第十話 悪魔の襲撃
第十話 悪魔の襲撃
恭夜達が眠りに付いてしばらくした後。
町の中央に在る噴水から突如火柱が上がり、その火柱から炎を纏った鳥の姿をした悪魔が現れた。
その悪魔は、空に魔方陣を描き無数の悪魔を召喚した。
召喚された悪魔達は町を襲い始めた。
物の数分で、町の至る所から火の手が上がり、町は阿鼻叫喚の地獄と化した。
悪魔に食われる者、我先にと人並みを掻き分け逃げ惑う者、親とはぐれ泣き叫ぶ子供をあやす者、町は混乱の最中に落ちていった。
<SIDE:恭夜>
「きょうや、おきる。」
紫苑が俺の顔をぺちぺちと叩きながらそう言った。
「どうした、紫苑。」
俺がそう聞くと、
「あくまくる。」
紫苑がそう言う。
「なに。それなら急いで着替えないとな。」
俺がそう言っていたら突然、町の中央に在る噴水から爆音と共に火柱が上がった。
「くそ、もう来たのか、紫苑サイファを起こしてやってくれ。」
俺はそう言いながら、手早く着替える。
「クゥー。わかった。」
紫苑はそう言い、サイファを起こす。
「何事ですか。キョウヤさん。」
サイファがそう尋ねる。
「悪魔がこの町に現れた。」
俺がそう言うと、
「え、本当ですか。」
サイファはそう聞き返す。
「本当だ。だからサイファも急いで準備してくれ。」
俺がそう言うと、
「解りました。他の方達は如何しましょうか。」
サイファは着替えながらそう聞く。
「俺がユリーシャ達のほうへ行くから、サイファはマイス達のほうへ行ってくれるか。」
俺がそう言うと、
「解りました。では宿の前で待ち合わせで構いませんか。」
サイファがそう言う。
「ああ、それでいい。俺は先に行くな。紫苑行くぞ。」
俺はそう言い、紫苑を引き連れて部屋を出て、ユリーシャ達の部屋へ向かう。
ユリーシャ達の部屋の前まで来た俺は、扉をノックしユリーシャに呼びかける。
「ユリーシャ起きてるか。」
俺がそう言うと、
「あ、はい。起きてます。外から大きな音が聞こえて目が冷めましたが何が起きたのですか。」
ユリーシャがそう聞く。
「悪魔が現れた。」
俺がそう言うと、
「え、悪魔ですか。どうして此処に。」
ユリーシャがそう言う。
「此処に来た理由は解らないが,ほっとく訳にもいかないからな。」
俺がそう言うと、
「そうですね。キョウヤさんは先に行っててもらえませんか。私も着替えましたらすぐに行きますから。」
ユリーシャがそう言う。
「ああ、宿の前でサイファと待ち合わせをしているから其処に来てくれ。」
俺はそう言い、紫苑を連れて宿の外へ行く。
宿の外に出た俺は、辺りの状況を見廻した。
無数の悪魔が人を家を襲っている。
町の中央の噴水のあった場所には炎を纏った鳥の姿をした悪魔が人々の魂を集めている。
「チッ、最悪だな。上級悪魔かよ。」
俺が舌打ちし、そう呟くと、
「お待たせしました。キョウヤさん如何したのですか。」
ユリーシャ達がやって来て、俺の顔を見て驚いたようにそう行った。
「あそこに居るのは侯爵のフェネクスだ。」
俺がそう言うと、
「フェネクスとはどういった悪魔なのですか。」
サイファがそう聞く。
「フェネクス、フェニックスとも呼ばれるが、聖なる不死鳥のフェニックスと混同されないために悪魔の方をフェネクスと呼ぶそうだ。能力は、火を自在に操り、自由に空を飛び、高速で動き続けることが出来る。」
俺がそう言うと、
「かなり厄介な相手のようですね。」
サイファはそう言う。
「ああ、それだけではなく、今回の悪魔の中にはブラスデーモンやグレーターデーモンなんかもいやがる。」
