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ドンゾコナビ ~滅びの世界で少女導く~  作者: 内村一樹
2章:埋め尽くす者

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第59話 2体目:埋め尽くす者

「なにあれ? あんな人いたっけ?」

『油断するなイザベラ! スザクの時を思い出せ!』

「スザクの時? もしかしてっ!」


 ダグとエオウィンを見下ろすように宙に飛び上がった男。

 その男の素性はこの際どうでもいい。


 それよりも重要なのは、男が敵だっていう可能性が高いことだぜ!


 思い出したのは例の騎士だ。

 全身を覆うローブ、大きなとんがり帽子、長い杖――見た目は完全に魔術師だ。


 騎士の次は魔術師か。

 考えたくないことを、つい考えちまうな。

 まぁ、それは後にしよう。


「浮いてる……」

「ダグ! 大丈夫!?」

「あ、イザベラ! オイラは大丈夫だよ!」

「おい! 悠長に話してる場合じゃねぇぞ! 奴が杖を構えたぜぇ!」


 エオウィンの警告に真っ先に反応したのは、ダグだった。

 手にしているナイフを逆手に構えたかと思うと、倒木を足場にして跳び上がる!

 宙を漂ってる男との距離を一気に詰めて、攻撃するつもりみたいだ!


『俺らも援護するぞ!』

「分かってる! エオウィン! アンタも行きなさい!! 堅氷壁ソリッド・アイス・ウォール!!」

「俺様に指図してんじゃねぇ!!」


 それでもエオウィンは、イザベラが作った氷柱を足場に跳び上がった!


氷柱突(アイシクル・スラスト)!』


 俺達もただ見てるわけにはいかねぇからな。

 急降下の速度を利用した氷柱の雨をお見舞いしてやるぜ!


 足元からはダグとエオウィン。

 頭上からは氷柱の雨。


 さすがの魔術師もこれだけ囲まれてたら―――。


 ……そう思った瞬間、すべて弾かれちまった!?


 何が起きたのかはっきりとは見えなかった。

 俺に見えたのは、魔術師が手にしていた杖をチョンと小さく動かしたことだけ。


 でも当然、それだけですべての攻撃を防ぐことができるわけないよな。

 結局、魔術師が何をしたのか理解できたのは数秒後のことだった。


「あの魔術師、ツタを操ってるわよ! ダグ! 足元に気を付けて!」

「分かった!!」


 ナイフを弾かれたダグは勢いで地面を転がり、体勢を立て直して走り出す。

 立ち止まったらツタに捕まると判断したみたいだぜ。


 エオウィンも同じように弾かれたみたいだが、さすがというかなんというかツタを片腕で捕まえて地面から引き抜きやがった。

 そのまま魔術師の足元から、もう一度攻撃を加えるつもりらしいな。


 それじゃあ俺たちは、2人の再攻撃に合わせて援護を!

 って思ったんだけどな。

 そう簡単にはいかないみたいだ。


「アイツ、ずっと私のこと見てるんだけど!!」

『空からの援護を嫌ってるのかもしれねぇな! 良いじゃねぇか、それはつまり囮になれるってことだぜ!』

「そんなの全然嬉しくないから!」


 そうは言いつつも、クゥに体をぴったりとくっつけたイザベラは、氷柱を強く握りしめた。


『氷柱を補充しとくぜ!』

「ありがと」


 発生した氷柱が飛んでいかないうちに掴むイザベラ。

 そのまま、増やした分もまとめて魔術師に狙いを定めたその時。

 こちらを見上げていた魔術師が、うっすらと笑みを浮かべたんだ!


「ほう。其方そなたは魔導書なしで魔術を使えるのか?」

「へっ!?」

『お、おい、あいつ、今しゃべったぞ!?』

「だが、其方はまだ魔術の真髄しんずいを理解してはおらぬようだ」


 杖を掲げた魔術師。

 直後、地面から無数のツタが突き出し、杖に向かって伸びる。


 突然の攻撃で、エオウィンはツタに埋もれちまった。

 ダグは、走り続けてたおかげで搦めとられることはなかったみたいだ。


 って、俺達も安心してられないぞ!


『イザベラ! 方向転換だ!』

「クゥ!! 避けて!!」

「この私が逃がすとでも!?」


 杖の先端に集められたツタが巨大な網を形成する。

 クゥも抜け出せない大きさだ――これじゃまるで、初めから狙っていたみたいじゃねぇか!


「ルース! どうしたらいい!?」

『分からねぇよ! くそ! もっと鉄板があれば!』


 究極魔導:憎悪の鍛界(ステュクス)で鉄のゴーレムを作れれば、一気に形成を逆転できるかもしれない。

 でも、今手元にある鉄は9枚の鉄板だけだ。


 こんなのでゴーレムを作っても、小さすぎて役に立たない気がするぜ。


 考える間にも、網に絡め取られ――自由に飛べない! 逃げられない!


『やべぇぞ!』

「くっ……動けないっ!」

「ク、クエェェェ……」


 1重じゃ飽き足らず、何重にも網をかぶせてきやがる。

 これじゃ、身動き取れないどころか、じわじわと握りつぶされちまうぞ!


