第十三話 玄武召喚
第十三話 玄武召喚
幸いにもその後魔獣の襲撃はなく。
昼前にキシュウ湖を見渡せる丘の手前に到着した。
此処で恭夜達は休憩をとることにした。
<SIDE:恭夜>
「キョウヤさん。この丘を越えたらキシュウ湖ですよ。」
ユリーシャがそう言う。
「そうか。それなら此処で休憩にしないか。キシュウ湖に入ったら休憩なんか出来そうも無いしな。」
俺がそう言うと、
「そうですね。それにそろそろお昼ですよね。」
ユリーシャがそう言う。
「シェロ、そう言うことなんで止まってくれるか。」
俺がそう言うと、
「解ったぞい。」
シェロはそう言い、一声鳴き、歩みを止める。それに続いてもう一台の馬車も止まる。
「キョウヤさん。如何したのですか。又、魔獣が現れたのですか。」
サイファが馬車から降りてきてそう言う。
「いや。この丘を越えたらキシュウ湖だから、その前に休憩を兼ねて昼食にしようと言う話になったんだ。キシュウ湖に入れば休憩している暇が無いだろうからな。」
俺がそう言うと、
「そうですか。解りました。」
サイファがそう言う。
「それで、マイスとミリアは料理できるのか。」
俺がそう聞くと、
「うニャ。うちは食べるの専門ニャ。」
ミリアがそう言う。
「僕も料理は苦手です。」
マイスがそう言う。
「そうか。まともに料理できるのは相変わらず俺だけか。この際だユリーシャ、料理覚えてみる気はないか。」
俺がそう言うと、
「え、料理をですか。私に出来るのでしょうか。」
ユリーシャはそう言う。
「何も最初からできるとは思っていないさ。少しずつ覚えていけばいいんだ。」
俺がそう言うと、
「解りました。やってみます。」
ユリーシャがそう言う。
「リーファ。俺は今から食材を取ってくるからその間にユリーシャに包丁の扱い方教えてやってくれないか。」
俺がそう言うと。
「うん、解った。」
リーファがそう言う。
「お願いします。」
ユリーシャがそう言う。
俺は馬車に行き、食材を選ぶ。
さて何にしようかな。
俺が食材を選び終え戻きた。
「キョウヤ、お帰り。」
リーファがそう言う。
「お帰りなさい。」
ユリーシャが続いてそう言う。
「ああ、ただいま。リーファ、此れを洗って細かく切ってくれないか。」
俺がそう言い、リーファに野菜を渡す。
「うん、解った。」
リーファはそう言い、野菜を受け取る。
「私は何をしたらいいんですか。」
ユリーシャがそう聞く、
「今日のところは、リーファのする事を見て覚えてくれないか。」
俺がそう言うと、
「はい。解りました。」
ユリーシャがそう言い、リーファに付いて行く。
俺は取ってきた自然薯を洗い皮を剥き、短冊切りにする。
次に、豚肉のブロックを薄くスライスしていく。
小麦粉を水に溶かし、二つのフライパンを用意しそれに油を引き、火に掛ける。
「キョウヤ、こんなもんでいい。」
リーファがそう言い、切った野菜を持ってきた。
「ああ、それだけ在れば十分だ。ありがとな。」
俺がそう言い、切った野菜を受け取る。
「後は何をすればいいのかな。」
リーファがそう聞く。
「後は、皿の用意を頼む。」
俺がそう言うと、
「うん解った。」
リーファはそう言い、馬車の方へユリーシャと共に行く。
俺はリーファが持ってきた野菜と自然薯を小麦粉を溶いた物の中に入れ、かき混ぜる。
此れでお好み焼きの種は完成だ。
フライパンもちょうどいい温度になったことだし焼いていくか。
一つのフライパンでお好み焼きの種を焼く。
お好み焼きの片面が焼けてきたら、もう一つのフライパンで肉を焼き、その上に卵を落とし黄身を潰し白身と軽く混ぜ合わせ、その上にお好み焼きをひっくり返してのせる。
空いたフライパンに再び、油を引き、次のお好み焼きを焼く。
「キョウヤ、取ってきたよ。」
リーファがそう言い、ユリーシャと共に持ってきた皿を置く。
「ああ、もう少しで焼きあがるから、そうしたら、其処にあるソースを塗っていってくれないか。」
俺がそう言うと。
「うん解った。」
リーファがそう言う。
俺は両面が焼けたお好み焼きを皿に移し、リーファに渡す。
「へー、また変わった料理だね。」
リーファはそう言い、ソースを塗る。
