表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドンゾコナビ ~滅びの世界で少女導く~  作者: 内村一樹
第4章:切り捨てる者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/103

第89話 巻き添え

「お休みのところ申し訳ありません。私です」

「これはこれは、大地の女神キリン様じゃないか。俺に何か用でもあるのか?」


 真っ白な霧の中、俺は姿の見えない女神さまに向けてうそぶいてみた。

 いつも通り、彼女の乾いた笑い声が響いてくるぜ。


「もしかして、記憶でもなくしてしまわれたのですか?」

「冗談だよ。力を渡すために呼んだんだろ?」

「はい、そうですよ」


 楽し気な声が響いた直後、いつも通り3つのモノが眼前に浮き上がって来た。


「翼と爪と……これは耳か?」


 能力名は聞き取る耳(パーシバー)


 説明によると、周囲の音の中から聞き取りたい音だけ聞こえるようになるらしい。


 翼はクゥがいるし、爪の代わりになる攻撃手段は沢山ある。

 ってことは、今回も一択みたいなもんだよな。


「耳か。また特殊な力なんだろうな」

「そうですね。ですが、あなたならしっかりと使いこなしてくれると信じています」


 調子のいいことを言うぜ。

 まぁ実際、俺は結構使いこなせてる方なのかもしれないな。

 それもこれも、イザベラの持ってる叡智の鍵のおかげなんだけど。


 使えるもんは全部使っていかないと、損するだけだし。問題はないよな。


 そう自分に言い聞かせながら、俺は強い躊躇いが腹の底に溜まっていることに気づいていた。


 ソヴリンと戦うために遠慮することなく力を使ってきたけど。

 この力は、結局何なんだ?


 神様からの加護?

 それもあながち間違ってないよな。

 でも、だとすると、変な気がする。


 魔術や加護は、強い願いや祈りによってもたらされる。

 それが、僧侶の話だった。


 対して俺はどうだ?

 そんな強い願いや祈りを、どこかに抱えてるっけ?

 いや、こんなことを考えてる時点で抱えてないことは明白だぜ


 じゃあどうして、俺はこの力を使えるんだ?


 もう一つ引っかかってることがある。


 キリンから授かった力、つまりは欠乏の文様の力を叡智の鍵で『解放』できるという事。


 これも、変だよな?

 鍵をあけて得られる力って、それはつまり、封印されていた力みたいじゃないか。


 便利だから。使えるから。あまり考えてこなかったことだ。

 だから、改めて俺は考えた。

 そして、一つの仮説にたどり着く。


 もしかして、今まで得てきた力って。

 キリン様から授かったんじゃなくて―――。


「ルース様?」

「んぁ? な、なんだ?」

「随分と長い時間、考えこんでいましたね」

「あぁ、そうだな」

「そろそろ時間ですよ。今回も、良い結果を期待しています」


 そんな彼女の言葉に吸い込まれるように、俺の意識が混濁していく。


 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 翌朝、目覚めた俺たちはテキパキと準備を整え、大陸の中心に向けて出発した。


 方角でいうと南西だな。


 足元に鋭利な段差が無数にある中を進むのは、かなり大変だぜ。

 周辺にある鉄でダグが作った靴を履いてなかったら、足の裏がズタボロになってたところだよ。


 ちなみに、シグにはその靴は与えてない。

 代わりにアレックスが荷物と一緒に背負ってくれてるぜ。


 裸足のままじゃ逃げ出せないだろうからな。

 良い案だろ?


 そうして進む中で、俺はイザベラに声をかけた。

 理由は単純。

 新しい力を手に入れたからな。


 ホントは少し迷ったけど、いつものように叡智の鍵で解放してもらおう。

 ちなみに、今回の鍵穴は俺の右の耳たぶにあったぜ。


聞き分ける耳パーシブ・ハーモニック。あらかじめ選定した人物と念話できるようになる』


聞き澄ます耳(パーシブ・シェア)。近場にいる複数人と念話ができるようになる』


聞き解く耳(パーシブ・センサー)。音響反射による周辺探知が可能になる』


 これは、思っていた以上に便利な力を手に入れたかもしれないぞ!

 なぜかって?

