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第十五話 キシュウ湖の戦い 後編

      第十五話 キシュウ湖の戦い 後編



全ての首が再生したヒュドラに対し、恭夜と玄武はその攻撃に耐え、偶に攻撃を仕掛け、さらに様子を伺い対策を講じようとしていた。



 

<SIDE:恭夜>


「金精鉄器術 木精雷術 合成 雷光鉄器術 金剛杵破。」


俺は上空で鏢に二枚の符を貼り付けそう唱えると、符が爆ぜ、空から、密教で帝釈天インドラの武器

といわれる、金剛杵(または独鈷杵とも呼ばれる槍状の刃が柄の上下に一つずつ付いたもの)に変化させ、ヒュドラの胴体に向け投擲する。


金剛杵はヒュドラの胴体に突き刺さり、そこに金剛杵に蓄えられていた雷をヒュドラの体内に放出する。


ヒュドラは電撃により体内の血液が沸騰し、肉が焼けた匂いが辺りに漂う。


玄武は其処に引力を纏った前足で頭を踏みつけるが、潰す事ができず電撃から回復した他の首が噛み付いてきたため、斥力を足元に生み出し後ろに飛んで避ける。


「主殿これ以上は、力を抑えた状態では埒があきませんぞ。」


玄武がそう言う。


「仕方が無いか。今から結界を強化するからその後に重力球を作り、それをゆっくり回転させながらヒュドラにぶつけてくれ。」


俺がそう言うと、


「じゃがそれだけでは倒すことはできんぞ。」


玄武がそう言う。


「そこに俺が煉獄を叩き込み、紫苑に岩石を投じてもらえばどうなる。」


俺がそう言うと、


「なるほどのう。さすが主殿面白い事を考える。」


玄武がそう言う。


「いくら結界を強化するといってもお前の本気には耐えられないから自重してくれよ。」


俺はそう言い、地に降り立ち、大地に手を付け、


「結界術 護法滅界陣。」


俺がそう唱えると、五芒星の輝きが増し、覆っている障壁が白く輝きだした。


本来この結界は魔を逃さず、力を減退させるための物なんだが、結界としての強度は先ほどまで使ってい


た五芒封鎖陣の倍以上の強度を誇るが長時間の運用ができない。


玄武は俺が結界を強化している間、ヒュドラの攻撃をいなし、または防いでいた。


「主殿、重力球を作るのに少し時間がかかるので、その間ヒュドラをなんとかしてほしいぞ。」


玄武がそう言う。


「ああ、解った。土精地術 石柱槍。」


俺はそう唱え、符をヒュドラの下に投げる。符が地面に付いた瞬間符が弾け、無数の石の槍がヒュドラに


襲い掛かるが一本たりとも突き刺さる事がなかった。


「くっ。術の選択をミスった。」


俺はそう言い、狗法の飛翔を使い空に上がる。


俺のいた場所にヒュドラの毒液が降り注ぐ。


「木精木術 荊棘樹縛陣けいきょくじゅばくじん。」


俺がそう唱え、符をヒュドラの下に投げつける。符が地面に付いた瞬間符が弾け、茨を生やした無数の木がヒュドラに絡みつき縛り上げる。


「今のうちに作れ玄武。」


俺がそう言う。


玄武は眼前に重力を集める。それが三㍍程度の大きさになったところで回転を加えさらに大きくする、


五㍍程の大きさになると結界がぎしぎしと悲鳴を上げ始める。


「玄武。それぐらいでもういい。これ以上は結界が持たない。」


俺は吸い込まれないように踏ん張りながらそう言うと、


「うむ。解ったぞい。」


玄武はそう言い、重力球をヒュドラ目掛けゆっくりと打ち出す。


