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ドンゾコナビ ~滅びの世界で少女導く~  作者: 内村一樹
第4章:切り捨てる者

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第88話 嫌な考え

「逃げ続けるって……あの砂嵐から、ずっと?」

「そうだ。あれをやり過ごすことはできない」


 焚火の向こうで、シグは淡々と答えた。


んだことは?」

「無い」

「建物に隠れるとか……」

「無理だ。嵐が全てを削り崩してしまう」


 短い言葉が、重く落ちる。

 誰もすぐに口を開けなかった。

 西の大陸を知らない者にとって、それは想像しがたい生き方だよな。

 まぁ、俺も知らないテイなんだけど。


「それじゃあアンタも含めてここに住んでる連中は皆、砂嵐から逃げ周りながら生活してるのか?」

「そうだ」

「それって、すごく大変だよね」

「そうね……砂嵐はどれくらいの速さで動いてるの?」

「4年で大陸を一周している」


 4年で一周という事は、1年で大陸の四分の一。

 俺たちはタイミング悪く西の大陸に足を踏み入れたことになる。


「アタシなら、嵐の上を飛んでいクェるよ」

「勧めない」

「どうして? もしかして、空まで危険なの?」

「越えることはできる。だが、越えた先が安全とはいいがたい」

「もしかして、そこにソヴリンがいるのか!」

「いいや、その先で待ち構えてるのは生に貪欲な人間だからだ」

「……そっか。嵐に追われるより、嵐を追う方が安全なのね」

「それだけじゃない。奴ら、砂嵐が生む魔獣を狩ることで飢えを凌いでいる」


 嵐を避ける者。

 嵐を利用する者。


 どちらにせよ、平穏とは程遠いな。


「ねぇ、ライラがルースとお話ししたいって!」

「分かった。今行くぜ」


 すぐに欠乏と結合(ユニオン・ラック)を発動する。


『ライラ。俺に話があるって?』

『こんにちはルース様。なんだか、お久しぶりですね』

『だな。最近、葉っぱも増えてきて元気そうだな』

『はい。クゥったら、時々つまみ食いしてるので、そのおかげかもしれませんね』

『なんだと!?』

「ちょっ、ちょっとライラ! 秘密にしててよ」

『あら、ごめんなさい。でも、私のためにやってることなので、大目に見てはくれませんかルース様』

『そういう事なら、まぁ仕方ねぇか。でも、こっそり食べるんじゃなくて、ちゃんと報告してくれた方が助かるぜ』

「分かったクェ」


 ったく、仕方がない奴だぜ。


『それより、本題はなんだったんだ?』

『いまシグさんから聞いたお話なのですが、1つ気になったことがありましたので』


 ライラのその言葉を聞いた俺は、視界の端で目をパチクリしてるシグを確認した。

 どうやら、俺が姿を消したことに驚いてるらしい。


『なんだ?』

『魔導遺跡のことです。さきほど、建物は削り崩されてしまうと言っていましたので』

『―――この大陸には魔導遺跡がない可能性がある。ってことか!?』

『もしかしたら、ですけどね』


 彼女の推測が当たってた場合、魔導書を探すという当面の目標が達成困難になるかもしれない。


『シグさんから、魔導遺跡の存在について見聞きしたことがあるか聞いてみた方が良いと思います』

『だな』

『それから、明日からの動き方として大陸の中心に向かうのはどうかと尋ねてみてください』

『大陸の中心か。たしかに、その方が嵐から逃げやすいからな』


 ライラからのお願いを快諾した俺は、再びシグの前に姿を現す。

 そしてすぐに2つの質問をした。


 結果は次の通りだ。


 魔導遺跡どころかちゃんと機能している建物を見たことがない。

 あるのは金属の柱や金属の洞窟くらい。


 大陸の中心については、嵐から逃げる距離が少なくて済むため多くの人間が密集しているとのこと。

 ただし、本当の中心には嵐の根源が鎮座しているためそもそも近づけないらしい。


 嵐の根源。

 それがつまり、ソヴリンなんじゃないか?


 方針は、自然と定まった。


 まずは、大陸の中心を目指す。

 その道中、魔導書や魔導遺跡について知っている人を探す。


 これが当面の目標だな。

 そうと決まれば、今日は体を休めよう。


 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 皆が寝静まった頃。

 ライラはクゥの翼に感じる小さな温もりを意識しながら、考え事をしていた。


『どこか不自然に見えましたね』


 それは、ルースの様子。


 なぜ彼は、あのタイミングで大陸の外からやって来たことを明かしたのでしょうか。


 たしかに、シグさんにその説明をすることで話が進んだようにも見えました。

 ですが、提案をするだけなら彼には多くの選択肢があったはずなのです。


 例えば、欠乏と結合(ユニオン・ラック)を使う、とか。


 そもそも今回、彼はシグさんを捕縛した後、すぐに欠乏と結合(ユニオン・ラック)を解除した。


 それだけなら、別に違和感は覚えないのです。

 ただ、油断していた。

 そういう風に捉えただけでしょう。


 ―――以前の私であれば。


 ゲンブを倒した後、先に霧氷山を下りたイザベラ様と私たち。

 その時に話した内容が、私の意識をルース様に固執させるのです。


“ルースは……誰かの指示で動いてるかもしれない。”


 疑いを向けたくはない。

 だけど、違和感がある。


 それが、イザベラ様の考えでした。


 出会った時から一貫してソヴリン討伐に手を貸してくれた彼のことを、イザベラ様は疑いたくない様子。


 目的も一緒だから気にしていなかった。

 そういう風にも仰っていましたね。


 私も気持ちは同じです。

 なのですが。


 やはり、違和感を拭いきることができません。


“大陸の中心か。たしかに、その方が嵐から逃げやすいからな”


 その返事はまるで、砂嵐について昔から知っていたかのようには聞こえないでしょうか。


 さらに言えば、彼の使う不思議な力についてもです。


 願いの強さが、魔術に影響する。

 ルース様の使う文様の力もまた魔術だというのなら。

 あれだけ多様な力を生み出す『願い』とは、何なのでしょう。


“彼が強力な魔術を使えた理由は一つ、彼の思いや願望が、ことさらに強力だったからです”


 あの日、僧侶様から聞いた話。

 それらが私の頭の中で違和感と結びついてしまう。


 嫌な考えですね。忘れてしまいたいところです。

 ですが―――


『無視をすることが、得策とは思えませんね』


 無視ではなく、注視していきましょう。

 彼のことを、そして、皆のことを。


 それが私にできる最善。

 皆のためにすべきこと。


「ライラァ? まだ寝てないの?」

『クゥ。ごめんなさい、起こしてしまいましたか?』

「大丈夫クェ。すぐに寝れるクェ……」


 寝てしまいましたね。

 見張りは鍛錬にいそしんでいるアレックス様に任せて、そろそろ休むとしましょうか。

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