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ドンゾコナビ ~滅びの世界で少女導く~  作者: 内村一樹
第4章:切り捨てる者

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第95話 嵐の中へ

 ライラの進化に興奮冷めやらぬうちに、俺たちは南に見える嵐へと出発した。


 選別衆の連中には、この場で待機するよう伝えてある。

 嵐の縁に近づく以上、統制の取れない人数を連れていくのは危険すぎだからな。


「……本当に、置いていって大丈夫なんスか?」

 ベニーが振り返りながら言う。


「ああ。余計な危険は冒す必要ないだろ?」

 風の魔道具を失った選別衆が、嵐の近くで下手に動けるはずがない。


 そうして歩き出した俺たちの背後から、ひとつ声が上がった。


「待て」


 シグだ。


「私も連れていけ」

「……理由は?」とイザベラ。


 シグは少しだけ視線を逸らしてから、簡潔に答えた。


「こんなところで奴らと一緒に待機する気にはなれないからな」


 それ以上、彼女は語らなかった。

 何かを隠しているのは明らかだが、今は深く踏み込む場面でもないか。


「いいんじゃないか」

「まぁ、私たちの邪魔をしないならいいけど」


 イザベラがそう判断し、シグも隊列に加わった。


 ――こうして、俺たちは嵐を目指して歩き始める。


 道中は、色々と試すのにちょうど良い機会だぜ。


 選別衆とのいざこざのせいでイザベラたちに説明できてなかった新たな力。

 その中でも特に、聞き澄ます耳(パーシブ・シェア)が好評だぜ。

 理由は明確、俺とクゥ以外もライラと会話できるようになるんだからな。

 

『みなさん、聞こえますか?』

「聞こえるわ! 元気そうで、本当によかった」

「こうして話してると、東の大陸のことを思い出しちゃうね」

「ライラ殿! 我輩はアレックス、よろしく頼むぞ!」

『こちらこそ、よろしくお願いしますね』

「なんか、ちょっと複雑な気分クェ」


 クゥだけは、ちょっと寂しそうにしてるぜ。

 多分、ライラと会話できるという特別感が無くなったせいだな。


 とはいえ、ライラの楽しそうな様子を見てクゥも満足げだ。


 蔦でできた足を軽やかに動かし、石や鉱石を見つけては拾い上げるライラ。

 その様子は、まるで外に出るのが初めての子供みたいだった。


 別に初めて歩くってワケでもないはずだけどな。

 

「ライラ! そんなに歩くと、足を切っちゃうよ!」

『気を付ければ大丈夫よ! それよりクゥ。ちょっとこれを背中に乗せててもらえる?』

「こんなに集めて、何に使うつもりクェ?」

『あとでルース様に瞳を借りて、どんな石なのか調べるのよ~』


 そんな彼女の行動も、ただ好奇心を満たすためで終わらない。

 道中で拾い集めた鉱石を使えば、装備も整えれるからな。


 アレックスには簡易的な軽装鎧を作り。

 皆の靴には地面の刃を防ぐための補強をする。

 それは同時に、風に煽られないようにする工夫にも繋がったぜ。


 なにしろ、嵐に近づくにつれて風が強くなっていくからな。


 それに、風の性質が明らかに変わった。

 強さだけじゃなく、重さも含まれてきた気がするぜ。


 なぜなら、細かな金属粉が混じってるんだ。


「この辺りからは布で口を覆うっス!」


 風の魔道具を使い、進路の風を弱めながら進む。

 それでも、肌が削られるような感覚は消えない。


 そうやって進むこと三日目。

 ついに、俺たちはそれを目の前にした。


 大地を呑み込み、空まで削る巨大な嵐。


「……準備は良いっスか? 入るっスよ!」

 ベニーの声掛けに頷いた俺たちは、互いに寄り集まる。

 こうすれば、風の魔道具で作る安全圏を狭めることができるって話だ。


『アレックス、頼む』

「ああ」


 風で飛ばされやすい俺は、彼と欠乏と結合(ユニオン・ラック)する。

 ライラはツタをクゥに巻き付け、互いを固定する。


 そして、俺たちは嵐の中へと足を踏み入れたんだ。


 ――音が、世界を満たした。


 大地が削られ、砕かれ、引き裂かれる音。

 巻き上げられた金属粉同士が擦れてるのか、軋む音も聞こえてくるぜ。


 耳が壊れそうなほどの轟音の中。

 それでも、俺たちにはこの“耳”がある。


『聞こえるか!? ひとりずつ返事してくれ!』

『オイラは聞こえるよ!』

『私も聞こえるわ』

『我輩もだ』

『アタシも聞こえるクェ!』

『便利な力っスね』

『便利だが、ちょっと気味が悪いな』

『……あとはライラだけか?』

『あっ! そうでした、私も返事できるのでしたね!』


 意思疎通は、途切れない。

 これはかなり重宝しそうだぜ


『普通、中に入ったら会話なんかできないっスよ。そのせいで、オレは仲間とはぐれたんスから』

『ルースはすごいからね!』

『であるな! 我輩もそう思うぞ!』

『そう言ってくれるのはダグとアレックスだけだぜ!』

『和んでるところ悪いっスが、これだけで突破できるほど嵐の中は安全じゃないっスよ』


 ベニーがそう言った直後。俺の瞳が嵐の中を蠢く影を捉えた。


『アレックス!』

『見えた! 皆、敵が来るぞ!』


 全身を金属の鎧に覆われた、巨大なサソリ。


 迎撃態勢に入るベニーとシグを余所に、俺たちは即座に動いた。


『行くぞ!』

 軽装鎧をまとったアレックスが前に出る。

 彼が指に着けてる指輪のおかげで、皆から多少離れても大丈夫なはずだ。


 頭上から鋭く振り下ろされる爪を受け止め、体当たりで動きを封じる。

 そんなアレックスの援護をするように、背後のイザベラが杖を構えた。


雨氷矢グレイズ・アロー!』


 風の魔道具と組み合わせた氷の矢が、嵐を裂いて降り注ぐ。

 堅い甲羅を貫き、サソリの脚を地面に縫い付けた。


 対するサソリも、ただやられるだけじゃない。

 反撃のため振り上げられた尻尾が、毒液を垂らし始めてる。


 だが、そんなサソリの動きを察知してたように、ダグが動いたぜ!

 堅いはずのサソリの甲羅を簡単に切り裂いちまう。


 あっというまに切り落とされた尻尾が地面に倒れ、弱り切ったサソリは動かなくなった。


 わずかに傷を負ったアレックスの元へ、クゥに乗ったライラが駆け寄る。


『リカバリー』


 淡い光が、傷を癒す。


『助かるぞ!』

『いえいえ、大したことはしていませんよ』


 戦闘は、あっけなく終わった。

 すでにみんなの意識は戦利品に向かってるらしい。

 特にライラは、興奮気味に毒腺や甲羅を集めている。


『すごい素材ですよ! これは!』

『後で整理しような』

『強すぎる……こいつらどうなってんスか』

『お前のボスとやらも、負けるかもな』

『そ、そんなはずないっスよ! 失礼な女っスね!』


 そんなやり取りをしてるベニーとシグ。

 全部俺たちに筒抜けなんだけど、気にしてないのだろうか?

 まぁ良いか。


 そうして俺たちは、二日かけて嵐の端まで進んだ。


 久しぶりに吸う外の空気は、さぞかし旨いことだろう!

 そんな期待感に押され、俺たちの足取りは軽くなる。


 やがて、うすぼんやりとしてた光が濃くなってゆく。

 青空が近づいてる証拠だぜ!

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