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DANDY〜もう戻れない〜  作者: kagari
プロローグ
5/18

タイトル未定2025/11/24 03:04

 さやかと医療の道を目指し、充実した日々をボクは過ごしていた。

 しかし家では、ことあるごとに父親と衝突ばかりしていた。

 幼い頃から医者になるように厳しく育てられ、それでいて普段は頑固で無口な父親だった。

 幼い頃のボクは、父親は怖い存在でしかなかった。

 ボクが成長をすると共に、父親との確執は益々広がり、家にいることにボクは苦痛を感じていた。

 講義が終わり、いつものように学食でさやかと待ち合わせをして、さやかと学食でランチを食べながら、講義の内容を言い合った。

 会話が途切れた時、ボクは思い切って切り出した。

「さやか、今住んでいる所を出て、一緒に暮らさないか?」

 ボクの言葉にさやかは、息を飲んでボクをみつめた。

「家を出たいんだ」

 さやかは、ゆっくりとコップの水を飲んだ。

 静かにコップをテーブルの上に置きさやかは言った。

「今のマンションで、良いじゃない」

「広い部屋じゃなくて、良いのか?」

「お金がもったいないよ」

「……バイトするよ。もちろん、勉強も今まで以上にちゃんとやるよ!」

 必死になって言うボクに、さやかはくすくす笑った。

「でもなぁ……バイトかぁ」

 バイト経験がないボクは悩んだ。

 とりあえず、情報誌でも見るか。

 ネットだってあるんだし。

 そう考えていた時だった。

「今夜、七海を連れて行きたい所があるんだけど。良い?」

「良いけど、何処?」

「その時のお楽しみ」

 そう言ったさやかは、悪戯っぽく笑った。

 全ての講義が終わり、ボクとさやかは夜の繁華街を歩いた。

 さやかがボクを連れて行った所は、繁華街にあるbarだった。

 深緑色のドアにはちいさな鐘が付いていて、ドアを開けると心地よい鐘の音が鳴った。

 さやかに導かれるまま、ボクは店の中に入った。

 店はカウンターの他にテーブル席があり、ゆったりしていた。店内はほどよく照明が落とされていて、カウンターの中には背が高い五十代くらいのひげをはやしたマスターが、優しく迎えてくれた。

 さやかとボクは、カウンター席に座った。

 カウンター席に座ると、マスターは笑顔でさやかに言った。

「さやかちゃん、いらっしゃい」

「こんばんは、マスター」

「この店に男性を連れて来たと言うことは、いよいよ身を固める決心がついたのかな?」

 さやかは、笑顔でゆっくりうなずいた。

 ボクとさやかは、カウンター席に座った。

 さやかが、ボクに聞いてきた。

「ここは、ドリンクしかないの。何がいい?」

「任せる」

 さやかは、カクテルをオーダーした。

 カウンターの中でマスターは、カクテルを作り始めた。

 派手なパフォーマンスこそないが、流れるようなカクテルを作る動作に、ボクはすっかり魅了していた。

「お待たせしました」

 マスターの声で、ボクは我にかえった。

 マスターが作ったカクテルは美しく、味も素晴らしかった。

 カクテルを飲み干した時、さやかが言った。

「七海、この店でバイトをしてみない?」

 思いがけないさやかの言葉に、ボクは息を飲んで声が出なかった。

「マスター、バイトをしてくれる人を探していたじゃない。七海も、バイトを探していたの。マスターの店なら安心だし。駄目かな?」

 マスターは、ボクの方を向いた。

「七海君と言うのかな?」

「はい。麻生七海です」

「さやかちゃんのお墨付きなら問題ない。後は、きみ次第だ」

 ボクは少しだけうつむき、顔を上げた。

「よろしくお願いします」

 それから雑談を交えた身の上調査が始まり、具体的な仕事の話になった。

 話が終わるとマスターは、再びカクテルを作り始めた。

 ボクはカウンターの中でカクテルを作るマスターに、視線を送っていた。

 いつかあんな風になりたい。

 バーテンダーと言う、別の新しいもう一つの夢が、ボクの中に芽生えていた。

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