第七話 宿場町へ
第七話 宿場町へ
恭夜が目を覚ましたのは日が昇りきる薄暗い時間帯だった。
恭夜は服装を整え、簡単な身支度をすませて、日課の鍛錬を紫苑と共にしていた。
<SIDE:恭夜>
「紫苑次は少し早めで頼む。」
俺はそう言い、刀を構える。
「わかった。」
紫苑がそう言い、狐火を三つ感覚を空けて飛ばしてくる。
俺はそれを一つ、二つ、三つと斬り伏せる。
「紫苑速度はそのままで三つ同時でたのむ。」
俺はそう言い、刀を鞘に戻し抜刀の構えを取る。
「わかった。いくよ。」
紫苑はそう言い、狐火を三つ同時に飛ばす。
「はあーー、斬。」
気合を入れ、抜刀する。狐火を三つとも一太刀で斬る。
「すごいですね、キョウヤさんは毎日此れをしているのですか。」
サイファがそう聞いてきた。
「ああ、ほぼ毎日かな、さすがに雨の日や風の強い日は目測が狂ってしまうからな。その場合は別のことをしているな。」
起きてきたサイファにそう答えた。
「まだ皆さんは寝ていますので、良かったら手合わせ願えませんか。」
サイファがそう言ってきた。
「ああ構わない。約束していたからな。」
俺がそう言い、刀を構える。
サイファも剣を構え、間合いを計る。
俺はサイファの足元から切り上げを放つ。
サイファはバックスッテプでかわし更に剣で刀を弾く。
サイファは俺にできた隙を逃さず上段からの追撃にきた。
俺はそれを刀で受け流し、腹に蹴りを放つ。
サイファは蹴りを受けるものの後ろに跳び威力を軽減する。
「まさか蹴りが来るとは思いませんでしたよ。危うくまともに喰らう所でした。」
サイファはそう言い、剣を構えなおす。
「なにを言うんだか、しっかり反応していたくせに。」
俺はそう言い、刀を下段に構える。
「そうでもないのですがね。」
サイファはそう言いながら、胴に切り払いを放つ。
それに対し俺は、剣に切り上げを放つ。
剣と刀がぶつかりカキンと火花を散らす。
俺は一旦後ろに下がり間合いを取ろうとするが、サイファは踏み込み片手で上段より剣を振り下ろす。
俺は無理やり体を捻り回避する。
それを見るや、サイファは、剣から手を離し、蹴りをわき腹へ放つ。
俺は無理な体勢であるため蹴りをわき腹にまともに喰らい吹き飛ぶ。
サイファは剣を拾い、屈んだ状態から宙へ跳び浴びせ蹴りを放つ。
俺は地を転がり回避し、急ぎ立ち上がる。
其処にサイファの突きが迫り、俺ののど元でピタリと止まった。
「俺の負けだな。サイファは剣術だけでなく体術も相当な者だな。」
俺がそう言うと、
「それは三千年程、鍛錬をしていますから。」
サイファがそう言った。
「三千年。そりゃ勝てないはずだ。」
俺がそう言うと、
「キョウヤさんはどれ位の時から鍛錬をしているのですか。」
サイファがそう聞いてきた。
「五歳くらいの時から体術を学び、術の基礎を教わった。剣術は三年前から始めた。」
俺がそう答えると、
「キョウヤさんの使っている剣技で鞘から抜刀する技がありましたよね、あれを使われると私が負けていたというか死んでいたでしょうね。あれはどのような技なのですか。」
サイファがそう聞く。
「ああ、抜刀術または居合いなんて呼ばれるものでな、鞘で溜めを作り剣速を上げるのだけど途中で止める事なんて出来ないからなサイファの言うとおり殺してしまいそうだから使わなかった。」
俺がそう答えると、
「私の剣でも出来るのですか。」
サイファがそう聞く。
「いや、難しいだろうな。俺の使っている刀のように反りが無いと鞘から綺麗に抜けないんだよな、だから真っ直ぐな剣では無理とは言わないがかなり難しいと思うぞ。」
俺がそう答えた。
「そうですか私は普通に剣で戦うしかないのですね。」
サイファがそう言う。
「普通って、それであそこまでの剣速や剣戟が出来てよく言うわ。俺は自分の力が足り無いから小手先の技術に頼っているんだが、サイファはそれが必要無いほどのレベルに居るんだから羨ましい限りだよ。」
俺がそう言うと、
「そうなのですか、私は人と比べたことが無いのでよく解らなかったのですがキョウヤさんにそう言っていただけると自信が持てますよ。」
