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ドンゾコナビ ~滅びの世界で少女導く~  作者: 内村一樹
3章:朽果てる者

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第75話 熱い声

 水が際限なく湧き上がる。氷柱が伸び、酸の飛沫が空を裂いた。

 その一つひとつが、俺たちの逃げ道を削り取っていく。


 クゥの羽ばたきも、そろそろ限界だ。息が荒いぜ。


 そんな状態の俺達は今のところ、成果を得ることができてない。


「あの蛇っ! しつこいわねっ!!」

『どうやってんのかは分かんねぇが、蛇の奴は俺たちを見つける方法を持ってるみたいだな』

「つぎはどうするの!? 遺跡の影に隠れても、すぐ見つかっちゃうよね?」

「そんなことっ! 私もわかんないわよ!」


 魔導書のある塔に直接向かっても、頑丈な壁のせいで中に入ることはできなかった。

 そうなると、俺たちに残されてる道は遺跡の入り口を開けることくらいなんだが。

 そんな余裕が残されてるワケないだろ?


 叡智の鍵があるから、扉を開けること自体はできるんだろうけどな。

 ゲンブの甲羅の上に降りて、鍵を挿しいれるなんてしてたら、一瞬で溶かされちまうぜ。


 良く考えたら、つい最近までゲンブを封印してた魔導遺跡なわけだ。

 そう簡単に侵入なんかできるわけないのかもしれないな。


「もう一度! 次は反対周りで蛇の視線を撒くわよ!」

「分かった!!」


 そう言って行動を再開するクゥとイザベラ。

 風になったような俊敏な動きで遺跡に急接近するぜ!


 そんな速度には、さすがの蛇も追いついては来れない。

 だけど、視線を遮ったと思っても、気づけばすぐに見つかっちまうんだ。


 何か原因があるはず。

 その原因を探るため、逃げ惑う最中もずっと俺は蛇の様子を観察し続けた。


 そして気づいたんだ。

 遺跡の影に身を隠してる間も、奴の目が、俺たちをまっすぐ捉え続けていることに。


 まるで、見通す瞳(フォーキャスト)でも使ってるかのようだぜ。


『ダメだイザベラ! あいつ、俺たちのことを見失ってすらないぞ!!』

「どうしてよ!?」

『知らねぇよ!』


 もしかしたら、本当に見通す瞳(フォーキャスト)を持ってるのかもしれねぇ。


 なんて考えてたら、眼下の甲羅が激しく揺れ始めた!


『下だ! 水が来るぞ!!』

「クゥ!!」

「分かってる!!」


 直後、俺たちめがけて冷水が吹き上げる。

 すんでのところでそれを躱したクゥが、体勢を整えようとした時。


 噴き上がってた冷水をかき分けるように、蛇の尻尾が薙ぎ払われたんだ!!


 細かな飛沫があたりにはじける。

 白い光で散らされたそれらの飛沫は、クゥの全身に染み込んで―――。


「クゥ!!」

「冷たっ!!」


 一瞬で凍り付いた翼を元に戻そうと激しく羽ばたくが、効果は薄い!

 くそっ!

 落ちるぞ!!


 広がった翼のおかげで、滑空するように落下してく俺達。

 問題は着地した後だぜ!


『イザベラ!! 振り落とされるなよ!?』

「分かってるっ!!」

『着地したらすぐに、氷の壁を張れ! じゃねぇと、一瞬で溶かされちまうからな!』

「分かってるってばぁ!!」


 歯を食いしばりながらクゥにしがみつくイザベラ。

 そんな彼女の身体を、ライラがツタで縛ってくれてるぜ。


 そうして俺たちは勢いを殺すことができないまま、甲羅の上に落ちたんだ。


「ぐぅ!」

『クゥ! イザベラ! 大丈夫か!?』


 ダメだ返事がねぇ!

 こうなったら俺がやらねぇと!!


堅氷壁ソリッド・アイス・ウォール!! おまけにミスト!!』


 これがどこまで通用するかは分からねぇ。

 でも、何もやらないよりはマシなはずだ!