重力球は地面の岩や土なんかを吸い上げながら進む。


ヒュドラは俺の術を破ろうと暴れている。


其処に玄武が生み出した重力球がヒュドラの頭から円を描くように飲み込み始め、胴の辺りまで飲み込んだところで、俺は符を三枚取り出し、


「火精炎術 煉獄衝。」


俺がそう唱え符を投げると、三枚の符が爆ぜ三つの紅蓮の炎の竜巻が生まれ、それらが合わさり荒れ狂う炎となり重力球に吸い込まれ重力球を炎で赤く染め上げる。


重力球がヒュドラを完全に飲み込んだところで、


「コーン。」


紫苑がそう鳴くと、大地が軋み岩や土砂が舞い上がり、重力球に襲い掛かる。


俺の炎術と紫苑の坤術が重力球に飲まれ、赤から赤褐色へと変わり、重力球の中のヒュドラを苦しめる。


ヒュドラに重力球で超高圧を与え、超高温で焼く。其処に岩や土砂を加えると、岩や土砂が熱により溶け、気化する。


十分程すると、重力球が消え、其処にはヒュドラは存在せず、熱により赤く染まったこぶし大の透明な石が一つあるだけだった。


「ようやく終わったな。」


俺がそう言うと、


「やれやれじゃわい。なれない手加減で疲れたぞ。」


玄武がそう言う。


「クゥ。しんどい。」


紫苑がそう言う。


俺は熱が引いた石を拾い、紫苑を抱きかかえ、玄武の背に戻る。




「キョウヤさんお帰りなさい。」


ユリーシャがそう言う。


「ああ、ただいま。」


俺がそう返事をすると、


「ヒュドラはどうなったのですか。」


サイファがそう聞いてくる。


「ヒュドラならこの中だ。」


俺はそう言い、透明な石を見せる。


透明な石の中心部に百分の一ほどに小さくなったヒュドラがにいた。


「ええ、なんでそんなに小さくなっているんですか。」


マイスが驚きの声をあげる。


「簡単に説明するとだな、重力でヒュドラの体を押しつぶし炎で体の水分を全て蒸発させ、岩で閉じ込めその岩を超高温で気化させ、超高圧で圧縮するとダイヤモンドになる、中心にいたヒュドラはダイヤモンドの中に封じられるというわけだ。」


俺がそう言うと、


「ええ、無茶苦茶だー。」


マイスがそう叫ぶ。


「キョウヤさん。これは本当にダイヤモンドなんですか。」


ユリーシャがそう聞く。


「ユリーシャがいうダイヤはカッティングされた物を言っているんだろ。宝石の原石はみんな最初はこんな物だぞ。それを研磨したりカットする事により綺麗な宝石になるんだ。」


俺がそう言うと、


「では、これもカットすればあのような綺麗なダイヤになるのですか。」


サイファがそう聞く。

「いや無理だろうな。ダイヤのカッティング方法でよくとられる、ブリリアンカットは差し込む光を乱反射させ、差し込んできたところから光を返す事により輝きを際立たせているんだが中に異物が入っているとそこで光が止まってしまうためあの輝きは出せなくなる。」


俺がそう言うと、


「ではどうしてこの中に閉じ込めたのですか。」


ユリーシャがそう聞く。


「岩や鉄よりダイヤのほうが硬いからだ。この中に封じれば中から出る事ができなくなるからだ。」


俺がそう言うと、


「そんなに硬いのかな。強い衝撃を与えれば簡単に砕けちゃうのに。」


リーファがそう言う。


「確かになダイヤは衝撃に弱いが圧力には強いんだよ、玄武が踏みつけても砕けないし変形もしないだろうな。そんなわけで、密閉された中から衝撃を与える事ができなければこの中から出れないということだ。」


