閑話 お米様救出作戦
あの日、アールライスさんに連れられた先で出会ったのは、確かに「お米」だった。
だが、それはミルクと砂糖でデロデロに煮込まれ、高貴な甘みに染まりきった
「ライスプディング」という名の、お米様の成れの果て。
(……いや、絶望するにはまだ早い!)
私はギルドの隅で、ふんすと鼻息を荒くした。
ライスプディングが存在するということは、この王都に原料である「お米」が流通しているという動かぬ証拠だ。
流通しているなら、手に入る。
手に入るなら、炊ける。
「ねえ、マスター!
ギルドの食堂で、あの白い粒々の穀物……お米、仕入れられませんか!?」
カウンター越しに詰め寄ると、マスターは面倒そうに鼻を鳴らした。
「あぁ?
あの貴族のデザートか。あんな甘っちょろいもん、腹を空かせた冒険者が食うかよ。却下だ」
「甘くしなければいいんです!
水で炊いて塩で……!」
「余計なことすんな」
一蹴された。
どうやら脳筋マスターには、白米の輝きなど理解できないらしい。
ならばと、事務処理中のリリィさんに泣きつく。
「リリィさぁん、お米!
お米様を救いたいんです!」
リリィさんは眼鏡の奥の瞳を冷たく光らせ、すっと一枚の請求書を差し出してきた。
「お米、ですか?
確かに東方からの輸入品ですから、貴族御用達の高級食材ですね。
仕入れるのは可能ですが、お値段もそれなりになります。……ところでノア」
彼女は淡々と続ける。
「あなたが今月割ったお皿十三枚、グラス九個、
そして床にダイブさせた『フォアグラのムニエル』他つまみ食いの損金ですが」
「……あ、急用思い出したんで失礼します」
私は音速でその場を離脱した。
金か。
結局、この世界も世の中「金」なのか……。
絶望に打ちひしがれそうになった、その時。
脳内に一筋の光明が差した。
(……はっ!
忘れてた、私には『最強のパトロン』がいるじゃないか!)
アールライスさん。
彼は貴族の四男だ。
実家を飛び出したとはいえ、つい最近までの伝手や知識はあるはず。
彼に頼み込んで、私のおやつ代を
「未調理の米」に変換してもらえばいいのだ!
「今日はサボってる場合じゃない!」
私はアールライスさんがいつもギルドに顔を出す時間より、
一時間も早くロビーに陣取った。
(……魅了の効果は継続しているはず。
だけど、今回は『重要案件』。
念には念を入れて、魅了の上書き(アップデート)が必要だ!)
やがて、ギルドの重い扉が開き、
依頼を終えたアールライスさんが姿を現す。
(来た……!
ターゲット確認。セットアップ、完了!)
私は小走りで彼に駆け寄ると、
計算され尽くした「待ちわびたヒロイン」の体勢に入った。
ぶかぶかの袖をギュッと握り、
潤ませた瞳を最大限に活用する。
「くらえ……!
必殺、上目遣い・全力全開!!」
「…………っ」
アールライスさんの動きが止まった。
その碧眼が、下から見上げる私の視線とぶつかり、
彼は何かに打たれたように固まった。
(……よし、入った!
完璧に入った!
これで『お米買って♡』って言えば、
彼は喜んで穀物問屋に走るはず!)
――だがその時。
アルフォンス(アールライス)の脳内は、ノアの予想とは全く別の次元で感動に包まれていた。
(……ああ、ノア君……!)
彼の目には、
主人の帰りを一秒でも早く待ちわび、
扉が開いた瞬間に尻尾をちぎれんばかりに振って駆け寄ってきた
「忠実な愛犬」の姿が重なっていた。
(僕がいない間、そんなに寂しかったのかい?
健気だ……。
なんて愛くるしいんだ。
よしよし、そんなに見つめられたら、
何でもしてあげたくなってしまうじゃないか)
アルフォンス(アールライス)は、とろけそうなほど優しい手つきで
ノアの頭を撫で回した。
「待たせてごめんね、ノア君。
……今日は何が欲しいんだい?
何でも言ってごらん」
「(……チョロい!)
あのね、あるっち。
実は……『お米』が欲しいの。
煮込んでない、生のお米!」
「お米?
昨日のスイーツがそんなに気に入ったのかい?」
こうして、ノアの「お米様救出作戦」は、
一方的な勘違いと飼い主(?)の慈悲によって、
お米様の成れの果てを見続けることになった。
AI共作
(作者)/原作・デザイン・ストーリー
・プロット・初稿・推敲作業
(AI) /校正・矛盾チェック・雰囲気調整




