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ドンゾコナビ ~滅びの世界で少女導く~  作者: 内村一樹
2章:埋め尽くす者

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第57話 オイラにもできること

「どうしてここに!?」

「は? そんなの、このバカでかい化け物を殺すために決まってるだろうが」


 エオウィンは吐き捨てるように言い、オイラから視線を外すと、喉奥の闇を鋭く睨んだ。


「内側からズタズタに引き裂いてやるぜぇ」

「ちょ、ちょっと待ってよエオウィン! そんなことできるワケ―――」

「うだうだうるせぇぞダグ! 邪魔するなら容赦なく殺すぜ?」

「……っ」


 睨まれただけで、心臓がぎゅっと縮んだ。

 ルースたちと過ごして少しは強くなったと思ってたのに、全然ダメだ。


 エオウィンは迷いなく闇へと踏み込んでいく。喉の奥は光一つなく、壁も床も時折うねり、生き物の体内にいるのを嫌でも思い知らされる。


 凄いなぁ。

 恐くないのかな?


 そう思いながらも、気づけばオイラの足は彼の後を追っていた。


 きっと洞窟暮らしが長かったおかげかな、しばらく歩いてると喉の様子がぼんやりと見えるようになってきたね。

 洞窟と違って、獣や魔物の糞とかはないみたいだから、少しだけ歩きやすいかも。


「おい、灯りとか持ってねぇのか?」

「えっ!? あ、ごめんなさい。持ってない」

「ちっ。相変わらず使えねぇ奴だぜ」

「ごめんなさい……」


 二人きりの状態で彼と交わす久しぶりの言葉。

 やっぱり、オイラは何も変わってないみたい。


 怖がりで、不器用で、要領も悪い。

 昔エオウィンに言われたまんまのダメな奴。


 でも――。

 どうして、変われたって錯覚できたんだろう。


 頭に浮かぶのは、欠乏と結合(ユニオン・ラック)


 ルースが心の中にいてくれる感覚。あれが、安心と勇気を与えてくれてたんだ。


 だってルースは、どれだけ危ない状況になっても立ち向かおうとするし。

 オイラを鼓舞してくれるから。


 自分で自分を鼓舞できる人って、凄いよね。

 オイラにはできないや。


 そして今、目の前を歩くエオウィンもまた、恐れを振り払って突き進む強さを持っている。


「ねぇ、この先って危なくないの?」


 思わず声が出た。

 ルースやイザベラに問いかけるみたいに。


 エオウィンの足が止まり、背筋が凍る。

 怒鳴られる――そう思い、目をぎゅっと瞑った。


 だけど、返ってきた声は意外なものだったよ。


「ソヴリンが暴れまわってる森に出て、安全なワケねぇだろうが。こいつは周囲を巻き込むように這いずり回りながら体表で生物を根こそぎ収穫してやがる。おまけにテメェ自身の種をバラまいてんだよ。だったら、こうやって中から攻めるのが唯一の攻略方法ってもんだ。少しは頭を使いやがれ」

「そ、そうなんだ―――って、え? ソヴリン!? もしかしてここって、セイリュウの中なの!?」

「はぁ? 知らねぇで入ってたのか!?」


 知らなかった。

 って言うか、エオウィンは知ってて飛び込んできたの!?

 やっぱりすごいや。


 でもそっか。

 外は外で危ないんだね。

 空を飛べるイザベラたちなら、なんとか逃げ切ってるかな。


 こうしてセイリュウの中を進んでるのも、エオウィンなりの生存戦略みたい。


「それよりもダグ。テメェら何をした? 急にデカいつぼみが枯れ始めたと思ったら、つぼみの中からソヴリンが現れたんだぜ? 確実にテメェらの仕業だよな?」

「それは」

「それから、あの小人はいねぇみたいだが。何を考えてやがる? まさか、お前だけでソヴリンを倒そうとしてたんじゃねぇだろ?」


 ルースがいないことまで気づかれてたんだ。

 そういえばさっき、灯りが無いか聞かれたけどその時かな。


「お、オイラは偶然ここに落ちちゃっただけだから、よくわかってないんだよ」

「偶然落ちただぁ? ちっ。やっぱり使えねぇ奴だなテメェは。せいぜい俺様の盾にでもなってろよ」


 吐き捨てるように言い、彼は再び歩き出す。

 暗闇に足音だけが響く。だがその沈黙が、なぜか少し心地よかった。


 ―――ルースとイザベラが口喧嘩していたときのやり取り。今のエオウィンとの会話は、それに少し似ていた。

 仲良くなれたとは思わない。でも「使えねぇ」と言われても、前ほど堪えなかった。


 貸し、だって思えばいいんだよね。

 それだったら、いつか返せればそれでいいはずだから。


 どれほど歩いたのかな。

 やがて、闇に淡い緑光が混じり始めた。脈打つように明滅し、壁や床を照らす。


 その光に導かれ、オイラたちは辿り着いた。


 天井に半ば埋まった巨大な生命の種。緑に輝く表面に――人の顔が浮かび上がる。


「なにあれっ!?」

「ビビってんじゃねぇよ。あれがなんにせよ、ズタズタに引き裂いちまえば解決だ。足を引っ張るんじゃねぇぞ!」


 そういったエオウィンが、懐から鉄の棒を取り出した。

 多分、魔導遺跡の残骸を拾ってきてたみたいだね。


 エオウィンは鉄の棒を取り出し、構えた。魔導遺跡の残骸らしい。

 種に浮かび上がってる顔の口が大きく開き、声が轟いた。


「欲しいっ!!」

「そうかよ! それなら望み通り、くれてやるぜ!!」


 棒が眉間へ突き刺さり、緑の液が溢れ出す。


 直後、足元が盛り上がり、オイラたちは宙へ跳ね上げられた。


「欲しいぃぃぃっっ!!!」

「うおっ!?」


 眉間から緑色の液体を垂れ流し始める種。

 その様子を見たエオウィンは、未だにうねり続けてる床の反動を利用して、種に突き刺さってる鉄の棒に飛びついちゃった!


「もういっちょくれてやるぜぇぇ!!」

「いいいいぃぃぃーっ!」


 その姿に圧倒されながらも、オイラはナイフを握り直した。


 ――見てるだけじゃダメだ。


 踏み出した先に道があるかどうかは、踏み出してみないとわからない。


 「オイラも……!」


 渾身の力で、種へナイフを突き立てる。


 それができたのは、ルースやイザベラがオイラの背中を押してくれたから。

 そして、エオウィンがオイラの前を歩いてくれたから。


 オイラにできないことをやれる人がいる。

 そんな彼らを見て、踏みとどまってる場合じゃなかったんだよね。

 オイラはオイラにできることを、一つずつ見つけていかなくちゃいけない。


 そしてオイラは見つけたんだ。

 ルースたちとなら、オイラにもできることがある。


 突き立てたナイフ――それはオイラが自分で作ったものだ。

 その事実が、オイラの胸に熱を灯したんだ。

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