表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドンゾコナビ ~滅びの世界で少女導く~  作者: 内村一樹
1章:焼き殺す者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/103

第6話 1冊目の魔導書

「俺がイザベラに共有できる情報って言えば――あの部屋に魔導書が1冊あったこと。それと……ガーディアンに見つかったってことだな」

「えっ、見つかったの?」

「おう。身体の小さい俺でもバレるんだから、相当鋭い“目”を持ってやがる」


 あの赤い光。まるで俺の存在を射抜くように突き刺さった。

 ただの灯りじゃない。奴は、あれで周囲を“見てる”んだろう。


「でも、音には反応しなかったな」

「視覚に特化してるってこと?」

「たぶんな。まぁ、俺の結論は“見つかると死ぬ”だ」

「……簡単に言うね」


 肩をすくめるイザベラ。だがすぐに、彼女は自分の情報を差し出してきた。


「私が前に入ったときは、部屋の中央辺りで気づかれたんだ」

「ってことは、経路次第で安全に進めるかもってわけか」

「でも……見つかった後が大変だったんだよ」


 彼女は唇を噛んで言葉を続けた。


「逃げたんだけど、扉の外まで追いかけてきて……足を怪我したのはそのとき」

「外まで!? あいつ、縄張り意識強すぎだろ!」

「しかもね、オークの巣に迷い込んじゃって……」

「おい待て、嫌な予感しかしねぇぞ」

「ガーディアンとオークが戦い始めたスキに逃げられたんだよね」


 ……マジか。オークたちの冥福を祈るしかないな。


「ほんと、運が良かったんだよ」

「いや、運がいいというか……オークが気の毒すぎるわ」


 彼女の図太さに、俺は感心させられてばっかりだぜ。見た目は華奢でも、根性はある。生き残るための嗅覚ってやつか。


「で、正面突破は無理として……アイツ、冷気をまき散らしてたよな?」

「うん。突進してたオークが一瞬で氷漬けになってた」

「……はい、正面戦闘は論外決定」


 近づけば凍りつき、遠くても赤い視線で見つかる。どう突破すりゃいいんだ。


「音は反応しなかったんだよね?」

「試す価値はあるな」

「じゃあ、呼びかけてみようか」


 俺たちは扉を少し開き、イザベラが鍵を握って待機。

 俺がわざと声を張ったが――反応なし。


「……やっぱり聞こえてないな」

「視界を封じれば、いける……?」


 問題は、どうやって視界を奪うか。


「煙幕があればいいんだけどな」

「そんなの作れるわけないでしょ」

「じゃあ霧は? 冷気と組み合わせれば……」


 その瞬間、俺の頭に電球が灯った。


「おいイザベラ、霧って何でできてるか知ってるか?」

「霧は……霧?」

「違ぇよ。霧は“冷えた湯気”だ。お湯を沸かせば湯気が出るだろ。それが冷やされると霧になるんだ」

「なるほど……でも、お湯は?」

「そこが問題だ……」


 俺が腕を組んで唸ると、イザベラが思い出したように言った。


「日常で使える――」

「便利な魔術100選!!」


 二人同時に叫んじまった。

 クソッ、タイトルがふざけすぎて緊張感が台無しだ。


 だが、背に腹は代えられない。あの本に“湯を沸かす魔術”が載ってる可能性は高い。


「で、その魔導書をどうやって持ち帰るかだが……」

「これを使うの!」


 彼女が得意げに差し出したのは、ボロボロのロープ。


「どこで拾ってきたんだよ、それ」

「オークの寝床跡地。戦利品ってやつ」

「……いや、跡地になったの誰のせいだよ」


 呆れる俺をよそに、イザベラはロープを俺の腰に巻きつけてきた。


「ちょ、ちょっと!? 何してんだ!」

「何って、ルースが本にロープを括りつけて戻ってくれば、私が引っ張れるでしょ」

「おい、俺を便利屋扱いすんな!」

「大丈夫、信じてるから」


 この女……(したた)かだ。だが理にはかなってる。


「分かったよ。危なくなったら絶対引き戻せよ。置き去りにしたら許さねぇからな」

「分かってるって」


 そして俺は再び遺跡へ。


 本棚の陰を伝いながら、目標の「便利魔術100選」へと近づく。

 問題は目標が3段目の棚にあるってことだ。

 俺の身長より高い。だが廃墟での生活を思えば登れない高さじゃない。


 慎重に――と思った矢先。


「あっ……マズッ!」


 手をかけた本がすっぽ抜け、床にドサリ。

 心臓が跳ね上がる。だが、ガーディアンは反応しなかった。


「……音に反応しないってのは本当らしいな」


 安堵の息を漏らしつつ、俺はさらに上へ。

 3段目にたどり着き、例の本にロープを結びつける。


「イザベラ、準備はいいか?」

「いつでも!」


 俺は本を真下に落とした。ドスンと音が響くが、やはりガーディアンは無反応。

 ロープが引かれ、ずるずると本が運ばれていく。


 ……そして。


「やった! 手に入った!」

「よし……!」


 俺たちはついに、初めての魔導書――『日常で使える便利な魔術100選』を手に入れたのだった。


 タイトルのふざけっぷりが気に入らないのはさておき、だ。

 これが俺たちの冒険の、確かな一歩になるのは間違いない。

面白いと思ったらいいねとブックマークをお願いします。

更新の励みになります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