俺は、焼く作業を繰り返す。
リーファは焼けたお好み焼きにソースを塗る。
人数分焼けたところで、皆を呼び食事にする。
「此れは何ですか。」
サイファがそう聞く。
「ああ、此れは俺の国の料理でお好み焼きというものだ。」
俺がそう言うと、
「なんか平べったいパン見たいだよね。」
リーファがそう言う。
「そう言われてみればそうですね。」
ユリーシャがそう言う。
「そんな事は如何でもいいニャ。早く食べたいニャ。」
ミリアがそう言う。
「あははは、ミリアは食いしん坊だからね。」
マイスがそう言う。
「じゃあ食べるか。」
俺がそう言い、皆で食べる。
「あ、美味しいです。このソースが少し甘い感じで、卵やキャベツが凄く美味しいです。」
ユリーシャがそう言う。
「ほんとですね、お肉もカリッとしていて美味しい。」
マイスがそう言う。
「キョウヤの作るものはみんな美味しいよね。」
リーファがそう言う。
「そういってもらえると嬉しいな。」
俺がそう言う。
そして食事が終わり、
「そういえばキョウヤさん、宿を出るとき、ウエイトレスの娘から何か戴きませんでしたか。」
サイファがそう言う。
「ああ、そういえば貰ったな。昼にでも食べてくれと言っていたな。なんだろう。」
俺はそう言い、馬車に戻り、貰った包みを持ってきてみんなの前で開く。
其処には結構な量のクッキーがあった。
「クッキーかさすがに此れだけの量は一人じゃ食えないな。食事が終わったしお茶にしよう。此れはお茶受けにすればいいな。」
俺がそう言うと、
「それは私たちも食べてもいいんですか。」
ユリーシャがそう聞く。
「ああ、残してしまうよりはいいだろうしな。」
俺がそう言い、お茶の準備をしようとしたとき、
「お茶は僕が準備するからキョウヤさんは座っていてよ。」
マイスがそう言い、お茶の準備の為飛んで行く。
「マイス。うちも手伝うニャ。」
ミリアがそう言い、マイスの後を追う。
「あの、キョウヤさんキシュウ湖にいる蛇の魔獣に心当たりはありませんか。」
ユリーシャがそう聞く。
「ああ、あるぞ。ギリシャ神話に出て来るヒュドラだろうな。」
俺がそう言うと、
「それで、ヒュドラとはどういう魔獣なんですか。」
サイファがそう聞く。
「うん、ちょっと待ってくれよな。それはマイス達が戻ってからの方がいいだろう。」
俺がそう言うと、
「あ、そうですね。そうした方がいいですよ。」
ユリーシャがそう言う。
「ええ、解りました。では少し待つことにします。」
サイファがそう言う。
そして、ちょっと待つと、
「お待たせしたニャ。紅茶を入れてきたニャ。」
ミリアがそう言い、紅茶を運んできた。
「ミリア、入れたのは僕だよ。」
マイスがそう言いながら、こっちに飛んでくる。
「細かいことは気にしないニャ。」
ミリアがそう言う。
「ありがとな、ミリア、マイス。」
「ありがとう御座います。」
「ありがとう。」
「すいません。」
上から俺、ユリーシャ、リーファ、サイファがそう言い、紅茶を受け取る。
「それでキョウヤさん、ギリシャ神話に出て来るヒュドラについて教えてください。」
ユリーシャが紅茶を戴きながらそう言う。
「ああ、ヒュドラというのは、ギリシャ神話に出てきて、テューポーンとエキドナの子で、ヘラクレスに倒された。ヒュドラは九つの首を持ち、一本の首を切り落としても、すぐにそこから新しい二本の首が生えてくる。又、そのうちの一本の首が不死身で潰しても全ての首が再生してしまう。その為倒す手段が思い付かず、ヘラクレスは甥のイオラオスに助けを求めた。イオラオスは、首の切り口を松明の炎で焼き焦がす方法を思いついた。ヘラクレスが首を切り落とし、イオラオスが次々にその切り口を焼いた。ヒュドラを殺すには、真ん中にある一つの不死身の首を何とかしなければならなかったが、ヘラクレスはその首を巨大な岩の下敷きにして倒したがヒュドラの毒によりヘラクレスは人としての生に終止符を打つことになった。此れがギリシャ神話で語られているヒュドラの話だ。」
俺がそう言い、紅茶を一口飲む。
「キシュウ湖にいるのも此れと同じような魔獣なのですか。」
ユリーシャがそう聞く。
