りったんの「二百文字小説」集

沢木先生お題編（神田律子と愉快な仲間達）

どこから手をつけよう。

　律子は妊婦。

　実家に用があり、そのまま泊まった。

「大丈夫だよ」

　夫が電話の向こうでそう言ったのが引っかかり、翌朝急いで帰った。

「うげ」

　キッチンのシンクは汚れた食器と残飯で溢れかえっている。

　トイレは水が飛び散りトイレットペーパーは床に落ちていた。

　浴室はあちこちにボディソープとシャンプーのはねがこびりついていた。

　洗面台には使い捨ての髭剃りが放置されている。

「どこから手をつけよう」

　律子は溜息混じりに呟いた。