リリス何故お前が此処に居る。」


アシュがそう言います。


「あら、私が此処にいるのに貴方の許可が必要なの。」


リリスさんがそう言います。


「なに。」


アシュが怒気を孕みそう言い、リリスさんを睨み付けます。


「アシュ。落ち着いて下さい。リリスさんは私を助けてくれたのです。」


私は慌ててアシュを止めます。


「む。それはどういう事だ、何があった。」


アシュがそう言います。


私がリリスさんの眷属である悪夢の男爵に心を壊されかけた事を話しました。


「それは本当に魔王の命なのか。リリスの自作自演ではないのか。」


アシュがそう言います。


「私がそんな事をするメリットはないわ。」


リリスさんがそう言う。


「だが、助けるメリットもないのではないか。」


アシュがそう言います。


「ええ、確かに助けるメリットもないわね。でも見捨てた場合は私に被害が来るもの。」


リリスさんがそう言います。


「なぜ、見捨てるとお前に被害が行くのだ。」


アシュがそう聞きます。


「私の眷属がその娘を壊したら、貴方は事実の確認もなしに怒りに任せて私のところに乗り込んで来るでしょう。その時私が何を言おうと聞く耳なんて持ってくれないでしょうから貴方と殺し合いになりそうだもの。」


リリスさんがそう言います。


「ぐ、確かにそれは有りうるか。」


アシュがそう言います。


「まあ納得のいったところで魔王は何用で貴方を呼び出したの。」


リリスさんがそう言います。


「魔王に呼ばれた理由は、サミジナが討たれたからだ。」


アシュがそう言います。


「あら。今回は早かったのね。遠見の鏡でも使って監視でもしていたのかしら。」


リリスさんがそう言います。


「いやそう言うわけではない。魔力を識別するマーカーのような物をサミジナに持たせていたんだがその反応が昼過ぎに消えた。その後も反応が無いため討たれたものと判断したのだ。」


アシュがそう言います。


「そう。なら恭夜の事はまだ魔王に知られていないのね。」


リリスさんがそう聞きます。


「うむ。そうだ。だがあの国に長居すると今度こそ危ういぞ。」


アシュがそう言います。


「それはどういう事ですか。」


私は思わずそう聞きました。


「魔王はサタンを魔界から呼び戻すきだ。早ければ二日後遅くとも五日という所だ。」


アシュがそう言います。


「サタンとはそれ程の悪魔なのですか。」


私がそう聞きます。


「ああ、リリスの夫であり、セブンの一柱でもある。司どるものは憤怒で爵位は公爵だ。」


アシュがそう言います。


「けど長居しなければ大丈夫なのですよね。」


私がそう聞きます。


「ああ、そうだな。どちらにしろラスティハイトの滅亡は決まったがな。」


アシュがそう言います。


「ええ、そうね。後は恭夜達が何の目的でラスティハイトにいるかによって滞在期間が変わるわね。貴女は何か心当たりは無いかしら。」


リリスさんがそう言います。


「そうですね。・・・・ラスティハイトとは同盟国なので支援を求めてという可能性が一番高いと思います。」


私がそう言いますと、


「いや。それは無いだろうな。一般兵がどれほど集まろうが我らに傷を与えることは不可能だ。恭夜はそれを知っているはずだ。ならば別の目的があってラスティハイトに来たことになるが果たしてそれは何かが解らぬ。」


アシュがそう言います。


「もしかすると神器が目的なのかもしれません。神器を用いれば貴方方さえ傷を負わせることが出来るのでしょうから。」


私がそう言いますと、


「ふむ。確かにその可能性はあるな。だが神器はその国の切り札でもあるのだそう容易く譲渡できる物ではないぞ。」


アシュがそう言います。


「そうね。でも、国が手に入れていない神器ならどうかしら。」


リリスさんがそう言います。


「む。なるほどな確かあの国の近くに神器が収められた遺跡があったな。其れが目的か。」


アシュがそう言います。


「ええ、そうだと思うわ。問題はどうやってそれを恭夜達が知ったかという事ね。ゴモリーの様な力を持った物はいないはずよね。」


リリスさんがそう言います。


「確かにそうだな。あの者達がその情報を知る手段を持ち合わせているとは思えぬしな。」


アシュがそう言います。


「まあ。此処でそんな憶測を立ててもしょうがないわね。今は魔王の対応を考えましょう。」


リリスさんがそう言います。


「魔王の対応とはどういうことだ。」


アシュがそう聞き返します。


「このままだと、又、その娘が狙われるわよ。」


リリスさんがそう言います。


「む。確かにそれは有りうるな。だが私が四六時中傍についていることは出来ぬしな。どうしたものか。」


アシュがそう言います。


「なんなら私の眷属いえ娘を付けましょうか。」


リリスさんがそう言います。


「なに。リリスの娘だと、リリムを付けるというのか。」


アシュがそう言います。


「リリムじゃないわ。そうねリリーがいいかしら。」


リリスさんがそう言います。


「むう。リリーかあれならばまだ常識内だな。解ったそれで頼む。」


アシュがそう言います。


「ええ、では、朝になったら此処に連れて来るわね。」


リリスさんはそう言い、部屋から出て行きます。


「フローラまだ夜が明けるまで少し時間が有る。もう少し眠っているがいい。」


アシュがそう言います。


「解りました。今は休ませてもらいますが、きちんと後で説明して下さいね。」


私がそう言いますと、


「ああ、約束しよう。」


アシュがそう言います。


私はその言葉を聞いて、休む事にしました。







漸く書き上げる事ができました。

出来れば今月の内に次の話は書き上げたいと思っています。

このような駄文ですがこれからもお付き合いをお願いいたします。


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