タイトル未定2025/11/24 08:24
瞳と別れたボクは、さやかと一緒に暮らしているアパートに帰った。
部屋の中は、真っ暗だった。
ボクはあかりもつけず真っ暗な寝室で、母親の形見の指輪を手にしていた。
大学時代barでバイトをするようになってから、指輪をはめなくなった。
そうなると、指輪の存在すら忘れていた。
今日偶然瞳と出会い、指輪を思い出した。
ボクは、ゆっくり指輪をはめた。
やっと、瞳に会えた!それは思い描いていた再会ではないけど、瞳と会うことができてボクは嬉しかった。
でも……。
「七海……いるの?」
突然背後から、仕事から帰ってきたさやかの声が聞こえ、それと同時にボクの思考が途切れた。
「なんで、電気をつけないの!」
さやかの声と共に、寝室の中が明るくなった。
「お帰り」
「ただいま。あ~疲れた!」
「働き過ぎだぞ。たまには、休みをとれよ」
「まだ研修医だから、そんな勝手なことできないよ」
「こんな小さな体で……頑張りすぎ」
ボクは言いながら、さやかを抱きしめた。
「張り切る気持ちはわかるけど、倒れるんじゃないかって、心配だよ」
「ありがとう。でも、大丈夫!あれっ?」
言いながらさやかは僕から離れ、ボクの左の手首を掴んだ。
「指輪……」
「ああ。母親の形見なんだ」
「形見?」
「母親はボクが赤ん坊の頃、強盗に襲われて、亡くなったんだ」
さやかは目を見開いて、じっとボクをみつめていた。
包みこむようにボクを抱きしめ、ささやくように言った。
「それで、部屋を真っ暗にしていたのね」
「まぁ……ね」
「どうして、指輪をはめたの?何かあった?」
「何も……何もないよ」
言いながらボクは、さやかを強く抱きしめた。
さやかを抱きしめながら、瞳と再会したボクは、瞳をどうするんだろう?どうしたいんだろう?と、自問自答を繰り返していた。
翌日ボクとさやかは、路線バスに乗って、それぞれの勤務先へ向った。
ボクの隣に座っていたさやかが、ボクの左手に、自分の手を絡めながら言った。
「指輪を、はめるようにしたんだ」
「前にもはめていたんだけど、指輪を見つけたら、なんとなくまたはめたくなった」
「そう。ねぇ、隠し事とかなしだよ。なんでも私に言ってね」
「わかってるよ」
「それから、いいわけもなし!」
「隠し事も、いいわけもしないよ。なんでも、さやかに話すよ」
ボクがそう言うとさやかは、ボクの左手を握りしめ、嬉しそうに笑った。




