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居残り組のふたり
神田律子は妊婦。
「う!」
深夜になって突然陣痛が始まった。
「あわわ」
オロオロする夫に、
「実家に電話して!」
両親が車で迎えに来てくれて律子は病院に向かったのだが、着いた途端、陣痛が治まってしまった。
「様子を見ましょう」
医師に言われ、夫と二人で残った。
「学校の居残り組みたい」
他に誰もいない待合室で律子は言った。
「昔を思い出すなあ」
ニヤッとして呟く夫。
「誰の事を思い出してるのよ!?」
律子の嫉妬が始まった。