 手当たり次第に氷壁を張り巡らして、その中に紛れる。

 同時に発動したミストのせいで体温が下がっちまうが、我慢してもらおう。


「痛たぁい……」

「うぅぅぅぅ。体が、動かないクェ」

『大丈夫か2人とも!』

「ご、ゴメン、一瞬意識が飛んでたみたい。蛇は?」

『今のところ、例の酸は飛んできてないぜ』

「どうしたのかな?」

『分からねぇけど、さっきから見てる感じじゃ、俺たちのことを見失ってるような……』


 俺たちが着地してる辺りを視てはいるが、さっきみたいな視線が合った感じはないぜ。

 それこそ、霧の中の俺たちを見つけようと探ってるような、そんな視線だ。


「もしかして、霧のおかげ?」

『はっきりは分からねぇな』

「ルース、ライラが話したいって」

『今か?』


 こんなタイミングでイザベラとの欠乏と結合(ユニオン・ラック)を解除するのは危険に思えるが。

 でも逆に、今しかないのかもしれないな。


『分かった。イザベラ、解除するからな』

「うん」


 そしてすぐ、俺はクゥと身体を共有する。


『ライラ、話があるって?』

『はい、1つ、お伝えしておこうと思いまして。あの蛇はおそらく、イザベラさんとクゥの体温を見ているのです』

『体温を見てる?』

『はい。蛇の中にはそのような力を持っている物がいると、聞いたことがありましたので』


 なるほどな。それですぐに見つかっちまうわけだ。

 これだけ冷やされた空洞の中じゃ、かなり目立つだろうからな。


 で、翼を凍らされたクゥと、霧で体温が下がったイザベラを見失ってると。


 小さいけど、攻略の糸口が1つ見つかったぜ。


『とはいえ、翼が凍ったままじゃ身動きがとれねぇぞ』

『そうですね。せめてもう一人、自由に動ける方がいてくれれば……』

『そうだな、奴の注意を惹きながら逃げ惑ってくれるような、勇敢な奴がな』


 俺とライラの頭に浮かんでるのは、きっと同じ名前だよな。

 ダグ。

 彼がここにいてくれれば、きっともう少しやりようがあったはずだ。


 でも、ダグの助けを待ってる猶予はねぇ。

 そもそも、さすがのダグでも1人でここまでやってくるのは困難を極めるだろうし。


『やれることはまだあるはずだ。情けない結果なんか、見せられないからな!』

『そうですね。私ももっと、頑張ります!』

「アタシも頑張るクェ!」


 そう言って立ち上がろうとするクゥに、励ましの声をかけようとした瞬間。

 突き上げるような振動で、クゥとイザベラはその場に転がった。


『なんだ!?』


 急ぎ、状況を確認するために周囲を見渡した俺は、3つの変化を目にする。


 1つ目は今しがたの振動の原因。

 亀が空洞内にある多くの氷柱をなぎ倒しながら、右に動いたんだ。

 その様子は、まるで何かを避けようとしてるみたいだぜ。


 2つ目は蛇の様子がおかしいことだ。

 亀が避けた水中の壁を、ジーッと睨みつけてやがる。

 その様子は、まるで何かを警戒してるみたいだぜ。


 そして3つ目は、蛇の視線の先にある水中の壁だ。

 水中だから視界が揺らいで見えにくいんだが。

 俺は確かに見た。


 暗く変色してしまってる水の中に、一閃、何かが煌めいたのを。


 直後、この空洞を満たそうとしていた大量の水が、荒々しく波を立て始める。


 理由は明確だ。


 水中の壁が、まるで斬り開かれたかのように音を立てて崩れ、轟音とともに流れ出し始めたのだから。


 巨大な渦となって、水面が引いていく。

 その代わりに、この空洞内に熱い声が響き渡ったんだ。


「フハハハハハハッ!! 吾輩たちが助けに参ったぞぉ!!」

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