俺がそう言うと、
「ブラスデーモンやグレーターデーモンという者はどういったものなんですか。」
マイスがそう聞く。
「下級の悪魔の中にも階級があって、一番下がレッサーデーモン、次にブラスデーモン、最後にグレーターデーモという位に分かれている。上の位に行くに連れ、理性的な行動を取ることが出来るんでな下手をするとそこらへんの男爵や子爵なんかよりも厄介かも知れん。」
俺がそう言うと、
「なぜ爵位持ちの悪魔より厄介なのですか。」
サイファはそう聞く。
「ああ、爵位持ちの悪魔なら人間なんか馬鹿にして油断してくれるからな其処をつけるが、ブラスデーモンやグレーターデーモンは其処までの知性は無いから正面切手の戦いになりやすいんだ。」
俺がそう言うと、
「其処まで厄介なのですか。」
サイファがそう聞く、
「ああ、戦ってみれば解るさ。下級の悪魔だからと言って油断するなよ。慢心は死に繋がるぞ。」
俺はそう行って、地を蹴り此方を攻撃しようとしていた悪魔を刀で切り伏せる。
「悠長に話している間がなくなってきたな。俺と紫苑でフェネクスは抑えるから、ユリーシャとリーファは住民の避難と護衛を頼む。サイファは他の悪魔達を頼む。マイスとミリアは出来ればサイファの援護を頼みたい。」
俺がそう言うと
「解りました。キョウヤさんとシオンさんも気を付けて下さいね。」
ユリーシャはそう言い住民達の方へと向かった。
リーファもユリーシャの後を追う。
「解りました。サイファさんの援護をすればいいんですね。では、サイファさん行きましょうか。」
マイスがそう言い、ミリアとサイファと共に悪魔の密集しているところへ向かう。
「さて、俺達も行くか。」
俺がそう言うと、
「クゥー、さっさとたおす。」
紫苑が不機嫌そうに言い、広場を目指して駆け出した。
「解ったよ紫苑。」
俺がそう言いながら紫苑の後を追う。
<SIDE:END>
<SIDE:ユリーシャ>
私はキョウヤさんに頼まれて町の人達を助けに向かっています。
町の人達は、町外れの広場の方へ逃げているようです。
私も其処へ向かいエデンの力を使い結界を張ろうと考えています。
ですが私の前に大型の悪魔が二体と赤黒い体色をした人に近い感じの悪魔が一体私の前に居ます。
此れがブラスデーモンとグレーターデーモンなのでしょうか。
「ユリーシャ。こいつらは僕に任せて。エデンよ僕に力を貸して、アローフォース。」
リーファさんはそう唱え、五本の矢の鏃にエデンの力を付与して弓を引きました。
二本の矢は悪魔に当たりましたが三本は外れてしまいました。
ですが、五本の矢に篭められたエデンの力が弾け、悪魔達を屠ってしまいました。
「凄いです。何時の間にそのような物を扱えるようになったのですか。」
私がそう聞くと、
「キョウヤや兄さんが剣に魔力やエデンの力を宿していたから僕も矢にエデンの力を宿したら良いのかなと思ったんだけど、貫通力が上がるだけで一本の矢で倒せる数が少ないんだよね。それなら鏃にエデンの力を集束してそれを任意に解き放てれば一度に多くの悪魔を倒せるんじゃないかなと思ってやってみたんだ。まあ結果は見ての通りと言う訳なんだけど、体にに掛かる負担が思っていた以上に大きいのと暴発しないためにずっと集中していないと駄目なのが辛いね。」
リーファさんがそう答えます。
「え、即席でやったのですか、無茶をしますね。」
私がそう言いますと、
「ははは、でも此れぐらいやらないとキョウヤ達の足手まといに成っちゃうからね。」