サイファは嬉しそうにそう言う。
「そろそろ朝食の用意をしないといけないな。紫苑は二人を起こしに行ってくれないか。」
俺がそう言うと、
「わかった。いってくる。」
紫苑はそう言って、駆けて行く。
「私もシオンさんと一緒に行った方が良かったのではないのですか。」
サイファがそう言った。
「いや、女性は異性に寝顔を見られるのを恥ずかしがるからな、だから紫苑だけに行ってもらったんだ。サイファには食器や火熾しを頼みたい。」
俺がそう言うと、
「そういう事なら解りました。」
サイファはそう言い、薪を集めに行った。
俺は朝食の食材を取りに荷馬車へ向かう。
荷馬車に乗り込もうとした時突然思いもよらぬ者から声を掛けられた。
「すまぬがこの手綱を外してくれんか、ここらの草は食べ尽くしてしまってのう食事ができんのじゃ。」
馬がそう言ってきた。
「うわ、びっくりした。まさか馬がいきなり話しかけてくるなんて思はないからな。」
俺がそう言うと、
「うむ、それはすまぬことをした。狐のお譲ちゃんが話しているのを見てのわしが話しかけても大丈夫だと思ったんじゃが。」
馬がそう言う。
「突然だったから驚いただけだ。手綱を外せばいいんだよな。けど逃げたりしないよな。」
俺がそう言うと、
「安心せい、逃げるのなら悪魔が襲ってきたときに逃げておる。」
馬はそう言う。
「それもそうだな。」
俺はそう言い、全ての馬の手綱を外す。
「うむ、すまぬな。食事の後で良いから姫様を連れてきてくれんか、話したいことがあるのでな。」
馬がそう言う。
「ああ、解った。じゃあ又後でな。」
俺はそう言い、荷馬車から食材を見繕い運び出す。
「遅かったですね。」
サイファが火を熾し、食器を並べて待っていた。
「うん、ちょっとした事があってな。」
俺はそう言い、手早く朝食の用意に取り掛かる。
「おはよう御座います。」
「おはよう。」
ユリーシャとリーファがそう言い、こっちにやって来た。
「ああ、おはよう。朝食はもうちょっと待ってくれなすぐ出来るから。」
俺はそう言いながら目玉焼きを作り、サラダを皿に盛り付ける。
「はい。解りました。ではあちらで待ってますね。」
ユリーシャがそう言い、リーファ達を連れて即席で作ったテーブルのところへ移動する。
俺は人数分の目玉焼きを作り、パンを焼き、紅茶を淹れた。
「おおい、出来たぞ、其方に運ぶのを手伝ってくれ。」
俺がそう言うと、ユリーシャ達が此方に来て運んでくれた。
「それじゃ、食べるか。」
俺がそう言い、皆で食べ始めた。
「この後すぐに出発という訳にはいかないでしょうね。」
サイファがそう言うと、
「え、どうして。」
リーファがそう聞いてきた。
「全ての馬車をこの人数でどうやって運ぶんです。」
サイファがそう答えると、
「あ、そっか、僕は馬車なんか運転出来ないよ。誰か出来るの。」
リーファがそう言うと、皆首を横に振る。
「じゃあ、どうするの、此処から徒歩で行くの。」
リーファがそう聞く、
「それなんだが、どうにかなるかも知れんぞ。」
俺がそう言うと、
「え、本当ですか。」
ユリーシャがそう言う。
「ああ、人の言葉をしゃべる馬が居た。そいつが食事が終わった後にユリーシャに話があるといっていたしな。」
俺がそう言うと、
「しゃべる馬ですか、信じられないです。でもキョウヤさんがそう言うのなら本当の事なんですよね。」
ユリーシャはそう言い、食事を続ける。
「さっさと食事を終わらせてその馬に会いに行こう。」
リーファがそう言い、急ぎ食べだす。
「それでしゃべる馬と移動にどういう関係があるのですか。」
サイファがそう聞いてきた。
「その馬なんだが実は荷馬車の馬なんだよ。それもどうやら年長者みたいでな、その馬のいう事なら他の馬もいう事を聞いてくれるんじゃないかと思ってな。」
俺がそう答えると、
「そうなのですか、私は余り馬には詳しくないのでよく解らないのですが。」
サイファがそう言う。
「馬は本来臆病な生き物でな悪魔なんかの襲撃が在ったりしたら一目散に逃げ出す生き物なんだよ。だけど逃げずに此処に留まっていることから、その馬が周りを落ち着けてくれたんだろうな。だからその馬が指示を出してくれれば業者がいらないんじゃないかと思ったんだ。話さないと解らないけどな。」
