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ドンゾコナビ ~滅びの世界で少女導く~  作者: 内村一樹
3章:朽果てる者

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第67話 呪いのおかげ

「美味しいクェ!! これが蟹のうたグェ!?」

「おいクゥ、そんなに慌てて食うなよ。子供たちが見てるんだぞ」

「ほらクゥ。私が口に運んであげるから大人しくしてなさい。コラッ! 翼でかき集めないのっ!」

「にぎやかだな……」

「クゥちゃん可愛い。ねぇアレックス! あとでフワフワしてもいいかなっ!?」

「フハハハハッ! 吾輩からお願いしてみようではないか!」

「あ、ルース! ルースの分のお皿、ここに置いとくね」

「ありがとなダグ!」

「イザベラ! ライラにも食べさせてあげるクェ!」

「え? 大丈夫なの?」


 アレックスが準備してくれた蟹は、ホクホクで本気で旨い。

 ちょっとテーブルが狭い気もするけど、こういう賑やかさは嫌いじゃないぜ。


「ダグ殿。申し訳ない。まさかこれほどの人数の客人が来るとは思ってもいなかったが故、皿が足らぬとは……」

「ううん、大丈夫だよ。オイラこういうの得意だから」

「かたじけない」


 ダグが言ってるのは、今俺がもらった木製の皿のことだな。

 宴の準備をしている最中に、人数分の皿やフォークが足りないと分かると、ダグは二人分をパパッと作ってしまった。


 今いるのは俺たち4人とアレックス、そして子供たち6人。つまり11人だ。

 普段は2人くらいの客人が来ても良いように用意してるらしい。


「ねねっ! ダグのお兄さん! あとで僕にもお皿の作り方教えてよ!」

「ウチも知りたい!」

「あ、あとで教えてあげるから。落ち着いて」

「おぉ、ダグも人気者になって来たじゃねぇか」

「ちょっと、茶化さないでよルース」


 照れくさそうなダグ。

 年下に囲まれて頼られるなんて、彼にとっては新鮮なのかもしれない。


 ちなみに、ダグに皿の作り方を聞いてきた男の子は赤毛のルファ、女の子は金髪のミルナというらしい。

 この二人が、6人の中でも特に賑やかだ。


 他の4人はというと。

 一番年上っぽいのが、テーブルの端で黙々と蟹を食ってるドレク。

 その隣で、不器用に蟹を食いながら俺たちの方を観察してるのがノワレン。

 蟹を食べながらもクゥの羽毛を撫でてる茶髪の女の子がセリス。

 そして、アレックスの腕の中に抱かれてる幼子のアモリ。


 皆、それぞれ個性的だよな。

 ここまで賑やかな食事は俺も初めてかもしれない。ある意味、アレックスがうらやましいぜ。


 そんな賑やかな宴を楽しんだ俺たちは、交代で湖での水浴びを済ませ、休息をとることにした。


 ……と言っても、そう簡単に子供たちが寝てくれるはずがない。

 特にクゥとダグは、すっかり気に入られたらしい。


 羽毛のフワフワを楽しんだり、ナイフで皿を作る方法を教えたり。元気いっぱいだ。


「毎日こんな感じなんですか?」

「ハハッ。さすがに毎日ではないですよ。今日は皆様がいるからこそ、より楽しいのでしょう」

「それにしたって、6人の子供の面倒を見るっていうのは大変だろ? 素直に尊敬するぜ」

「いえいえ、吾輩もこの教会で育てられた者ですから」


 そうだったのか。

 だからアレックスも、子供たちの面倒を見ようと思えたんだな。

 あれ?

 でもだとしたら、アレックスを育ててくれたって人はどこに……いいや、考えるのはやめておこう。


 俺と同じ考えに至ったのか、イザベラもどこか暗い表情を足元に向けてる。

 このままだと気まずくなりそうだ。話題を変えるか。


「そ、そういえばアレックス、昼間助けてくれた時に呪いとか言ってたけど、あれって何なんだ?」

「呪い? そんなこといってたっけ?」

「イザベラの体調が悪くなったのは、呪いのせいらしいぜ」

「そうなの!? それって、セイリュウの時みたいな感じ?」


 たしかに東の大陸では森の食べ物を口にすると、生命の種とやらが体にできるって話だった。

 あれも呪いみたいなものだったのか?