リーファさんは笑いながらそう言います。
「そうですね、爵位持ちの悪魔に対抗できるのがキョウヤさんとシオンさんだけですものね。」
私がそう言いますと、
「うん、だから少しでもキョウヤ達の負担を減らせればいいなと思ったんだけどね、まだ改良しないといけないんだよね。」
リーファさんがそう言います。
「今はキョウヤさんに頼まれたことを済ませてしまいましょう。」
私はそう言い、目的の場所へ急ぎ、到着と同時に、
(スティーア、力の制御をお願いしますね)
念話でスティーアにそう頼みますと、
(はい、任せるです。)
スティーアの返事を聞くと私は、
「エデンよ私に力を貸し与え悪しき者から守る力と成せ シェルーラ。」
私がそう唱えると、広場を覆いつくす結界が張られました。
「住民の皆さんは此処に入っていて下さい、私達は此処に悪魔を呼び出したものを倒しに向かいます。」
私がそう言い、そのままサイファさん達と合流するためにすぐさま走り出しました。
住民の方が何かを言っていましたが全く無視してしまいました。
<SIDE:END>
<SIDE:サイファ>
私達は悪魔達が集まっている場所を目指しています。
「僕があの集団に精霊魔法を打ち込んで気を引きますので、サイファさんは悪魔に止めを刺して下さい。」
マイスさんがそう言い、
「風の精霊よ水の精霊と混じり雷を生み出せ。サンダーレイジ。」
マイスさんがそう唱えると、放射状に電撃が放たれました。
悪魔に精霊魔法は効かないはずなのに、マイスさんの魔法は確実に悪魔達にダメージを与えています。
私は聞きたいのを我慢し、
「エデンよ私に力を貸し与えよ。フォースセイバー」
私は神聖魔法を剣に掛け悪魔を切り倒す。
「ウニャ。エデンの力を剣に宿したのかニャ、うちは使えそうも無いニャ。」
ミリアさんがそう言い、その代わりといわんばかりに、
「エデンよ力を貸すニャ。アクセラレイター。」
ミリアさんはそう唱えると、私の眼では追えない程に加速し悪魔を双剣で切り刻みました。
「凄いですね。」
私はミリアさんにそう言いました。
「そうかニャ。でも体に掛かる負担が大きいからあんまり長時間は使えないニャ。」
ミリアさんがそう言います。
「グルアアアアァァァーーー」
悪魔が叫び、黒い塊が此方に飛んできました。
私達はそれを避けて、
「悠長にしゃべっている間は無いようですね。」
私がそう言い、その悪魔に斬り付けますが、腕で斬撃を受け止めそのまま私を弾き飛ばしました。
「くっ、これがブラスデーモンですか、確かに先ほどの悪魔達とは強さが違いますね。」
私は立ち上がりながらそう言いました。
「うニャ、その後ろに居るのがグレーターデーモンかニャ、簡単には倒せそうも無いニャ。」
ミリアさんがそう言います。
「僕が精霊魔法で隙を作りますから、二人で何とかして下さい。」
マイスさんがそう言い、
「火と風の精霊よ僕の命に従いて焼き尽くせ フレイムトルネイド。」
マイスさんがそう唱えると、炎の竜巻が悪魔達に襲い掛かるが、グレーターデーモンの咆哮による衝撃波で精霊魔法が相殺されてしまいました。
「そんな僕の渾身の魔法が一鳴きで相殺されるなんて。」
マイスさんは信じられないという様子で肩を落としています。
その隙を付いてブラスデーモンが突進し、爪を振るいます。
それを私が剣で受けとめ、いなします。
「きついですね、このままじゃジリ貧です。キョウヤさんは上位の悪魔と互角に戦い今も又上位の悪魔と戦って居るというのに私は下位の悪魔にさえ勝てないなんて。」