俺がそう言うと、
「そういう事ですか。それなら可能性はありそうですね。」
サイファがそう言う。
「あの、その方の話とは何なのでしょうか。」
ユリーシャがそう聞いてきた。
「悪い。それは聞いてないは。」
俺がそう言うと、
「そうですか。では会って聞くしかないのだすね。」
ユリーシャがそう言う。
「ああ、そうだな。でも俺も付いて行くからそんなに心配しなくてもいいぞ。」
俺がそう言うと、ユリーシャは嬉しそうに、
「はい、お願いします。」
と言った。
「僕たちは付いて行かない方がいいみたいだね。」
リーファがそう言うと、
「そうですね、ここはキョウヤさんと二人きりの方がユリーシャさんにとってはいいのかもしれませんね。」
サイファがそう言うと、
「え、え、え。」
ユリーシャは顔を真っ赤にし、オロオロしている。
「二人とも余りユリーシャをからかってやるなよ。」
俺がそう言うと、
「すいません、まさかそういう反応をされるとは思いませんでしたから。」
サイファがそう言う。
「僕も、ユリーシャがそこまで取り乱すとは思は無かったから。」
リーファがそう言うと、
「二人とも酷いです。私をからかってそんなに楽しいですか。」
ユリーシャが少し怒ったように言うと、
「すいませんユリーシャさん。」
「ごめんねユリーシャ。」
サイファとリーファが謝る。
「はい。では皆で行きましょね。」
ユリーシャがそう締め括る。
そして食事が終わり荷馬車のほうへ行く。
「おーい。来たぞ。」
俺がそう言うと、
「わざわざすまぬな。」
馬がそう言う。
「あの、お話があると伺ったのですが。」
ユリーシャが遠慮気味にそう尋ねる。
「うむ、姫様達はこの先如何するのかと思っての。」
馬がそう言う。
「えっと、私達は此処から南にある宿場町へ行き其処からキシュウ湖を通りラスティハイトへ向かおうかと考えています。」
ユリーシャがそう答えると、
「それでわしらを如何する心算なのかのう。」
馬は更にそう尋ねる。
「その前にちょっと聞きたいんだがあんたは他の馬に指示を出して俺達のいう事を聞かせられるか。」
俺がそう聞くと、
「無茶なこと意外なら大抵の事は聞かせられるぞい。」
馬がそう答える。
「それならば、俺達は誰も馬車の操作など出来ないからお前が他の馬に指示を出して荷車と俺達を乗せる馬車を引いてくれないか。」
俺がそう聞くと、
「若い者は悪魔の襲撃で怯えてしまっておるから連れて行かんほうが良いじゃろう。だがそこそこ年のいっている者なら連れて行っても大丈夫じゃろう。そう言うことじゃから余り沢山の荷車は引けんぞ。」
馬がそう言う。
「そうか、そうだな荷車に日持ちする食材とお金や貴金属を積んで、俺達の乗る馬車には服や日用品を積んだら二台で十分行けるだろうな。」
俺がそう言うと、
「あの、キョウヤさん荷車は二台にしませんか。」
サイファがそう言ってきた。
「何でだ、この大きさの馬車ならかなりの物が積めるだろうに、わざわざもう一台増やす必要は無いと思うんだけどな。」
俺がそう言うと、
「キョウヤさんはユリーシャさんの馬車の中を見ていないからそんなことが言えるのですよ。」
サイファがそう言う。
「うん、ユリーシャの馬車の中がどうしたんだ。」
俺がそう聞くと、
「とりあえず中を見たら解るよ。」
リーファがそう答える。
俺は言われたとおりにユリーシャの馬車の中を見た。
「な、なんじゃこりゃ。」
俺は目の前の光景に自然とそう言ってしまった。
馬車の中は脱ぎ捨てられた服や下着、更には箪笥から引っ張りだしたと思われる服やドレスなんかで馬車の中は足の踏み場も無い常態になっていた。
「ユリーシャ。お前は此れを昼までに片付けろ。リーファはユリーシャの手伝いをしてやってくれ。」
俺がそう言うと、
「うう、はい。解りました。」
ユリーシャはしゅんとしてそう言った。
「えーなんで僕が手伝わなきゃいけないの。」
リーファは不満そうにそう言う。
