第5話 突破の糸口
「この先に、まだ突破されてない魔導遺跡があるの」
「ほう?」
「そこにはきっと氷の魔術に関する魔導書があって、それを使えばソヴリンを倒せると思うの」
「なるほどな。氷で火を消すってわけか」
「そう。だから……一緒に突破する方法を考えてほしんだけど」
「もちろんだぜ」
「……ホントに? 本当に手伝ってくれるの?」
当たり前だろ。俺はナビゲーターなんだからよ。
……とはいえ、俺の心臓は変な跳ね方をしてるぜ。
魔導書!? そんなもん、本当にあるのか?
俺、名前は聞いたことあったが実物なんて見たことねぇ。
っていうか、この辺りまで少し前に探索に来たことはあるのに、あんな模様入りの扉なんて見覚えがねぇぞ。
「なぁイザベラ、あの扉ってどうやって見つけたんだ?」
「え? 普通に歩いてたら、そこにあったけど……?」
「……そ、そうか」
やっぱりな。俺じゃなく、こいつに反応して姿を現したんだろう。
自称神様が言ってた“導くべき少女”ってのは、伊達じゃないってことか。
「魔導書を使ってソヴリンを倒す……悪くねぇ戦法だな」
「……じゃあ、ルースは他にどうやって戦うつもりだったの?」
「ふっ。時期が来れば、教えてやらんこともないぜ」
「怪しいなぁ」
おっと危ない。完全にごまかしきれてないみたいだぞ。
でも追及されなきゃ問題なしだ。
「で、イザベラはどこまで入った?」
「一つ目の部屋に入った瞬間にガーディアンに見つかって、それ以上は進めなかったの」
「ほう……つまり偵察役が欲しいわけだ」
「そう。ルース、小さいしすばしっこいでしょ? お願い」
……偵察? 正直ゴメンだが、ナビゲーターって立場的に断りにくいんだよな。
小さい身体を呪ったり喜んだり、ほんと忙しいぜ。
「分かった。行ってやるよ」
「ありがとう! じゃあ扉を開けるね。準備はいい?」
「おう、任せろ」
イザベラが胸元から鍵を取り出し、模様の扉に差し込む。
ギギギと重たい音を響かせながら開いていく扉。
「もし見つかったら早めに知らせてね。この鍵で閉める準備をするから」
「そのまま閉じ込めたりしねぇだろうな?」
「しないわよ!」
「嫌な予感しかしないんだが……」
俺の小声は、当然ながら彼女に届かない。
扉の先に広がっていたのは意外な光景だった。
天井まで積み上がった本、本、本。まさに知識の迷宮だ。
「なんだここ……本だらけじゃねぇか」
「当たり前でしょ? 魔導遺跡なんだよ?」
やっべ。思わず口に出てた。
遺跡のことを知らないなんてバレたら、俺が“普通じゃない存在”だって気づかれるかも……。
ごまかしは慎重にしないとな。
とりあえず積み上げられた本を盾に、奥へと進んでみる。
見物する瞳を発動――すると視界いっぱいに文字情報が溢れだした。
「うおっ、やべぇ。読み取りすぎて目がチカチカする!」
そんなことしてると、腕の文様が光り能力に新たな説明が追加される。
『情報過多を検出。仕分けモードを追加』
「……は? 勝手に進化してんじゃねぇよ」
とはいえ便利だ。試しに「魔導書」と念じると、余分な情報が一斉に消え、残ったのは――1冊。
1つ目の部屋の奥、本棚に収まった本。
「なになに……日常で使える便利な魔術100選……ふざけんな」
まさかの生活ハック本。俺の初魔導書体験がコレかよ。
だが存在するってだけでワクワクする。
「……ま、奥を見てから戻るか」
7割崩れ落ちた扉を抜けると、真っ暗な廊下が三方向に伸びていた。
左は瓦礫で埋まり、右と前だけが道になっている。
そして正面に――赤い光。
ギラリ、と二つの赤い目が輝いた瞬間、俺は慌てて身を引く。
ズシン、ズシンと床を踏みしめながら現れたのは巨体の怪物。
「……あれが、ガーディアンか」
イザベラの倍はある背丈、六本の腕、氷のような冷気をまき散らす存在。
赤い目からは光線が伸び、周囲を舐めるように照らし出していた。
得体の知れない化け物、とはまさにコイツのことだ。
扉周辺をしばらく探り終えると、そいつは元の位置に戻り、再び監視を始めた。
「……正面突破は無理だな」
そう判断して引き返したが――入口にイザベラの姿がない。
「おい、イザベラ!? どこ行った!」
焦って周囲を探すと、大岩の影からひょっこり顔を出す小さな影。
「ひぃっ……あ、ルースか。ガーディアンに見つかったかと思った……」
「おいおい、ビビりすぎだろ」
たぶんガーディアンが動いた瞬間、逃げ出してここに隠れてたんだろう。
まぁ生き延びるには正しい判断だ。
でもな、逃げるだけじゃ魔導書は手に入らねぇ。
「イザベラ。あの部屋を突破するには、正面のガーディアンをどうにかするしかねぇ」
「やっぱりそうだよね……」
俺たちは顔を見合わせ、作戦会議を始めることにした。
――氷の魔導書を求める戦いは、ここからが本番だ。
面白いと思ったらいいねとブックマークをお願いします。
更新の励みになります!!