「ああ、同じようなではなく同じものだろうな。ヒュドラはエキドナの子だ。此処に来る前に倒した、キマイラもエキドナの子だ。だからキシュウ湖にいるヒュドラはギリシャ神話に出てきたヒュドラだろうな。」
俺がそう言うと、
「ですがそれはヘラクレスに倒されたのではないのですか。」
サイファがそう言う。
「言っただろう、不死身の首があると、岩で潰された程度では死にはしないさ、ただ身動きが取れなくされたというだけだ。」
俺がそう言うと、
「じゃあ、此方の世界に来ている魔獣はもしかしてそのギリシャ神話から来ているんですか。」
マイスがそう言う。
「うーん。一概にそうとは言えないが、そうかもしれないな、なんせエキドナは全ての魔獣の母なんて呼ばれているしな。同じくエキドナの子ででスフィンクスという魔獣はエジプト神話では神獣扱いされている。」
俺がそう言うと、
「全ての魔獣の母か。そして他の神話にまで影響を与える者か。」
マイスはそう言い、考え込む。
「キョウヤさん。私達でヒュドラは倒せますか。」
ユリーシャがそう聞く。
「俺らだけでは無理だな。」
俺がそう言う。
「それじゃ如何するニャ。」
ミリアがそう言う。
「だけど玄武の力を借りれば倒せるさ。」
俺がそう言う。
「ねえ、キョウヤ、如何して十二天将だっけそれの力をもっと借りないの。」
リーファがそう聞く。
「十二天将の力を借りれば確かに楽なんだが、呼び出すのに膨大な魔力が必要なのと、俺のいう事を聞いてくれるとは限らないというのもある。此れが一番問題なんだが、力が強すぎて一撃で山が吹き飛ぶ。こんなものを多様すれだこの世界の地形が変わってしまうぞ。」
俺がそう言うと、
「それじゃ使えないね。」
リーファがそう言う。
「わかってくれたらいい。」
俺がそう言う。
俺は紅茶を飲み終えたので、玄武を召喚するために立ち上がり、皆から少し離れた場所に行き、鞄から桔梗紋の入った十二枚で一括りの召還符を取り出す。
その中から黒色の符を取り出し、右手に持つ。
左手で剣印を作り魔力を指先に込め、空間に六芒星を描き更に九十度反転させた六芒星を描く。
描かれた十二芒星の中心に符を宛がい、
「我、汝と契約を結びし者、汝との契約に基づき汝を此処に呼び賜わん。汝、北方を守護する者よ我が呼び声に答え此処に現れ出でよ玄天上帝。」
俺がそう唱えると、符が変化し門と成り此処に玄武を召喚した。
「ほっほっほっ。久し振りじゃのう主殿。」
玄武はそう言う。
「ああ、久し振りだな玄武。その姿のときは玄天上帝といった方がいいのか。」
俺がそう言うと、
「ほっほっほっ。どちらでも構わぬよ、主殿の呼びやすいほうで呼んでくれたらよい。」
玄武がそう言う。
「なら、玄武と呼ばせてもらおうかな。それで玄武を呼んだ理由だが、この先の湖を渡りたいんだが、ヒュドラの毒に汚染されていて、俺たちだけでは渡れそうに無いんだ。それで玄武の力を借りたいんだが構わないか。」
俺がそう言うと、
「そう言うことなら構わぬよ、其処へ行く前にまず此処が何処なのか説明して欲しいのじゃが。此処は地球ではあるまい。」
玄武がそう言う。
「ああ、此処はヤハウェが創りし世界、エデンだ。俺は何者かにこの世界に召喚された。今この世界は魔王と名乗る者が現れてこの世界の者達と戦っている。それでこの世界で出会った者達と今は魔王を倒す為の旅をしていて、次の目的地がその湖を越えたところに有るんだよ。」
俺がそう言うと、
「ふむ、主殿は地球に帰る気は無いのかのう、主殿がこの世界に係わる必要性は感じぬのだが。」
玄武がそう言う。
「そうだな、本来なら関係ないといって帰るんだが、俺を呼び出したものが解らないし、帰っても又呼ばれるかも知れなしな、それに俺は今、一緒に旅をしている者達が気に入ったんだ。だから俺も力を貸したいと思っている。」
俺がそう言うと、
「解りました。主殿がそう申すのなら我は主殿に従いましょう。」
玄武は言葉遣いを正し俺に対し膝を折り頭を下げる。
「頭を上げてくれ玄武。慕ってくれるのは嬉しいが俺はお前のことは配下ではなく仲間だと思っているんだからそんな事はしないでくれ。」
俺がそう言うと、
「主殿がそう言うのならば従わねばな。それで我は本来の姿に戻ればよいのかな」
