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ドンゾコナビ ~滅びの世界で少女導く~  作者: 内村一樹
2章:埋め尽くす者

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第60話 けたたましい声

 なんとなく予想はしてたぜ。

 スザクを倒した後もそうだったからな。


 周囲に広がるモヤモヤを見渡した俺は、心の中でそう呟いた。


 自分がどうやって意識を失ったのかも、イザベラやダグたちがどうなったのかも、全然覚えてないぜ。

 分かるのは、ここにいるのが俺だけじゃないってことくらいだ。


「いるんだろ? いちいちかくれんぼなんかするつもりねぇからな」

「つれないですね。まぁ、私もかくれんぼをするつもりはありませんけれど」

「意見が合ったようで、なによりだぜ」

「それはそうと、やはり落ち着いているのですね。ついに2体目のソヴリンを倒したのですよ? ここはもっと、飛び跳ねて喜ぶべきところじゃないのですか?」

「俺はそんなガキじゃねぇんだよ。それより、今回も前と同じようにご褒美がもらえるんだよな?」

「せっかちですね。まぁ、そのつもりでしたので説明が省けてよかったです」


 せっかちはどっちだ……なんて思いつつ、口に出すのはやめた。

 自称神様と話し続けたら、聞きたいことを忘れそうだからな。


「前回同様、答えられない質問は3つまでってことでいいんだよな?」

「はい。それで構いません」

「分かった。それじゃあ1つ目だ」


 そして俺は、スザクを倒した後からずっと気になってたことを尋ねることにしたぜ。


「騎士とか、魔術師とか。あれは一体何なんだ?」 

「秘密です」

「そもそも、ソヴリンって何なんだ?」

「それも秘密です」

「じゃあ、俺は何者なんだ?」

「……それは、あなたが一番詳しいのではないですか?」

「だったらよかったんだけどなぁ、色々ありすぎて混乱してきたんだよ。ところで、今のは秘密ってことでいいのか?」

「そうですね、秘密です」


 やっぱり、3つとも秘密か。

 どうも自称神様は、根本的な疑問に答えたがらない節があるからなぁ。

 無理やりにでも吐かせたいところだが、試せるほどの勇気は持ち合わせてないぜ。


 だったら、俺は俺なりの方法で、自分に有利な情報を引き出してやるよ。


「分かった。それじゃあ最後の質問だ」

「どうぞ」

「次のソヴリンは、何が弱点だ?」

「……ふふふ。随分と熱心ではありませんか。殊勝なことで、私も嬉しいですよ」

「良いから教えろよ。俺からすれば死活問題なんだからな」

「そうですね。では教えて差し上げましょう。次のソヴリンの弱点はズバリ、人をはぐくむ清らかな心です」

「は?」


 人を育む清らかな心!?

 何を言ってんだよ。


「おい、ちょっと待て。それは冗談か何かか?」

「いいえ。本当のことですよ。私が嘘をつくと思っているのですか?」

「今のが嘘じゃないなら、なんだってんだよ」

「失礼ですねぇ。このままでは、次のソヴリン退治に失敗してしまいますよ?」

「んな!? って、茶化してんじゃねぇよ! ん? おい! まさかこのまま―――」

「もう時間ですからね。今回はこの辺でお別れです。大丈夫ですよ。初めにも言いましたよね。自分を信じてください」


 調子のいいことを言いやがって!

 でも、そんな文句を言う暇もないくらいあっという間に、視界がモヤモヤに覆われちまった。


 人を育む清らかな心って……。

 意味が分からねぇよ。

 質問を1つ無駄にしちまったぜ。


「ルース! ルース! 起きたの!?」


 気が付いた時、俺はダグの掌の上に横たわってた。

 さっきまでモヤの中にいたせいか、青空が眩しいぜ。


「おうダグ。さっきぶりだな。元気だったか?」

「オイラは大丈夫だよ! それよりルースは?」

「あぁ、大丈夫だ。やっぱり今回も、変な光が俺の中に入っていったのか?」

「う、うん……オイラがルースを持って、逃げようとしたんだけど」

「ダメだったんだな」

「ごめん」

「謝る必要ないぜ。ダグが悪いわけじゃねぇだろ。きっと、そういうもんなのさ」


 そう言ってみたものの、ダグを慰めることはできてないっぽいな。

 確かに、気分的が良くなるものじゃねぇけどさ。

 でもまぁ、体に異変があるわけでもないし、俺としては本当に気にしてないんだけど。


 自称神様が教えようとしないってことは、知る必要がないってことなんだろ。


「んで? イザベラは何をしてるんだ?」


 話題を逸らすため、少し離れた場所で跪く彼女に視線を投げる。


「あぁ……イザベラがね、ライラさんを見つけたの」

「マジか!?」


 上空を飛び回ってあれだけ探し回っても見つからなかったのに、イザベラが一人で見つけたって言うのか!?