 だって俺たちには、ライラがいるんだからな。

 それに、使い方次第で欠乏と結合(ユニオン・ラック)の難点も克服できるかもしれねぇ!


 早速、皆に朗報を伝えようと俺が意気込んだその時。

 先導していたダグが足を止めたんだ。


「みんな、止まって!」

「どうしたクェ?」

「人が、こっちに向かってきてる」


 彼の指さす先に目を凝らすと、確かに、大勢の人間がこちらに向かって歩いてきてるのが見える。


 ん?

 かなりの人数じゃないか?


 相手も俺たちを見つけて、何やら忙しなく動き始めてるな。


「とりあえず、話をしてみる方針で良いわよね?」

「そうだな。それでいいと思うぜ。でも、警戒は怠るなよ」

「分かってるよ」


 両者ともに警戒心をむき出しにしたまま、じわじわと接近する。

 そしてついに、向こうから声が響いてきたんだ。


「おい! 何者だ! なぜこんなところにいる!」

「私たちに敵意はないわ! 少し話がしたいんだけど、ダメかしら!」

「……」


 イザベラの返答に、あちらさんは困惑を見せてるな。

 お、何やらちょっと偉そうな男が前に出てきたぞ。


「話か! それなら俺が聞くとしよう! 悪いがその前にまず、名を教えてくれ!」

「私はイザベラよ! 話はこのまま立った状態でする? 私たちとしては歩きながらでもいいんだけど」

「このままで構わない! が、後続の者たちは先に進ませたいので、お前たちはもう少しそちらへと移動してくれないか!」


 俺たちは言われるがまま、少し南へと移動した。

 どうやら、進路上にいた俺たちが邪魔だったみたいだな。


 ゆっくりと歩みを進めている集団を横目に、5人の男が集団からはぐれ出てくる。

 そして、何やら目配せをしながらこちらへと近づいてきた。


「油断するなよ」

「分かってる」


 奴らに聞かれないよう、イザベラの耳に向けて小さくささやきかけた俺。

 その時、不意にリーダーらしき男が片腕を上げて他の4人を制止した。


 もしかして、俺の動きに不審感を抱いたか?

 なんて考えたけど、それはどうやら杞憂だったらしい。


「そこの魚人、お前が持っている荷物には何が入っている?」

「食料とか諸々よ。お互い、旅をするためには必要でしょ?」

「本当か? 我らが近づいた隙をついて、武器を取り出そうという腹積もりではないだろうな?」

「我輩がそのようなことを―――」

「アレックスさん。ここは私に任せてください」


 文句を言おうとする彼をイザベラが目で制止する。

 そして彼女は男に向き直って告げた。


「警戒されてるのは理解してる。だから譲歩するわ。彼が荷物を降ろして離れれば、武器を取り出す危険は低くなるでしょ?」

「……そうだな。そうしてもらえると助かる」


 即座に理解したアレックスが、背負っていた荷物を地面に置いた。

 そして、降ろした荷物から少しだけ距離を取る。


 緊迫した空気が流れる中、これでようやく情報収集に入ることができる。

 と、俺たちが安堵したその瞬間。


 まるで、狙いすましていたかのように閃光がはじけたんだ!


 視界を奪われたイザベラたちが、顔を両手で覆う。

 だけど、俺の視界は完全には奪えないぜ!


 これは奇襲だ。

 即座に、見通す瞳(フォーキャスト)で周囲の状況を把握しなくちゃならねぇ!


 ハズなんだが。

 奴らは俺たちよりも一枚上手だったらしい。


 ドンッと全身を強く打ち付ける何かに圧され、俺は空高くへと舞い上げられたんだ!


 狙い撃ち!?

 咄嗟にそう思ったが、どうやら狙いは俺じゃなかったらしい。

 だって、ぐるぐる回る視界の中ではるか遠くまで吹っ飛ばされているアレックスを見つけたんだから!


「くそっ!!」


 狙いはアレックス。

 恐らく、猛烈な風の魔術でも使ったんだろう。

 俺はその巻き添えを食らっちまったってことみたいだ!


 体が軽すぎるのも、考えものだぜ。

 こうなることが分かってたら、翼をもらっておけばよかったな。

面白いと思ったらいいねとブックマークをお願いします。

更新の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