玄武がそう言う。
「ああ、頼む。」
俺がそう言うと、
「あい、解った。主殿も少し離れていてくれまいか。」
玄武がそう言う。
「ああ、解った。」
俺はそう言い、ユリーシャ達が居るところまで下がる。
玄武は気合を居れ、その姿が人から聖獣としての姿に変わる。
玄武の全長は三十㍍にもおよび、高さは八㍍ほどにも成る亀に似た姿となった。
「主殿。その者はギリシャの怪物のヒュドラで合っておるか。」
玄武がそう聞く。
「ああ、そうだが。」
俺がそう答える。
「ならば、主殿たちは、戦いに参加せぬ方がよいな。」
玄武がそう言う。
「それは何故なのですか。」
サイファがそう聞く。
「ふむ、エルフの者よ。ヒュドラの毒は解毒できぬのじゃよ。一度毒に犯されれば死ぬしかないのじゃ。」
玄武がそう言う。
「え、そうなのですかキョウヤさん。」
ユリーシャが俺にそう聞く。
「ああ、そのとうりだ。ヘラクレスもヒュドラの毒で一度死に、ケンタウロスの賢者アケローンと言う者はヘラクレスがヒュドラの毒を塗った毒矢に誤って当ってしまい余りの傷みに神に不死を返上したというぐらいだからな。」
俺がそう言うと、
「では玄武さんも危ないのではないのですか。」
ユリーシャがそう言う。
「ヒュドラの毒は蛇には効かんので、我は亀であり蛇でもあるから大丈夫じゃ。」
玄武がそう答える。
「そうなのですか。ですかどうして蛇には効かないとわかったのですか。」
サイファがそう聞く。
「この湖には多種多様な蛇がうようよ居る。ヒュドラの毒が充満して居るのにじゃ。其処から導き出され
る答えはもうわかったじゃろう。」
玄武がそう言う。
「なるほど。そう言うことですか。解りました。」
サイファがそう言う。
「それでしたら私達は如何したらよいのでしょうか。」
ユリーシャがそう言う。
「そうニャ。それニャったら湖に入れないニャ。」
ミリアがそう言う。
「その点は心配要らないさ。玄武、俺達を馬車ごと背中に乗せてくれないか。」
俺がそう言うと、
「お安い御用じゃ。」
玄武はそう言い、足を甲羅の中にしまい、甲羅の頂点部分を組み替え、凹みを作る。
「シェロ、玄武に巻きついている蛇に玄武の背まで運んでもらうんだが、お前や他の馬は取り乱さない自信があるか。」
俺がそう聞くと、
「そんな自身ある訳無かろう。」
シェロがそう言う。
「ならば、魔法で眠ってもらい、その間に運んだ方がいいか。」
俺がそう聞くと、
「それで頼む。」
シェロがそう言う。
「紫苑、ちょっとこっちに来てくれ。」
俺がそう言うと、
「クゥ、きょうや、なに。」
紫苑が走ってやってきてそう言う。
「ああ、この馬達に時騙しの幻術を掛けて欲しいんだが良いか。」
俺がそう言うと、
「クゥ、わかった。」
紫苑はそう言い、馬達はを見つめる。すると馬達は眠りに付いた。
「サンキュ。紫苑。」
俺はそう言い、紫苑を撫でる。
紫苑は嬉しそうに目を細める。
「皆は馬車に乗ってくれ、そうすれば玄武が運んでくれるから。」
俺がそう言うと、
「解りました。」
皆が声を揃えてそう言う。
「玄武それじゃ頼む。」
俺がそう言うと、
玄武に巻きついている蛇が馬車に向かい、馬車に軽く巻きつき馬を咥えて、玄武の背の凹みまで運ぶ。
俺は狗法の飛翔を使い、自力で玄武の背に行き、凹みの四方に呪符を張り、
「木精風術 四方風結界」
俺がそう唱えると、符が輝き、風の結界をドーム上に形成する。
「さて此れで毒はここに入って来ることは無いさ。」
俺がそう言うと、
「此れで漸くキシュウ湖を渡れますね。」
ユリーシャがそう言う。
「なあ、ユリーシャ俺が玄武を召喚しなかったら、どうやって湖を渡るつもりだったんだ。」
俺がそう聞きと、
「えっ。」
ユリーシャはそう言い、絶句した。
「てっ、考えてなかったのかよ。」
俺がそう言うと、
「うう、すいませーん。」
ユリーシャはそう言う。
「もう、ユリーシャはしょうがないなぁ。」
リーファはそう言って笑う。
皆も釣られて笑う。
そして俺達は玄武に乗ってキシュウ湖に向かう。
次週から掲載時間を変更します。
毎週土曜日の00:00に更新いたします。
ではまた次週。