 それはすごい執念だな。


 言われてみれば、彼女の手足はかなり泥だらけになっちまってる。


「ダグ、行こうぜ」

「うん」


 なにやら地面をごそごそとしてるイザベラのもとに、俺たちは歩み寄る。

 そうして彼女の手元を覗き込んだ俺は、そこに予想外の物を見つけたんだ。


「ん? 何か植えたのか?」

「……うんライラさんの種を、植えたの」

「種?」

「ルース、覚えてない? オイラが光るツタを切るのに失敗した時、ナイフを弾き飛ばされたこと」

「あぁ、そういえばライラのツタに弾かれてたな」

「うん。あの時ね、弾かれた衝撃で光るツタの中の種も割れたと思ってたんだけど……」

「……もしかして、ライラを見つけたって言うのは」

「そうよ。ナイフがめり込んだ種が落ちてたの」


 そういったイザベラは、ゆっくり立ち上がるとこちらを振り返った。

 そして、手にしてた1本のナイフを日の光に掲げて見せる。


「見つけられたのは、これだけだから」

「そうだったのか……」


 周囲を見渡しても、ライラの存在を示す情報はない。

 見つけられるのは、ただひとつ――イザベラが埋めた種だけだ。


 生命の種。


 セイリュウを倒した今、本当に育つかは分からない。

 でも、きっと育つはずだ。


 だけど、それにはきっと長い長い年月が必要なんだ。

 植えた翌日に大木になるなんてことは起きない。


 クソ。

 もしかして自称神様は分かっててあんなことを言ったのか?


 人を育む清らかな心。

 もし、そんなものがあるんだとしたら、今すぐ手に入れたいぜ。

 そしたらまた、ライラに会えるようなそんな気がするからな。


 今できることは、森が元の姿に戻ることを祈り続けること――それだけかもしれない。


 たった1日で目まぐるしく変化してしまったこの森。

 そんな森で一人暮らすライラと、彼女を慕う動物たち。

 賑やかで、楽しげで、自由で。

 きっとそこには、彼女たちにとっての楽園が広がってたんだ。


 あぁ……。

 なぜか、なんとなく分かった気がする。


 俺はライラに会った時からずっと、彼女に何か不思議なものを感じてたんだ。

 言葉にできない逞しさ、生き抜く強さ――ひ弱に見えて、気高い女性。


 そうだ。

 そんな風に見えてたんだ。


 でも、そりゃ当然だったんだよな。

 だって、きっと彼女は、人間じゃなかったんだから。


 目が見えず、動物の意思を理解し、植物を操れる――納得できる。


 彼女はきっと、この森そのものだったんだ。


 森が静けさを取り戻す中、盛られた大地に植わるライラの種。

 いつ芽を出すんだろうか。

 叶うなら、もう一度世界を見せてやりたいぜ。


 種の傍にそっと身を寄せるクゥを見ながら、俺はそう思った。

 そういえば、クゥのことを頼まれてたんだっけな。

 でもこの分だと、クゥはしばらくここを離れそうにないぞ?


 なんなら、イザベラもクゥの頭を撫でながら居座るつもりに見えるぜ。


「オイラ、食べ物を探してくる! 二人はここで待っててね!」


 そう言って駆けだしてくダグは、例のナイフを構えてる。

 大願のナイフ。

 それについても、色々と聞いておかなくちゃいけないな。


 そうして俺たちは、ライラの種の傍で野宿することにした。

 考えることは山ほどあるが、整理できないまま疲労に身を任せ、深い眠りに落ちたんだ。


 翌日、けたたましい声で目を覚ました俺たちは愕然としたぜ。

 原因は……予想外の相手だった。


「朝よ! 早く起きるクェェ!」

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