俺がそう言う。


「キョウヤは色んな事を知っているのニャ。うちはそう言うのはぜんぜん知らないからすごいと思うニャ。」


ミリアがそう言う。


「そうですね。僕ももっと色々と勉強しないとなぁ。」


マイスがそう言う。


「この話はいったんおいといてだ、玄武、今から結界を解除するから水が一気に来ないように斥力で防いでくれ。」


俺がそう言うと、


「了解じゃ。」


玄武がそう言い、斥力を辺りに広げる。


「解。」


俺がそう言うと、結界を形成していた鏢が音もなく崩れ結界が消え、水が押し寄せてくるが玄武の斥力で水が途中で止まる。


「そのままゆっくり斥力を解除してくれ。」


俺がそう言うと、


玄武は、斥力の範囲を徐々に狭めていく。


「もう消してもいいだろう。」


俺がそう言うと、玄武は斥力を消し、水が完全に戻る。


「次は湖の浄化だな。」


俺はそう言い、符を一枚取り出し、飛翔を使い玄武の顔の前に行き、玄武の血を符につけ戻る。


「ユリーシャ、精霊結晶の開放を頼む。」


俺がそう言うと、


「解りました。」


ユリーシャはそう言い、首から精霊結晶を外し、


「水の精霊よ、結晶の力を解放せよ。」


ユリーシャがそう言うと、精霊結晶が淡く輝きだした。


それを見て俺は、符に魔力を通し、


「陽精陽光術 陽光浄破。」


俺がそう唱えると、符が弾け球状の白い光が俺の手の平に現れた。


「ユリーシャ、精霊結晶を俺の光の中に入れてくれ。」


俺がそう言うと、


「解りました。」


ユリーシャはそう言い、精霊結晶を光の玉の中に入れる。


俺はその後、光の玉を湖に沈めると、突然白い光が天に届かんばかりの円柱となり湖を覆う程度に広がり激しく光輝く。


しばらくすると光が消え、辺りを覆っていた毒は消え、水は澄んだ水色を湛えきらきらと陽光を受け煌いている。


「これで湖の浄化も終わったか。それじゃあ急いでラスティハイトに向けて出発するか。」


俺がそう言うと、


「主殿その前に我の傷を治してくれんか、ヒュドラに噛み付かれたところから出血が止まらんのじゃ。」


玄武がそう言う。


俺は飛翔を使い、玄武の傷口の前に行き、傷の具合を見る。


「どうやらヒュドラの唾液には吸血蝙蝠なんかと同じで血が凝固する働きを阻害する働きがあったみたいだな。」


俺はそう言い、傷口に手を当て霊波を送り傷を癒す。


霊波とは生命力の事で、それを他者に分け与える事により本来なら直らないような怪我や致命傷なんかも

癒す事ができる。ただし与えすぎると、自分の寿命を縮めたり最悪命を落とす事になりかねない。


「すまぬな。主殿。」


玄武がそう言う。


「気にするな。俺の都合で呼び出したんだからこれぐらいはしないとな。」


俺はそう言い、玄武の背に戻る。


玄武は俺が戻ったのを確認し湖を抜けるために進みだす。


「キョウヤさん。顔色が悪いようですけど大丈夫ですか。」


ユリーシャが心配そうにそう聞く。


「少し休めば大丈夫だ。」


俺がそう言う。


「それならいいのですが。余り無理をしないでくださいね。」


ユリーシャがそう言う。


「ああ、解っていはいるんだけどな無理をしないと勝てない者ばかりだからな。」


俺がそう言うと、


「そうでしたね。」


ユリーシャが落ち込んだ様子でそう言う。


「できるだけ無理はしないようにするさ。」


俺はそう言い、落ち込んでいるユリーシャの頭を撫でると、


「キャ。」


ユリーシャはそう短く悲鳴を上げ、顔を真っ赤にし逃げるように馬車に戻る。


「ん、そんなに頭撫でられるのが嫌だったか。」


俺がそう呟くと、


「きょうや、どんかん。」


紫苑がそう言う。


「はあ、いったい何の事だ。」


俺がそう言うと、


「しらない。」


シオンはそう言い、ぷいと明後日の方を向き歩いていってしまった。


俺が首をかしげている。




玄武はそんな事を聞きながら進み続ける。


湖を抜け、草原に出、下半身を大地と同化させ時速二百㎞ほどの速度で突き進む。


そしてその夜には、予定していた道のりの三分の二を過ぎていた。