「アレックスさん。もしかして、その呪いってこの大陸にいるソヴリンが原因なの!?」

「ソヴリン? いいや、それは違いますな。この呪いは吾輩たちをソヴリンから守ってくれているのですから」

「は?」

「え? 呪いが、ソヴリンから守ってくれる?」

「そうなのです」


 そう告げたアレックスは、右手を前に突き出して俺たちに見せた。

 右手には、昼間見た例の布切れが結び付けられてるぜ。


「これは、聖浄のフキンというのですぞ。かつて、吾輩を育ててくれたマザーが遺してくれた、神秘の1つです」

「聖浄のフキン? 聞いたことないけど、どんな効果を持ってるの?」

「呪いや穢れ、毒など、身体を蝕むものを清め浄化してくれるのですぞ」

「なるほど。でもそりゃ、呪いの説明にはなってないぜアレックス」

「フハハハハッ。その通りですね。ですが、このフキンをマザーに託したのが、呪いをかけた張本人だといえば、どうでしょう」


 は?

 そりゃ一体どういうことだよ。


「詳しく聞かせてください」

「分かりました。まず、この聖浄のフキンを遺してくださったのは、大地の女神キリン様と言われているのですぞ」

「大地の女神キリン様?」

「そうですぞ! そして言い伝えによれば、キリン様の手によってこの地のソヴリン:朽果てる者(ゲンブ)が封印されたのだとか。そのおかげで、われわれはこうして生きながらえることができているのです」


 そういったアレックスは、窓から見える巨大な山を指さした。


「あの山は、その封印によってできた物。あれだけの山を作るためには、大量の大地が必要だった。だから、山の周囲はどこまで行っても平らな湿地が続いているのだ!」

「マジか……」

「あの山の中に、ゲンブが封印されてるっていうの?」

「うむ。ですが、かのキリン様の力をもってしても、ゲンブの力を完全に封じることはできません。その結果、あの山から常に大量の水があふれだしているのです」


 なるほどな。

 だから北の大陸は辺り一面が湿地になってるのか。


「それで、結局呪いって何なの?」

「はい。山からあふれ出ている水には、ゲンブの力が宿っているのです。激流となれば何もかもを押し流し、淀めばすべてを腐らせ、降り注げばすべてを凍らせる」

「それを、キリン様が防いでるの?」

「そうですぞ。激流を起こさぬように大量の水を大地の中に蓄え、淀まぬよう適度に流し続ける。ですが、降り注ぐ水だけは、どうしても凍ってしまうのだ」

「それが、雪か」

「はい。この地では一年のほとんどの時間に雪が降っています。その雪が大地を氷漬けにしてしまわぬよう、キリン様は水の中に呪いを込められました」

「凍らせないための、呪いか」

「水が活性化するのだと、マザーは言っていました。吾輩にはよくわからないのですが……」


 アレックスが言い淀んだその時、子供たちを引きずりながらクゥがこちらに歩いてきた。


「ルース! ライラが話したいって言ってるクェ!」

「ん? 急ぎな感じか?」

「今の話? について、伝えておきたいことがあるって言ってるよ」


 もしかして、ライラもアレックスの話を聞いてたのか?

 確かに彼女なら、俺たちが知らないことまで知ってそうだし、聞いてみるか。


欠乏と結合(ユニオン・ラック)!」

『あ、ルース様』

『よぉライラ。何か話があるんだって?』

『はい。今しがた、アレックス様が話されていた内容について、1つ謎が解けましたのでお伝えしておこうかと』

『謎が解けた?』

『はい。なぜ私がこうして会話できるまで覚醒できたのか。それはきっと、呪いのおかげなのだと思います』

『凍らせないための呪いが?』

『どちらかというと、水が活性化するという方ですね』


 あぁ、なるほどな。

 植物の身体になったライラにとって、水は一番重要な食事だもんな。

 そんな水でできた雪を浴びまくったおかげで、一気に覚醒できたのか。


『たしかに、ありえそうな話だな』

『はい、とりあえず、伝えておきたかったっことは以上です。ところで、そろそろ子どもたちは眠りにつく時間なのでは?』


 ライラに言われて気づいたけど、クゥに抱き着いてるミルナとセリスが大きなあくびをしてるぜ。

 俺もそろそろ、眠くなってきたしな。

 続きはまた明日、ゆっくり話すとしよう。


 そうして俺たちは、ようやっと眠りについたんだ。

 まぁ、イザベラはさっきの話を色々と考え込んでるみたいだったけど。

 寝不足になっても知らねぇぞ?

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