私は、悪魔の攻撃を何とかしのぎながらそう言うと、
「え、この前にも上位の悪魔と戦ったのですか。結果はどうなったんですか。」
マイスさんがそう聞く、
「シオンさんが止めを刺しましたよ。」
何時の間にかこちらに来ていた、ユリーシャさんがそう言いました。
「情けないよ兄さん、キョウヤはこれ以上の相手と戦っているんだから泣き言を言わないの。」
リーファはそう言い、
「エデンよ僕に力を貸して アローフォース。」
リーファはそう唱え、鏃にエデンの力を付与し弓で放つ、
矢はブラスデーモンに当ると暴発しブラスデーモンの上半身を吹き飛ばす。
更にユリーシャさんが、詠唱に入る。
「エデンよ私にその力を貸し与え悪魔を屠る力と成せ パワーブレイク。」
ユリーシャさんがそう唱えると、膨大なエデンの力がユリーシャさんに集まりそれが球体となり悪魔へと飛んでいきます。そして着弾と同時にその球体が弾け衝撃波となり悪魔をことごとく屠ります。
「す、凄いですね。ですがそれほどの力を使って体は大丈夫なのですか。」
私は余りの力の大きさに驚き、ユリーシャさんの体の心配をしましたが、
「スティーアがエデンの力を制御してくれるので私には殆ど負担が掛からないのです。」
ユリーシャさんがそう答えました。
「そうなのですか、それでしたらユリーシャさんは爵位持ちの悪魔とも戦えそうですね。」
私がそう言うと、
「私に負担が無くとも、スティーアに負担が掛かりますからそんなには使えないのです。」
ユリーシャさんがそう言い、
「殆どの悪魔は倒したから、キョウヤの援護に行こうよ。」
リーファがそう言います。
「さすがに上位悪魔をキョウヤとシオンさんだけに任せるわけには行きませんか。」
私はそう言い、私達はキョウヤさんの居るであろう噴水広場を目指して移動を始めました。
<SIDE:END>
<SIDE:恭夜>
俺は立ち塞がる悪魔共を斬り捨てながら、噴水広場に向かっている。
噴水広場の近くまで来たとき、
「きょうや、どうする。」
紫苑がそう聞いてくきた。
「俺が空から行くから、紫苑は下から行って、隙を突いて攻撃してくれ。」
俺がそう言うと、
「わかった。」
紫苑はそう言い、駆け出した。
俺も狗法の飛翔を使い空を飛び、フェネクスと相対する。
「よう、フェネクス、まさか侯爵であるお前が魂を集める為だけにこんな小さな宿場町を襲うとは落ちたものだな。」
俺がそう言うと、
「私のことを知っていて、更に空を飛べる者が居るとは思いもよりませんよ。」
綺麗な声でフェネクスはそう言う。
「挑発には乗らないか。」
俺がそう言い、呪符を構える。
「人間風情が私に勝てるとでも。」
フェネクスはそう言う。
「さあな、それはやってみなきゃ解らないぜ。水精氷術 氷雨弾。」
俺がそう唱え、符を上空へ飛ばすと符が弾け、三㎝程の氷弾が雨のごとく降り注ぐ。
「その程度如何というほどでもありませんよ。」
フェネクスはそう言い、体から熱波を放ち氷弾を無効化する。
「水精氷術 氷盾。」
俺は急ぎそう唱え符術を発動させ身を隠せるほどの大きさの氷の盾を作り熱波を防ぐ。
「はあ、やっぱとんでもないな。」
俺がそう言うと、
「くすくす、その程度ですか、次は此方から行きますよ。」
フェネクスはそう言うと、羽ばたき、無数の炎の羽を縦横無尽に飛ばしてくる。
「く、水精氷術 氷爆。」
俺がそう唱え、符を迫り来る炎の羽目掛けて投げると同時に俺は後方へ全力で下がる。
符が弾け、氷の爆発が起き、炎の羽を全て消し去る。