「下着なんかもあるんだから、男の俺やサイファが手伝える訳が無いだろう。だから必然的に手伝えるのはリーファしかいないんだよ。俺とサイファで荷車に積む物の選別をするから頼むな。」
俺がそう言うと、
「うー解ったよ。」
リーファは渋々承諾した。
そして俺とサイファは荷車に積む物を選別し始めた。
まずは食料、生肉や果実、野菜は凍らせて木箱にいれ保存する。他には干し肉や小麦、紅茶の茶葉なんかも積む更に調味料や香辛料も忘れずに積み込む。
次にお金や宝石などの貴金属や食器を積み込み終了。
此方が終わったのでユリーシャ達の様子を見に行く事にした。
「ユリーシャ、終わったか。」
そう聞くと、
「うう、まだです。」
ユリーシャはうなだられながらそう言った。
「リーファ、後どれぐらい掛かりそうだ。」
俺がそう聞くと、
「今日中に終わりそうもないよ。」
リーファはげんなりとした感じでそう答えた。
「はあ、しょうがない俺も手伝うか。」
俺はそう言い、馬車に乗り込む。
「え、え、え、キョウヤさん。余り見ないで欲しいです。」
ユリーシャが戸惑いながらそう言う。
俺はユリーシャの言葉を無視して片付けに入る。
まず、着た服と、着ていない服を分け、着た服を籠に移す。
次に綺麗な服を種類別に分けて皺に成らないようにきちんとたたみ箪笥にしまう。
俺は二人にそう指示を出し片付けをした。
「終わりました。」
ユリーシャが嬉しそうにそう言う。
「やっと終わった~。」
リーファが感慨深そうにそう言う。
「お疲れさん。もう昼だし食事にしよう。」
俺がそう言うと、
「お腹空きました。」
「お腹へったよ。」
ユリーシャとリーファは同時にそう言って笑っている。
「キョウヤお昼は何作るの。」
リーファがそう聞いてきた。
「そうだな、余った食材がけっこう有るから豪勢にいこうかな。」
俺は馬車から出ながらそう言うと、
「僕も手伝うね。」
リーファがそう言う。
「ありがとうなリーファ。」
俺はそう言い、リーファに笑顔を向ける。
リーファは顔を赤くしそっぽを向く。
「よかったですねユリーシャさんが見ていなくて。」
サイファがそう言う。
「ひゃ、兄さん何言うのよ。」
リーファが驚きそう言う。
「ははは、さてキョウヤさんとユリーシャさんは行ってしまいましたよ。」
サイファが笑いながらそう言う。
リーファは慌てて俺を追いかけてきた。
「僕は又野菜を洗ったり、切ればいいのかな。」
リーファがそう聞いてきた。
「ああ、それで頼む。」
俺がそう言うと、
「私も手伝いたいのですが何か出来ることはありませんか。」
ユリーシャもそう聞いてきた。
「そうだな、リーファの手伝いをしてくれないか。」
俺がそう言うと、
「あ、はい。解りました。」
ユリーシャがそう返事をする。
俺はフライパンに油を引き、フライパンを温める。
フライパンを温めている間に肉に塩、胡椒で下味を付け温まったフライパンで肉を焼く。
肉を焼いている間に鍋を取り出し水を入れ火にくべる。
リーファからジャガイモ、人参、玉葱などの野菜類を受け取りそれを鍋に放り込む。
肉にある程度火が通ったからフライパンからまな板に移し、一口ぐらいの大きさに切る。
野菜を煮込んでいる間に小麦粉を炒め、其処に塩、胡椒、ガラムマサラ、シナモンなどの香辛料を加え更に炒め、狐色になってきた所で鍋に移すし、肉を鍋に入れじっくり煮込む時間が無いので、術式を用い空気圧を変化させ、圧力鍋の様にし煮込み時間を短縮した。
後はナンを焼きたかったがその時間が無いため諦めて、普通のパンですました。
「さて、後は皿に移してしまいだ。」
俺がそう言うと、
「なにか、随分変わったシチュウですね。」
「此れはカレーという料理だ。」
俺がそう言うと、
「どんな味なのか想像出来ないんだけど。」
リーファがそう言う。
「ああ、初めて食べると思ったから辛さは抑えてある。」
俺がそう言うと、
「此ればっかりは食べてみない事には解りませんね。」
いつの間にか此方にきていた、サイファがそう言う。
「まあ、そう言うわけで、とりあえず食べよう。」
俺がそう言い、皿と鍋を運ぶ。
そして漸く昼食が始った。
