表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドンゾコナビ ~滅びの世界で少女導く~  作者: 内村一樹
3章:朽果てる者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/103

第71話 寒空の下

 冷たい感触と、耳をつんざく轟音で目を覚ました。


 視界に飛び込んできたのは、必死に俺を抱き起こすイザベラの顔だ。


「ルース! やっと起きた! 呑気に寝てる場合じゃないわよ!」

「……分かってるぜ」


 ついさっきまで話していた自称・神――いや、キリンとの会話を思い出す。

 その内容からすれば、今がとんでもなく危険な状況なのは間違いない。


 けど、それを知ってるのは俺だけのはず。じゃあ何でイザベラまで焦ってる?


 理由はすぐに分かった。


 教会の床には濁った水が流れ込み、外からは絶え間なく悲鳴が響いてくる。

 これじゃ誰だって慌てるさ。


「何が起きてる?」

「分からない! でも突然水が流れ込んで来て……! アンタは床に倒れてるし!」

「助かったぜ。イザベラ、とにかく皆と合流するのが先だ。行くぞ!」

「そ、そうね……って、妙に落ち着いてない?」

「俺は大人の男だからな。ちょっとやそっとじゃ慌てないんだぜ」

「ルース! イザベラ! 大丈夫!?」


 飛沫を跳ね上げて飛び込んできたのはダグだった。

「おうダグ。俺たちは平気だ。他の皆は?」

「二階に避難してる! 早く来て!」


 そのまま導かれるように、俺たちも二階へ駆け上がった。


 狭い二階には、子供たちとアレックス、ザハンの姿。

 だがイザベラが現れても誰も驚きもしない。それだけ、目の前の異変に気を取られてるんだ。


「あれ? ダグ、クゥはどこだ?」

「クゥは外の様子を見に行くって言って飛んで行っちゃったよ。そろそろ戻ってくると思うけど」

「戻ったクェ!」

「クゥ。何が見えた?」

「なんか、あのおっきな山の上で、でっかい影が動いたのが見えたよ!」

「それはまさか!? ゲンブの封印が解けたということではあるまいな!?」

「そんなのアタシに聞かれても分からないクェ!」


 ザハンは眉をひそめ、アレックスは口を開けて凍りついている。

 二人がこれほど動揺する相手――確認するしかない。


 俺とイザベラは窓辺に駆け寄り、視線を山へ。


 静かに佇んでいたはずの山から、濁流が轟音を立てて噴き出していた。

 さらに山頂近くは深い霧に覆われ、何も見通せない。


 この教会からじゃさすがに見物する瞳(スペクテイター)でも詳細を確認することはできないぜ。


「あの濁流が湖に流れ込んで、水位があがっちゃったのね」

「マズいぞ! このままではこの子達が住める場所が無くなってしまうではないか! このような時、どうすれば……」

「決まってるじゃない。やっぱりゲンブを倒しに行くべきなのよ」

「それは、しかしっ!」


 アレックスが言いよどむ。その視線を受けたザハンは、ただ山を睨みつけていた。


「ザ、ザハン?」

「分かってるさ。ったく、本当にタイミングってやつがワリィよな。せっかく大人のかっこいいところでも見せといてやろうって思ってたのになぁ」


 深く息を吐き、ザハンはイザベラへ向き直る。


「あれはおそらく、ゲンブの封印が解けちまったってことだな」

「それで? この状態を解決するためにはどうするべきだって言うの?」

「お、おいイザベラ、今は喧嘩どころじゃ」

「いやいいんだ。結局、嬢ちゃんの言ってたことが正しかったってことなんだろうよ」


 そういったザハンは、窓から山を指さして告げる。


「ゲンブを倒しに行くしかねぇ。じゃなきゃじきに、ここは人の住める土地じゃ無くなっちまう」

「分かってくれたみたいね。それじゃあ今から、ゲンブを倒すための作戦を―――」

「そいつは悪いが、出来ねぇ話だぜ嬢ちゃん」

「は!? アンタが今、ゲンブを倒しに行くしかないって」

「それは、ゲンブを倒せる奴の取るべき行動だ。そうだろ?」


 ザハンの指先が示すのは、怯えながら身を寄せる六人の子供たち。


「俺はゲンブを倒す力なんざ持ち合わせてないからな。その子たちを連れて一目散に逃げるとする」

「それは」

「嬢ちゃんたちは勇者なんだろ? ゲンブを倒せる自信があるんだろ? だったら、しっかりと頼むぜ。失敗するとしてもせめて、その子たちが逃げ切るだけの時間くらいは稼いでくれよな」

