第14話 サキュバスの暴走【自主規制版】
「最小の労力で最大の成果を」――。
前世で社畜として魂を削っていた私が行き着いた、究極のライフハックである。
私は意気揚々と依頼掲示板へ向かっていた。
掲示板の前に立って、「やってる感」だけ出せる難易度Gランク(雑草抜きとか)の依頼を、いかに「命懸けの死闘」だったかのようにマスターに報告するか。
その脳内改ざん作業に余念がなかった、その時だ。
「お前はクビだ!
二度とツラを見せるな!」
ギルドの喧騒を突き破る、心ない怒号。
見れば、一組の冒険者パーティが、掲示板の影で揉めていた。
見たことのない顔ぶれだ。流れのパーティだろうか。
罵声を浴びせられているのは、まだ十二、三歳といったところだろうか。
背も低く、声変わりもまだ終わっていないような、あどけない少年だった。
「え、そんな……。
僕だって、一生懸命……」
震える声で訴える少年。
だが、リーダー格の男は鼻で笑って彼を突き飛ばした。
その光景を見た瞬間、私のちっぽけな脳容量(サボり成分8割)が、かつてないほどの回転数でフル稼働を始めた。
前世で読み漁った、数多のライトノベルの記憶。
その膨大なデータベースから、目の前の状況に合致するタグを高速で抽出していく。
(……待てよ。この展開、どこかで……)
『無能と言われてパーティ追放』
『実は隠れたチート能力持ち』
『後に伝説の英雄へ』
(これだ……!
**【追放系】**だ!
**【ざまぁ属性】**だ!!)
間違いない。
この少年は、将来的に株価が大暴騰する超優良物件だ。
今はボロ雑巾のように扱われていても、数巻後……じゃなくて数ヶ月後には、富と名声を掴み取っているはずの「勝ち組」予備軍である。
そこで私は、さらなる衝撃的な事実に気がついた。
(……ハッ!
そういえば、アルなんたらクリームさん……あるっちも、子爵家の四男で実質追放されたようなもんだった。
あいつも勝ち組のパターンじゃないか!)
点と点が線でつながった。
この世界、追放された奴についていけば、働かなくても安泰なんじゃないか!?
「この機を逃してなるものか……!」
私はすかさず、捨てられた子犬のように肩を落とす少年のもとへ駆け寄った。
ターゲット(勝ち馬)を確保するため、私は前世で培った「営業用スマイル」……もとい、「慈愛に満ちたお姉さん」の表情を顔面に張り付ける。
「どうしたの? 少年。
よかったらお姉さんに話してごらん?」
だが、少年は私を見るなり、弾かれたように身を引いた。
その瞳には警戒心が剥き出しになっている。
……まあ、そうだろう。
銀髪、褐色肌、背中には蝙蝠の羽。
どこからどう見ても怪しい魔族の女が、ニチャァとした笑みで近づいてきたのだ。
不審者情報の通報案件(事案)一歩手前である。
(くっ、懐かない……!
だが、ここでこの「金の卵」を逃す手はない。
私はサキュバスだぞ!
魅了してでも私のパトロンになってもらわねば!)
私は意を決して、構えた。
ここでの失敗は、未来のニート生活の崩壊を意味する。
プライドも、サキュバスとしての(薄っぺらな)設定も、すべてを投げ打つ覚悟を決めた。
鏡の前で特訓した、
自らのキャラ設定すら危くなる禁断の奥義。
破壊力不足を逆手に取った、捨て身の最終兵器――。
「くらえ!
超奥義…………!」
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――――【自主規制】――――――
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「必殺!
タッチ・ザ・チェスト(※ほぼ絶壁)!!」
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――――【自主規制】――――――
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全方位から石を投げられそうな暴挙に出た、その瞬間。
ガシッ!!
私の首輪に、鋼鉄のような感触が食い込んだ。
凄まじい力で、私の体は宙に浮き、
そのまま後方へと引きずられていく。
「…………あれ?
どうしたんですか、マスター?」
首を吊られた状態で振り返ると、そこには般若のような形相で私を見下ろすギルドマスターの姿があった。
ズルズルズル…………。
床を擦る虚しい音だけが、静まり返ったギルドに響く。
「……理由は、わかるな?」
マスターの地獄の底から響くような低い声に、
私は冷や汗をダラダラと流しながら、精一杯の愛想笑いを浮かべた。
「あ、はい……」
客観的に見て、成人女性(魔族)が年端もいかない少年にわいせつな行為を働こうとした、
弁解の余地なき「事案」であった。
AI共作
(作者)/原作・デザイン・ストーリー
・プロット・初稿・推敲作業
(AI) /校正・矛盾チェック・雰囲気調整




