第5話 横文字名前は三文字までで
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「こちらが今回の依頼人の方です」
リリィに紹介された男は、爽やかな笑顔とともに一歩前へ進み出た。
サラサラと流れる金色の髪に、吸い込まれそうな碧眼。
微笑むだけで背景にバラの花が咲き乱れそうな、正統派の王子様ルックだ。
(……うわ、眩しっ)
中身が男であるノアにとって、目の前のキラキラしたイケメンは「目の保養」どころか、ただただ視覚への暴力でしかない。
男はそんなノアの内心など知る由もなく、優雅にスッと手を差し出してきた。
「よろしく」
その瞬間、脳裏を走馬灯が駆け巡った。
はっきりとは覚えていないが、かつて読み漁った『ライトノベル』の記憶だ。
その知識が、目の前の状況を高速で解析する。
整いすぎた顔立ち。シミ一つなく、冒険者特有の生活感や泥臭さが完全に欠落している。
冒険者にしては、手入れが行き届きすぎているサロン帰りのようなサラサラヘア。
装備している剣の柄に見える、やたらと高そうな装飾。
そして何より、物語が動くこのタイミングを見計らったかのような登場。
――間違いない、こいつは『貴族』だ!
面倒事の匂いだ。
ノアの魂が、けたたましく警鐘を鳴らした。
イケメンは、その整った笑顔を崩さず、改めて手を差し出しながら名乗った。
「私は、アルフォンス・フェンブレイズ」
「よろしく、ノア君」
……
……
……
「ごめん、覚えられない。」
前世は生粋の日本人。横文字の名前なんて、三文字を超えたらもう雑音だ。
フェン……なんだって? フェンダーベース?
無理だ。脳のメモリが拒否してる。
そんな貴族(疑惑)の依頼は、なんとも拍子抜けするものだった。
「僕と一緒に、森の浅いところで戦ってほしいんだ」
「……はい?」
ノアの動きが、ぴたりと止まる。
今、なんと?
「森の、浅いところ?」
「そうだ。王都からすぐの、街道沿いの森だね」
その瞬間、ノアの脳内で危険信号がけたたましく鳴り響いた。
森の浅いところ。
そこに出る魔物といえば、せいぜいスライムか、弱いゴブリン程度。
冒険者になりたての初心者が、棒切れを振り回しながら薬草を摘むような場所だ。
ノアは改めて、目の前の男をじろじろと観察する。
腰に差した剣。
鞘には精緻な彫刻が施され、柄には高そうな宝石まで埋め込まれている。
どう見ても実用性より芸術性重視――儀礼用の一品だ。
鎧も同様だった。
銀色に輝くプレートメイルは、傷ひとつなくピカピカ。
インナーの布地に至っては、どう見ても上質なシルクである。
(……おかしい)
こんな全身レア装備で固めた人間が、なぜスライム相手に?
嫌な汗が、背中をつうっと伝った。
「その装備で、浅い森ですか?
もっとこう……ドラゴンの巣とか行けるんじゃ?」
探りを入れると、貴族(確信)は少し困ったように頬をかいた。
「いやあ、実は実戦経験が乏しくてね。
まずは安全なところで腕を磨きたいんだよ」
ノアは、心の中で絶叫した。
――これだ。一番面倒くさいやつだ。
『装備は一流、中身は素人』の金持ち案件。
何が怖いって、もしこの温室育ちのイケメンに万が一のことがあった場合。
擦り傷ひとつでも作ろうものなら、
親だか執事だかが飛んできて、護衛役の首が物理的に飛ぶ未来しか見えない。
「私、思い出しました。
今日、サキュバスの集会があるんでした」
ノアは急に真顔になる。
「重要な会議でして。
『いかにして楽に男を落とすか』という議題で発表があるので、帰ります」
回れ右をして、出口へ向かおうとした――その瞬間。
首輪を、がしっと掴まれた。
「どこへ行く、ノア」
ギルドマスターだ。
鬼の形相で、上から見下ろしている。
「ま、マスター! 考えてもみてください!
こんな高貴なオーラを纏った方の護衛なんて、私には荷が重すぎます!」
必死に訴える。
「もしこのイケメンの顔に傷がついたらどうするんですか!
国家問題ですよ!?」
「だからこそ、お前なんだ」
「はい?」
「お前なら、万が一のことがあっても――まあ……
魔族だから、ということで諦めがつく」
「私の命の軽さァァァァァ!!!」
ノアの悲痛な叫びは、当然のように無視された。
貴族(確定)は、その一連のやり取りすら楽しそうに眺めながら、爽やかに言う。
「ははは、賑やかな人だね。気に入ったよ。
じゃあ行こうか、ノア君。報酬は弾むよ?」
――逃げられない未来が、確定した。
「……わかりました」
力なく頷いたノアは、ぼそりと呟く。
「じゃあ行きましょうか。アルミフェンスさん」
AI共作
(作者)/原作・デザイン・ストーリー
・プロット・初稿・推敲作業
(AI) /校正・矛盾チェック・雰囲気調整