「あ、辛いけど美味しい。」
リーファは恐る恐る一口食べ、そう言った。
「ほんとですかでは私も戴きましょう。」
サイファはそう言って、食べ始めた。
「はう、熱いです。でも美味しいですね。」
ユリーシャはそう言い、嬉しそうに食べる。
「気に入ってくれたみたいで良かった。」
俺がそう言うと、
「はい、とても気に入りました。」
ユリーシャが笑顔でそう言う。
鍋いっぱいに作ったカレーは見事に皆の胃袋の中に消えてしまいましたとさ。
っと俺は何を言ってるんだ。
ちょっと作りすぎたかななんて思っていたんだがまさか綺麗に食べつくされるとは思はなかったんだ。
まあいいや。
「少し休憩したら出発したいんだが構わないか。」
俺がそう聞くと、
「はい構いせん。」
ユリーシャがそう答える。
「サイファとリーファには、食材なんかを積んだ方の馬車に乗って欲しいんだけど。」
俺がそう言うと、
「別に構いませんが、何か理由があるのですか。」
サイファがそう言う。
「ああ、もし道中で魔物なんかに出くわした場合に馬車を守る必要があるから其方の馬車にも人を乗せといた方がいいと思ってな。」
俺がそう言うと、
「なるほど、そうですね、魔物が襲撃してくる可能性もあったのですね。すっかり忘れていました。」
サイファがそう言う。
しばらく休憩して、いよいよ出発することにした。
俺は馬車の業者台に乗り、
「俺は道を知らないからユリーシャに案内を頼みたいから俺の隣に座ってくれないか。」
俺がそう言うと、
「はい、そう言う事なら喜んで。」
ユリーシャは嬉しそうに俺の隣に座る。
紫苑が俺の膝の上に座り身を丸める。
サイファ達も馬車に乗り込んだのを確認し出発する。
「まずは何処から出るんだ。」
俺がそう聞くと、
「えっと、此の侭真っ直ぐ進んでください。そうすると正門があった場所にでますので其処から出て街道沿いに南下して下さい。」
ユリーシャがそう言うと、
「ふむ、解ったぞい。」
馬がそう言う。
「なあ、そういえばお前には名前はあるのか。」
俺がそう聞くと、
「わしの名か、わしはシェロと呼ばれておる。」
馬もといシェロはそう答えた。
「だったらこれからはお前の事はシェロと呼ばせてもらうな。」
俺がそう言うと、
「構わんぞい。」
シェロがそう言う。
「あのキョウヤさんはシオンさんと何時ごろから一緒にいるんですか。」
ユリーシャがそう聞いてきた。
「紫苑とは俺が五歳のときに知り合ってそれからずっと一緒にいる。」
俺がそう言うと、
「十年以上も一緒にいるんですか。それよりもシオンさんていったい何歳なのですか。」
ユリーシャはそう言う。
「さあ、俺も紫苑の正確な年齢は知らないな。少なくとも二百年は生きているぞ。」
俺がそう言うと、
「としはないしょ。」
紫苑がそう言う。
「だそうだ。」
俺がそう言うと、
「知りたかったのですが残念です。」
ユリーシャがそう言う。
そうして俺達は他愛も無い話をしながら道中を進み漸く宿場町が見えてきた。
「もう着きますね。」
ユリーシャがそう言う。
「ああ、そうだな、やはり人の姿は殆ど見かけないな。」
俺がそう言うと、
「仕方が無いですよ、今の情勢では危なくて外になんか出れませんから。でも街の中はそうではないと思いたいですね。」
ユリーシャがそう言う。
「そうだな、シェロ、そろそろ街だから速度を落としてくれないか。」
俺がそう言うと、
「解ったぞい。」
シェロがそう答え、速度を落とす。
街に入り、宿へ向かおうとしていると、街の中ほどから痴話喧嘩のような喧騒が聞こえてきた。
「この馬鹿猫はなにをやってるんだー。」
そう言う男の怒鳴り声が聞こえる。
「ウニャァ~、馬鹿猫って言うニャー。」
女の声がそう言う。
俺達がそこに来て見たものは、
体長六十㎝程の妖精族の男と猫の獣人族の女が痴話喧嘩をしていた。
投稿が随分遅れてしまい申し訳御座いません。
仕事が忙しくなってきて書いている時間があまり取れなくなってしまいました。
仕事が落ち着くまでは二週間に一度ぐらいのペースでの投稿になってしまいそうです。
本当に申し訳御座いません。