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

「おいイザベラ! ここでもめてる暇はないぜ! どんどん水位が上がってる! 行くなら早く行ったっ方がいい!」

「でも!」

「作戦は向かいながら話そうぜ! それでいいよな?」

「アタシはいいよ!」

「オイラは……」


 言い淀むダグ。

 そんな彼の反応に、俺たちが視線を集中しかけたその時。

 何かを決心したらしいダグが口を開いた。


「ザハンさん! 子供たちを逃がすって、どうやるの?」

「は? そんなの、走って逃げるしかねぇだろ! 泳げねぇ奴は、アレックスに担いでもらえ!」

「子供達だけなら可能だが、吾輩には―――」

「それなら十分じゃねぇか。アレックス、心配は自分の分くらいとっておけよ」

「だったら、オイラも子供たちを逃がすのを手伝うよ!」

「ダグ殿!?」

「ちょっとダグ? 何を言ってるの?」

「クゥならイザベラを乗せて空を飛べるよね? ルースは欠乏と結合(ユニオン・ラック)を使えばなんとかなるし。そしたら、オイラが足手まといになっちゃう。だから考えたんだ。オイラには、これがあるから」


 そう言ってダグが取り出したのは、腰に携えてたナイフだ。

 大願のナイフ。

 そんな銘を持ったナイフで、持ち主の願いの強さに応じて切れ味が増す不思議な道具だぜ。


「アレックスさん。この辺りに木が生えてる場所はない?」

「少し東に行けばあるが」

「その木を切って、皆が乗れる船を作ろうよ!」

「何言ってやがる? そんな悠長な時間があるワケないだろ? そもそも、そんなちっぽけなナイフで木を切り倒そうってのか? そんなことできるワケ」

「できるよ! オイラならできるんだ! だから、手伝ってほしい! 立派な船じゃなくていいから! みんなが掴まっていられるくらいのもので良いから!」


 なるほどな。

 船があれば多少逃げるのが遅れたとしても、当分は生きながらえることができるかもしれないか。

 魚人のアレックスがいるから、食料調達もなんとかなるかもしれない。


 でも、そういう話なら。


「ダグ! そういう事なら俺が」

「ううん。ルースはイザベラに着いててあげて!」


 優しい笑顔でそう告げたダグは、続けてこう言ったんだ。


「船ができたら、どうにかしてオイラもそっちに行くから! 大丈夫だよ。オイラ、追いかけるのは得意だからね!」


 自信満々に言い切るその姿は、出会った頃の彼と大きくかけ離れて見えるぜ。

 ……本当にいい男になったな。俺、感動してる。


「ダグ。私達もあなたの力を頼りにしてるんだからね。絶対に、追いついてよ!」

「分かってるよ!」

「怪我しないように、気を付けてクェ! ライラも言ってるクェ!」

「クゥもライラもありがと! それじゃあまたあとでね!」


 そうして俺とイザベラは、クゥの背中に乗って教会をった。


 目指すは深い霧に包まれた山の頂上ってところか?

 聞いた話が正しければ、あの山の中にゲンブが封じられてるんだよな?


 ってことはたぶん、山の中が魔導遺跡ってことだろうか?


 考えるべきことは山ほどある。だがまずは仲間に伝えねぇとな。


「イザベラ、俺の身体に新しい文様が出てないか?」

「は? なんで今そんなこと」

「あたらしい力を手に入れた! だから早くしてくれ!」

「っ!? 分かった!」


 例の場所でキリンから授かった力。

 書き記す喉(スクライブ)


 のどってことだから、声で何かをする感じなんだろう。

 そんな力を、叡智の鍵で解放したら……どうなる?


「あった! 舌! 鍵を挿すわよ!」

「おう!」


 雪が少しずつ強くなってきた気がするぜ。

 そんな寒空の下、クゥの背中で俺は新たな力の解放を行ったんだ。


 視界に広がるのは、3つの文字列。


書き写す喉(トラン・スクライブ)。魔道具に刻まれた魔術を他の道具に書き写すことができる』


書き増す喉(イン・スクライブ)。魔道具の効果を増幅することができる』


書き消す喉(デ・スクライブ)。魔道具の効果を削除することができる』


 さぁ。

 これでできることが増えたぜ!


 次のソヴリン:ゲンブを、どうやって攻略していくか、考えていくとするか!

面白いと思ったらいいねとブックマークをお願いします。

更新の励みになります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