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ドンゾコナビ ~滅びの世界で少女導く~  作者: 内村一樹
2章:埋め尽くす者

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第51話 仕組みの塊

 大雨で外に出られない俺たちは、洞窟の中でできる限りの準備を進めるしかなかった。


 まず取りかかったのは、俺の“力”を鍛えることだ。

 幸い、この洞窟の石はイザベラの魔導書:鍛界を通せば金属に変えられる。素材には困らない。


「とはいえ、鉄のナイフと盾を作りまくってても埒が明かないよなぁ」

「そうだね。もう作り慣れすぎちゃって、組み立ててるところを目で追えなくなっちゃってるもん」

「もはや、組み立ててるというより生み出してるって言われた方が納得できるわよ」


 イザベラが呆れ顔を向けてくる。

 事実、鉄を扱う手際はもはや“変化”の域にあった。素材が形を変えるのは一瞬。しかも小さな体のまま、イザベラが実用できる大きさの道具まで作れるようになった。


 組み立てる手(アッセンブル)

 これに関しては十分すぎるほど強化できた。


 問題はその先。

 俺の手にはまだ、組み合わせる手(コンバイン)仕組みの手(ストラクチャー)が残っている。

 だが肝心の使い方が見えてこない。


 ならば整理だ。


組み合わせる手(コンバイン)は……素材の特徴を掛け合わせて新しい素材を生み出す。そういうことか」

「新しい素材? ってことは、このインゴットを組み合わせるってことじゃない?」


 イザベラが鉄のインゴットを差し出す。洞窟の石を鍛えたものだな。


「鉄のインゴットか。で、相手になる素材は……?」

「さぁ」

「これはどうかな?」


 ダグが腰袋から何かを取り出した。

 テーブルに置かれたそれを見て、思わず絶句する。


「……おい、これはなんだ」

「ポイズンスネークの牙だよ。昨日、洞窟の奥で倒したんだ」


  地面に転がった牙は俺の体と同じくらいの大きさ。つまり本体はもっとでかかったはずだ。そんな奴が奥に潜んでたのか。


「や、やるじゃねぇかダグ。ちゃんと倒したんだよな?」

「うん。まだ死骸は転がってると思うから、必要なら鱗とかも採れると思う」

「ダグ……次にそういう危ない奴を見つけたら、すぐに報告してね」

「どうしたのイザベラ? なんか、顔が青いよ?」


 イザベラの顔が青ざめてるぜ。

 ……まぁ当然か。だが俺は素直に感心した。洞窟暮らしで鍛えられたのは伊達じゃねぇ。


「とりあえず、これで試すか」

「どうなるんだろ!?」

「私は距離取るわ。危なそうだし」

「そんな大げさな……」

「失敗したらどうするのよ! ほら、ダグも下がりなさい!」

「オイラ、見たいからここでいいよ」

「本気!? 仕方ないわね。骨は拾ってあげるから」

「縁起でもねぇこと言うなよ!」


 俺は両手で素材を押さえた。鉄のインゴットと蛇の牙。

 深呼吸をひとつ置き、唱える。


組み合わせる手(コンバイン)!」


 ……沈黙。


「なにも……起きないね」

「……もしかしたら、俺の身体が小さすぎるのかもしれないな。ダグ、ちょっと体を借りるぜ!」

「分かった」


 ダグと欠乏と結合(ユニオン・ラック)をして、俺は改めて唱えてみる。

組み合わせる手(コンバイン)!!』


 次の瞬間、ダグの手からまばゆい光があふれた。インゴットと牙が引き寄せられ、ゆっくりと溶け合っていく。


「おぉ!! 2つが混ざってくよ!!」


 金属と牙が光に包まれ、ひとつの塊へと収束していく。

 残されたのは、禍々しい色を帯びたインゴット。


「うまくいった……?」

『ちょっと待てよ。こういうときの見物する瞳(スペクテイター)だぜ』


 視界に浮かんだ文字を読む。

 ――毒含鉄どくがんてつ。強烈な毒を孕む鉄。加工すれば強力な武器になる。


『うまくいったみたいだぜ!!』

「ルース! これでナイフを作ってみようよ!」

『おう! そうだな! やってみようぜ!』


 ダグが歓声を上げてインゴットを持ち上げた、その瞬間。


『待て! 素手で触るな!』

「……がっ……!」


 ダグが泡を吐いて崩れ落ちた。

 イザベラが悲鳴を上げる。


「ダグ!? しっかりして!」

「危ない、下がれ! リカバリー!!」


 俺の治癒と同時に、イザベラが杖でインゴットを押しやった。

 ほどなくダグは息を吹き返したが、冷や汗が止まらない。


「……こ、怖いね」

「そうだな」

「アンタたちが不用心すぎるだけでしょ!?」


 今回は完全にイザベラの言う通りだ。

 だが同時に、確かな収穫もあった。組み合わせる手(コンバイン)の使い方を掴んだのだから。

 残すは仕組みの手(ストラクチャー)だな。


 俺がそんなことを考えてると、不意にダグが言ったんだ。


「こうやって色々作ってたら、あのゴーレムもきっと作れるね!」

「あぁそうだな、あの厄介なゴーレムも……」


 脳裏に浮かんだのは、鉄の魔導遺跡で見た巨大なゴーレム。

 そして――南でスザクを倒した氷のゴーレム。


 俺とイザベラは同時に顔を見合わせ、答えを叫んだ。


「「氷のゴーレム!!」」


 なんで思い至らなかったんだろうな。

 スザクを倒した氷のゴーレム:嘆きの凍界(コキュートス)も、鉄の魔導遺跡で見たゴーレムも。

 良く考えれば、どっちも、“仕組み”の塊みたいな奴じゃねぇか。


 魔導書で発動する最終兵器だとばかり思ってたけど。

 逆なのかもしれねぇよな。


 つまり、仕組みの手(ストラクチャー)を使わないでもゴーレムを作れるようにしたのが、魔導書だとしたら。

 色々と納得できる気がするぜ。

 まぁ、推測でしかないけどな。


 少なくとも魔導遺跡を作った奴なら、きっとゴーレムも作れたはずだぜ。


 1つ疑問があるとしたら、どうしてそんなものを遺したのかってところか。

 ソヴリンに対抗できるようにするため?

 それなら、魔導遺跡の中で守る必要あるのか?


 まぁいい。

 その辺については追々考えていくとしよう。

 それよりもまずは、仕組みの手(ストラクチャー)だ。


 この力の真価に辿り着ければ、道は必ず開ける。

 洞窟に響く雨音を聞きながら、俺は次に試すべきことを心に刻んだ。

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