間話 悪魔との対談
間話 悪魔との対話
此処はクリシュナ大神殿より遥か北にある城。
この城は険しい山々に囲まれ一年中雪に閉ざされた地に存在する。
そうこの城は魔王の居城である。
<SIDE:フローラ>
私が目覚めた場所は何時もの自室ではなく知らない部屋でした。
私は寝かされている。ベットから身を起こすと、
「目が覚めたようだな。」
私に誰かがそう話しかけてきました。
私はその者を見て咄嗟に神聖魔法の詠唱に入りました。
「エデンよその力を我に貸し与えたまえ。」
私は術を放とうとしたところで、
「止めておけ、その程度の力で最上級悪魔である私を傷つけることはできぬ。」
悪魔はそう言い、私を睨みました。
私は睨まれただけで恐怖に支配され全く動けなくなり、エデンの力も霧散してしまいました。
「ふむ、すまぬな。私は他の世界では恐怖公とも呼ばれる者なのでな、そのせいで視線を合わせるだけでそのようにしてしまう。」
悪魔はそう言い、視線を私から外しました。それだけで私を縛っていた恐怖が嘘のように消えました。
「此処は何処なのですか。」
私は呼吸を落ち着けて、悪魔にそう聞きました。
「此処はパンゲア(エデンに在る大陸の名称)の最北にある魔王の居城だ。」
悪魔はそう答えました。
「私を此処に攫って来た目的は何なのですか。」
私は更にそう聞くと、
「それは知らぬ、私はただお前の面倒を見るようにと魔王に頼まれただけだからな。」
悪魔はそう答えました。
「貴方は魔王の配下の者なのですか。」
私はこの方の魔王に対する言動に疑問を持ちそう聞いてみました。
「なぜそのような事を聞く。」
悪魔は興味深そうに聞き返してきました。
「貴方は魔王に頼まれたと仰いました。魔王の配下のものなら命じられたと仰るとおもったからです。」
私がそう言うと、
「私は魔王の配下ではない傍観者だ。魔王の目的に興味があるからこの城にいる。それに私はお前がこの先どの様な行動に出るのかも興味があるから魔王の頼みを聞いたに過ぎん。」
悪魔はそう言いました。
「魔王の目的とは何なのですか。この世界の滅亡ですか。」
私はそう聞くと、
「魔王の最終目的は別にあるが、ある物を手に入れる事がこの世界での目的だ。その目的の物を手に入れる過程でこの世界は滅びるだろう。」
悪魔は淡々とそう言いました。
「魔王が世界を滅ぼしてまで手に入れたい物とは何なのですか。」
私は声を荒げてそう聞きました。
「それはお前達が神聖魔法で使っているエデンの力いやこの世界の力そのものだ。」
悪魔がそう答えました。
「その様な物いくら魔王とはいえ扱いきれるものではありません。」
私がそう言うと、
「ああ、だから二本のとある樹の枝が必要なのだ。」
悪魔はそう言いました。
「その二本の樹の枝とは。」
私がそう聞くと、
「ヤハウェが人を創造したした後に置いた二本の樹、命の樹と善悪の知識の樹その二本の樹の枝を用い、この世界の力を扱う。」
悪魔はそう答え更に、
「お前の国に命の樹の枝が有ったはずだが、マモンの奴が見つけられずに戻ってきたな。」
悪魔はそう言いました。
「なぜ私の国にその枝が有ると解ったのですか。」
私はそう聞きました。
「ゴモリーがそう魔王に教えたからだ。ゴモリーは隠された宝の有りかを知る能力を持つ者だ。」
悪魔はそう答えました。
「私の国はどうなったのですか。」
私は更にそう聞きました。
「樹の枝を見つけられなかった腹いせに国を滅ぼした。」
悪魔がそう答えました。
「そんな。私は守れなかったのですね。」
私がそう言うと、
「気に病む事はあるまい、この世界の者が最上級悪魔に勝てるわけが無いのだからな。」
悪魔がそう言いました。
「最上級悪魔には勝てないとはどういう事なのですか。」
私はそう聞き返しまし。
「エデンの力を借り受ける魔法でさえ最上級悪魔の闇の衣を超えることなどできぬからだ。」
悪魔がそう答えました。
「闇の衣ですか。」
私は城を襲った悪魔に神聖魔法を放った時の事を思い出しました。
私の放った魔法は悪魔の身に纏った闇に相殺されてしまいました。
「私の国を襲ったもう一柱の悪魔はどうしたんですか。」
私はそう聞くと、
「奴なら死んだぞ。魔王が言うにはエンシェントエルフの者に殺されたのではないかと言っていたな。」
悪魔がそう答えました。
