第16話 必殺技審査の結果
私はギルドの掲示板の横に貼り出された「公式文書」を前に、膝から崩れ落ちていた。
そこには、ギルドマスターとリリィさんの厳正なる(偏った)審査の結果が記されていた。
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【ノア専用・スキル使用認可リスト】
・投げキッス:認可
(備考:実害ゼロ。精神的ダメージも軽微なため)
・ウインク:認可
(備考:顔面痙攣に見えるため、敵を油断させる効果はあり)
・萌え袖:認可
(備考:装備の損傷がない範囲であれば許可する)
・上目遣い:認可
(備考:背が低いため、不可抗力とみなす)
・チラリズム・オブ・ザ・チェスト(※当社比):条件付き認可
(※注:未成年には絶対不可。教育上よろしくないため。
また、露出面積が誤差の範囲である場合に限る)
・究極上目遣い・改:再提出
(理由:備考欄に「おやつを貢がせる」という私利私欲が書かれていたため。
サキュバスの搾取は経理的に認められません)
・純白の閃光 (アンダー・パンティ・フラッシュ):断固不認可
(理由:論外。
ギルドの風紀を乱し、公然わいせつ罪に抵触する恐れあり。
再申請した場合は即刻お仕置き部屋へ)
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「……なんで!
なんで私の『純白の閃光』だけが落選なのよ!!」
私は叫んだ。
このリストは不当だ。
『チラリズム・オブ・ザ・チェスト(※当社比)』が未成年不可で認可されたなら、
パンツだって似たようなものでしょうが!
「リリィさん!
審査基準が不透明です!
『純白』って言葉のどこに不健全な要素があるんですか!?」
カウンターに身を乗り出して詰め寄る私に、リリィさんは冷たい視線を向け、事務的に返した。
「言葉の響きではなく、フリガナがアウトだと言っているんです。
『アンダー・パンティ』のどこに純粋な白の要素があるんですか。
それはただの変態の咆哮です」
「咆哮じゃないわよ、必殺技よ!
敵を一時的に行動不能にするデバフよ!」
「はいはい。
あとマスターから伝言です。
もし実戦で『純白の閃光』を無許可で発動したら、
首輪に電流を流す機能を追加する、とのことです」
「拷問ギルドだここぉぉぉ!!」
私は床を叩いて悔しがった。
せっかく鏡の前で、
一番パンツが綺麗に、かつ神々しく見える「めくれ角度」を
一度単位で調整したというのに。
私の血の滲むような(無駄な)努力が、
一枚の書類で葬り去られてしまった。
だが、私は諦めない。
申請が通った技……
特に『チラリズム・オブ・ザ・チェスト(※当社比)』。
これがある。
(フフフ……
未成年さえ避ければ、合法的に私の魅力を(物理的に)解禁できるということ。
それに『純白の閃光』だって、名前を変えて
『不意の強風による事故』として申請すれば、あるいは……!)
懲りない私の脳内では、
すでに次なる「偽装申請書」のドラフト作成が始まっていた。
「……ノア。
悪いことは考えていないでしょうね?」
リリィさんのメガネが鋭く光る。
私は音速で目を逸らし、
申請が通った『ウインク』を精一杯繰り出した。
(バチッ!)
「……目がゴミでも入ったんですか?
手を貸しましょうか」
「ウインクですぅ!!
認可された必殺技の練習中なんですぅ!!」
私の戦いは、
まだ始まったばかりである。