フェネクスはいつの間にか俺の目の前に現れて、火球を吐く。
「くっ。」
俺は急上昇して火球を回避する。
「木精雷術 紫電光。」
俺がそう唱えると、持っていた符から紫色の雷光が放たれる。
フェネクスは下降してそれを回避し、俺目掛けて急上昇してくる。
俺はその場に符を三枚残し飛翔を解き、自由落下し体当たりを回避し、
「水精氷術 氷爆。」
俺は術を唱えると、残しておいた三枚の符が弾け、三度の氷の爆発を起こす。
そこから多少の傷を負ったフェネクスが現れる。
その顔には怒りを宿し、俺を睨みつける。
フェネクスが何か言おうとしたその時、
「コーン。」
紫苑の鳴き声が響き、フェネクスへ雷撃が襲い掛かる。
「グギャアーーーー。」
フェネクスの悲鳴が轟く。
「此れで倒せたら楽なんだがなぁ。」
俺はそう言い、紫苑の隣に降り立つ。
「ぐう、まさか私がここまで傷つくことになろうとは思いもしませんでしたよ。」
フェネクスはそう言い、大きく息を吸い込み、膨大な熱量を伴ったブレスを吐く。
「水精氷術 氷盾。」
俺はそう唱えると、符が弾け俺の前に身を隠せるほどの大きさの氷の盾を作り紫苑を抱え、
「水精水術 護水球。」
俺はそう唱えると、符が弾け俺の体全体を覆う水球を生み出す。
氷盾と護水球でブレスを耐える。
「紫苑、悪いけど雨を呼んでくれないか。」
俺は紫苑にそう言い、符を構え、
「木製風術 烈風斬刃。」
俺はそう唱えると、符が弾け無数のかまいたちを発生させフェネクスを襲う。
フェネクスは急上昇してそれを交わす。
その隙に紫苑はその場からは離れ、力を溜める。
俺は時間稼ぎをするためにフェネクスに話しかける。
「お前ら悪魔はこの世界じゃかなりの制限を受けるみたいだな。俺が聞いたフェネクスは音速で空を飛び、一息で町一つを灰燼に帰すブレスを吐くと聞いていたからな。」
俺がそう言うと、
「くっ、確かにその通りです。この世界は私が思っていた以上に力が出せません。本来の任務の途中で此処によっただけで彼方のような者に出会うとは予想外でしたよ。この傷では任務は果せそうもありませんからせめて彼方だけは殺しましょう。」
フェネクスはそう言い、翼を羽ばたかせ炎の羽を無数に降らせる。
「土精地術 土隆壁。」
俺がそう唱えると、符が弾け地面が隆起し俺を守る土の壁が現れた。
炎の羽は土の壁に阻まれて俺には届かない。
「くっ、こしゃくな。」
フェネクスはそう言い、高速で動き俺を翻弄しようとする。
その時、
「コーーーン。」
紫苑の鳴き声があたりに響く。
すると湿った風が吹き始める。
「コーーーーン。」
紫苑の鳴き声が再びあたりに響く。
雨雲が集まり月を隠す。
「コーーーーン。」
紫苑の鳴き声が三度響く。
雷がごろごろと鳴り出し、ぽつぽつと雨が降り出す。
「コーーーーン。」
紫苑の鳴き声が四度響くと、
稲光が激しさを増し、雨脚を強める。更に無数の雷撃がフェネクスに襲い掛かる。
「紫苑が遣ってくれたみたいだな。」
俺はそう言い、紫苑の元へ向かう。
「紫苑、疲れているところ悪いが大技を使うからそれまでの時間稼ぎ頼めるか。」
俺がそう聞くと、
「わかった。やってみる。」
紫苑はそう言い、掛けて行き、俺と紫苑の幻体を多数作り出しそれがフェネクスを襲う。
「な、質量を伴った幻体ですと、このようなものまで扱えるとは益々持って見過ごせませんね。」
フェネクスはそう言い、炎のブレスを吐き幻体を破壊してゆく。
俺は五枚の符を五芒星の形に配置しその中心に一回り大きい符を翳す。