「玄武。ここらで夕食にしよう。」


俺がそう言うと、


「うむ。解ったぞ。」


玄武はそう言い、歩みを止め、俺たちを降ろし人型となる。


「俺は夕食の準備をするからユリーシャとリーファは手伝ってくれ。」


俺がそう言うと、


「解りました。」


「いいよ。」


ユリーシャとリーファがそう言う。


「今度は何を作るの。」


リーファがそう聞く。


「天ぷらにしようかと思っている。」


俺がそう言うと、


「てんぷらってどのような料理なんですか。」


ユリーシャがそう聞く。


「フライに衣を着けた物だと思ってくれたらいいよ。」


俺はそう言い、馬車に向かい食材を選ぶ。


「リーファとユリーシャは芋と南瓜をを平べったく切ってくれ。」


俺はそう言い、リーファに芋と南瓜を手渡す。


俺は小麦粉を水に溶き、魚の頭を切り落とし、開きにし内蔵を捨てる。


「この南瓜硬くて切れないよ。」


リーファがそう言う。


「しょうがないそれは俺が切るから、ユリーシャが芋を切るのに四苦八苦しているみたいだからそっちを手伝ってやってくれ。」


俺がそう言うと、


「うん解った。」


リーファはそう言い、ユリーシャの元に行き手伝い始めた。


俺は南瓜を力任せに切り、三日月型に切りそろえる。


後は牛蒡や人参を細切りにし掻揚げの準備をする。


「キョウヤさん。切れました。」


ユリーシャがそう言い、切った芋を持ってくる。


「ああ、ありがとう。其処に置いてくれ。」


俺はそう言い、鍋に油を入れ、火にかける。


油がある程度の温度に達したら、具材に衣を付け揚げていく。


人数分をそうやって揚げていく。


「できたぞ。」


俺がそう言い、器に盛り付けて皆のいるところに運ぶ。


「天つゆも作ろうかと思ったんだが、材料が足りなかったから今回は塩をつけて食べてくれ。」


俺がそう言うと、


「解りました。」


ユリーシャがそう言い、塩をつけて一口食べる。


「周りはさくっとしていますが中のお芋は柔らかくてすごく甘くておいしいです。」


ユリーシャはそう言い、パクリと芋を一つたいらげた。


他の者達も、好きなものを取り食べ始めた。




食事が終わり、風呂の用意をし、女性達に先に入るようにいい、


「玄武、話があるんだが構わないか。」


俺がそう言うと、


「ふむ、真面目な話のようじゃな。構わぬぞ。」


玄武がそう言う。


「向こうへ戻したら、大陰に頼みがあるから近々こちらに呼び出すと言うことを伝えといてほしい。」


俺がそう言うと、


「ふむ。その頼みと言うものを聞いても構わぬか。」


玄武がそう聞く。


「ああ、呪符の残りが心とも無くなってきたのと、刀に皹が入ったんでその代わりの刀を取りに俺の家に

行って貰いたいという内容だ。」


俺がそう言うと、


「ふむ。頼みごとの内容は解ったのじゃがどのようにしてそこへ送るのじゃ。」


玄武がそう言う。


「俺の部屋にある、十二天将符の分霊符に術式をいじり転移せせるつもりでいるんだが問題があるか。」


俺がそう言うと、


「分霊符で召喚した場合の魔力の確保はどうするのじゃ。」


玄武がそう聞く。


「それは、この符を持たせる。」


俺はそう言い、鞄から一枚の符を取り出しそれを玄武に見せる。


「この符には還元の術式を組み込んであるから、これを持って行けば二、三日は持つから大丈夫だ。」


俺がそう言うと、


「そこまで準備が整っているのなら構うまい。あちらに戻れば大陰に伝えておこう。」


玄武がそう言う。


「ああ、頼む。それで明日の朝食後に送還するから、今日は風呂にでも入ってゆっくり休んでくれ。」


俺がそう言うと、


「解ったぞい。」


玄武はそう言い、立ち去る。


今日は俺も最後に紫苑と一緒に風呂に入り休む。


遅くなってしまい、すいません。

次の話は土曜日の二十三時には投稿できるとおもいます。

それではまた。

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