「殺された。先ほどこの世界の者は最上級悪魔は殺せないと仰ったのにそのエンシェントエルフなら貴方も殺せるのですか。」
私はそう聞きました。
「エンシェントエルフだけなら私は殺せない、だが魔王のいう武器を実際持っているのならば私も殺せよう。」
悪魔がそう答えました。
私は悪魔を殺せる武器があることに驚きました。
「その武器とは何なのですか。」
私は少し興奮しながら聞きました。
「その武器は<罪焼き尽くす断罪の焔剣。>とい名の剣だ。もっともその剣は原罪を持たぬエンシェントエルフしか扱えぬがな。」
悪魔がそう言いました。
「ではその剣を振るう者は私達、人の希望という事ですね。」
私はこの世界が助かるかも知れないという希望を持つことが出来ると思ったのですが、
「残念ながら、その使用者はもう死んでいる可能性が高い。いくら原罪が無いとはいえ、数千年、数万年を生きて一つの罪も犯さ無い者などおらぬよ。その剣ははいかなる罪も見逃さずに焼く使用者とて例外なくな。」
悪魔がそう言いました。
「そんな、この世界が助かるかも知れないと思ったばかりですのに。」
私はそう言い、涙を流しました。
「ふむ、お前は一つ勘違いをしているようだから言っておくぞ。この世界が滅びる事は、ヤハウェの計画どうりだぞ。」
悪魔はそう言いました。
「神がこの世界を滅ぼすような計画を立てたとはどういうことですか。」
私は声を荒げそう言いました。
「考えてもみよ、まず最初に人を造った後になぜ食べてはいけない樹の実を造った。その様な物を造ら無ければエデンで人は永遠に生きられたものを。次に<罪焼き尽くす断罪の焔剣>だがこれもヤハウェの使徒を派遣して振るえば私達悪魔を皆殺しにするのは容易い事だ。だがヤハウェはそれをしない。更に命の樹と善悪の知識の樹を枯らせたわりになぜ一本づつ枝を残したと思う。魔王にこの世界の力を取らせるためだ。そう魔王もヤハウェの計画どうりに動いているに過ぎないのだからな。」
悪魔がとても信じられない事を言いました。
「ま、魔王はそれを知っているのですか。」
私はそう聞きました。
「ああ、知っているぞ。それゆえに益々ヤハウェに対する怒りや恨みを増大させる結果になったがな。」
悪魔はそう言いました。
「魔王の最終目的とは何なのですか、。」
私はそう聞きました。
「自身の創造主であるヤハウェを殺すことだ。」
悪魔がそう答えました。
「魔王の正体は何なのですか。なぜ魔王は神を殺そうとするのですか。」
私は今までで一番大きな声を上げそう聞きました。
「それは私が答えるべき事ではない。それは魔王自身に問うと良い。」
悪魔はそう言いました。
「では魔王に合わせて下さい。」
わたしはそう言いました。
「今はまだその時ではない。その時になれば魔王自ら此処に出向いて来るだろう。」
悪魔がそう言いました。
「その時とは何時のことなのですか。」
私は捲くし立てる様にそう言いました。
「この世界の力を手にする準備が整ったときだ。それまでは私がお前の面倒を見てやるしお前の疑問にも答えられる範囲で答えてやろう。」
悪魔はそういいました。
「でしたら、貴方の名を教えてください。それと私はフローラル・L・エルドライドという名があるのです。」
私はそう言いました。
「ふむ、解った、これからはフローラと呼ばせてもらおう。それと私の名は大公アシュタロトだ。」
悪魔いえアシュタロトはそう言いました。
「アシュタロトですか、アシュと呼んで構いませんか。」
私がそう言うと、
「ふははははは・・・・。私にその様な渾名を付けるものが居ようとは笑わせてくれる。笑わせてくれた礼だ、よい私をそう呼ぶことを許可しよう。」
アシュは笑い出し、そう言いました。
「そろそろ食事の時間だフローラの分も用意させよう。私と共に食べるか。」
アシュがそう聞いてきました。
「それは私が普通に食べられる物なのですか。」
私がそう聞くと、
「安心するが良い、私ら悪魔も食べるものは人と大して変わらんよ。」
アシュがそう言いました。
「では私もご一緒させていただきますわ。」
私はそう言い、アシュと共にこの部屋を出ました。
作者の桔梗です。
今回の話は魔王の目的が解ったと思います。
次回は六話ですが今週中に書きあがるかわかりません。
出来るだけ早く投稿できるようにがんばります。