「いくぜフェネクス。此れが俺の切り札だ。」
俺がそう叫び、
「水精水神術 八岐大蛇。」
俺がそう唱えると、六枚の符が一斉に弾け俺の体を中心に直系三m程の水の球体が現れる。
俺は飛翔を使い空に浮き、球体から東洋竜を模した八つの水の竜が首を伸ばし現れる。
八つの頭を自在に操り縦横無尽に四方八方から攻める。
フェネクスは竜の頭や首の合間を縫うようにし回避する。
「くぅ、こしゃくな。」
フェネクスはそう言い、膨大な炎を纏い体当たりで竜を潰すが、
すぐさま潰せれた頭を辺りの水を使い再生させる。
「な、なんですと、成らば本体を潰せば。」
フェネクスはそう言い、大きく息を吸い込み特大の炎のブレスを吐く。
俺は八つの頭でブレスを防ぐ。
「コーン。」
紫苑の鳴き声が響き、ブレスを吐くために動きを止めたフェネクスに無数の雷が降り注ぐ。
「グギャアアーーーーーー。」
フェネクスの悲鳴が轟く。
俺は失った頭を辺りの水を吸収し再生させ、八竜をフェネクスを囲うように配置し、
一枚の符を取り出し、最大限に魔力を篭める。
「水精水術 水竜暴流破。」
俺がそう唱えると、符が弾け、八竜のあざとが開き八条の水のブレスがフェネクスに襲い掛かる。
全ての魔力を使い果たし八岐大蛇は消える。
「此れで倒せていなければ俺はもう打つ手なしだな。」
俺は頭痛で痛む頭を抑えながらそう言うと、
「もうだめ。」
紫苑も眠そうにしていて目が半分閉じている。
水煙が晴れ其処から満身創痍のフェネクスが現れる。
「ぐう。危なかったもう少しで滅びるところでした。もはや彼方達は立っているのがやっとのようですね。彼方達を殺し、私は帰る事にしましょう。」
フェネクスはそう言い、火球を生み出し此方へ飛ばす。
俺はもはや何もできることが無かった。
「ははは、どうやら此処まで見たいだな。」
俺はそう言い、眼を閉じる。
「させませんよ。」
ユリーシャがそう言い、
「エデンよ私に力を貸し与え、彼の者を守る力と成せ シェル。」
ユリーシャがそう唱えると、俺と紫苑を護る結界が張られる。
火球は結界に当たり爆音を轟かせるが俺にその熱量が届くことは無かった。
「エデンよ力を貸して アローフォース。」
リーファがそう唱え、弓を放つ。
フェネクスは大きく回避し、
「くっ。今の私では彼方達の相手は出来ませんから此処は引かせてもらいます。」
フェネクスはそう言い、転移する。
「キョウヤさん大丈夫ですか。」
ユリーシャがそう聞く。
「さすがに、・・・限界・・・だ。」
俺は途切れ途切れにそう言い、ぶっ倒れた。
「キョ、キョウヤさん。」
ユリーシャがそう言い、慌てて俺に駆け寄ってくるのが見えた。
<SIDE:END>
<SIDE:????>
宿場町から少し離れた場所に転移したフェネクスは、
「ぐう、魔王様に知らせなければ。」
フェネクスは苦しそうにそう呟く。
「フェネクス。御免ね。まだ恭夜の事を他の者に知られるわけには行かないのだから貴方は此処で死んでね。」
私はそう言い、フェネクスの頭を握りつぶす。
「グギャアアーーーーー。」
フェネクスは断末魔の叫びを上げ塵へと帰った。
「恭夜。もう少ししたら彼方に会いに行くね。それまで死んだら駄目だよ。」
私は恭夜が居るであろう場所を見つめそう言い、お母様のいる場所を目指し転移する。
<SIDE:END>
すいません。更新が随分遅くなってしまいました。
仕事も漸く落ち着いてきたので、今度こそ週一で更新が再開できそうです。
次話は閑話を挟んでとなりそうです。
では、又。