「こう、なったら! ルース! あんた、ダグと合流しなさい!」

『は!? そんなことしたら』

「このツタを切れるのはダグだけでしょ! それに、魔術師の言葉を思い出して! あいつはまだ、アンタに気づいてない!」

『っ!? そういうことか!』


 確かに、さっき魔術師はイザベラに対して声をかけたよな。

 魔導書なしで魔術を使えるってことに反応してたはずだ。

 ってことは、ナビゲーターの力を知ってるわけじゃねぇってことだ!


 すぐに欠乏と結合(ユニオン・ラック)を解除した俺。

 そして、幾重いくえにも重ねられた網の中を見通す瞳(フォーキャスト)で確認しながら、脱出することに成功した!


 目当てはもちろん、いまだにツタから逃げ惑ってるダグの元だ!


 俺たちはいつの間にか地面にまで引きずり落とされてたんだな。

 おかげで飛び降りる必要が無くて助かったけど。


 顔だけ表に出てるような状態で寝転がってるイザベラとクゥ。

 そんな彼女たちに向かって、魔術師が話しかけ始めてやがるぜ。


いか。魔術とはいついかなる場面においても行使できる力でなくてはならん」

「そんなことより、離しなさいよ! こんなことして、ただじゃおかないからね!」

「口の減らん女子おなごだな。聞いておいた方がためになると思うのだが。まぁ、聞かぬ自由も確かにある。同じく、話す自由もあるのだから。それ即ち、この世は相反する力の調和で成り立っているという意味だ」

「意味わかんないから!」


 講釈の間も、魔術師はダグを狙い続ける。


 うごめくツタの上を走った俺は、ある程度ダグに近づいたところで欠乏と結合(ユニオン・ラック)を発動した!


『ようダグ! 元気だったか?』

「ルース!? 大丈夫だったの!?」

『俺は大丈夫だぜ! それよりも今は、イザベラとクゥを助けに行くぞ!』

「うん!」


 四方八方を警戒していたダグも、俺がナビゲートすれば安心だ。

 最適な経路を導き、ダグは逃げから攻撃へと転じる――


 迫りくるツタを切り裂き、魔術師の背後へ――一閃。

 ダグのナイフが“それ”を切り裂く。


「無駄ですよ。そんな小さな刃では、私の魔術を切り裂くことなど―――」


 余裕綽々で、そんなことを呟いていた魔術師。

 でもな、さっきも言っただろ?

 ダグの持つナイフが“それ”を切り裂いたんだよ!


 まるで盾のように地面からせり出してきた、ず太い岩の柱を。


「なっ!? なぜそのようなナイフで!?」

「これはオイラ達が作ったんだぁ! だから、絶対に負けないんだよ!!」


 叫びながら岩の柱を蹴り飛ばしたダグ。

 柱に隠れてた魔術師は、蹴り飛ばされた岩の柱と一緒に吹っ飛んでったぜ!


『今のうちだ! ツタを切ってイザベラたちを解放しようぜ! あいつは俺が見張っておくからよ!』

「イザベラ! クゥ! 大丈夫!?」

「ダグ、ルース、ありがとう!」


 手際よく解放されていく2人。

 これで一旦は体勢を整えることができたみたいだ。

 エオウィンだけは、まだツタの中に埋もれてるけどな。


 おっと、さすがにさっきのじゃ魔術師を倒せたってわけじゃないらしい。


「痛いですね。はぁ、まさかこんなところでそんなものに出くわすとは。これはこれで面白いです」


 そうボヤキながら立ち上がる魔術師。

 そんな彼に向かって、鼻息を荒げながら口を開いたのはイザベラだ。


「さっきはよくもやってくれたわね! お返しに、もっとすごいものを見せてあげるから!」

「ほう? それは魅力的な宣言ですね」

「イザベラ? 何するつもり?」

「ほら、ルース! あれを使うわよ!」


 おいおい、マジかよ。

 あれって、あれだよな?

 ホントに使えるのか?


 俺の心配をよそに、イザベラは杖を掲げた。

 こうなればやるしかねぇか。


 ダグの中から出た俺は、すぐにイザベラと欠乏と結合(ユニオン・ラック)した。

 そして、少しためらいつつも憎悪の鍛界(ステュクス)を発動する!


 すると、ダグが持っていたナイフがまばゆい光を放ち始めたんだ!


 地面からは大量の砂が巻き上がり、イザベラが脇に抱えてた鉄板に集まり始める。

 そうして、見る見るうちに形成された大量の鉄板が、見たことのあるゴーレムへと変貌したんだぜ。


 もちろん、魔術をはつどうしたイザベラと俺はゴーレムの中だ!


憎悪の鍛界(ステュクス)……確かに、興味深いものを見せてもらいました」


 不敵な笑みとともに、攻撃態勢に入る魔術師。

 そんな魔術師の放ったツタや岩の柱を、鉄のゴーレムがことごとく切り裂いていく。


 あれだけ余裕を見せてた魔術師とは思えないくらい、一方的な戦いだ。

 そして追い詰められた魔術師は、最後にこう言った。


「惜しいですね。せめて少しだけでもいいから、その刃を調べたかったですよ」


 言いながら魔術師が見つめていたのは、鉄のゴーレムが右手に装着している刃だ。


 俺は知ってる。

 この刃は、ダグが持ってたナイフが元になってるんだよ。

 そして、見物する瞳(スペクテイター)で見ちまったんだ。

 ナイフに刻まれた名と、その効果を。


『大願のナイフ:願いの強さが鋭さとなるナイフ』

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