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ドンゾコナビ ~滅びの世界で少女導く~  作者: 内村一樹
2章:埋め尽くす者

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第47話 予定外の強敵

 ――調和。


 その言葉を耳にしたのは、ほんの少し前。ライラに見せてもらった本に記されていた。


 森に棲んでるすべての生物がセイリュウの影響を受けてるって話を聞いたせいで、あまり深く考えることができてなかったぜ。


「魔導遺跡と調和が乱れたって話に、何の関係があるって言うワケ?」


 イザベラの声に、場の空気が張り詰める。怒鳴り返すでもなく、全員が自然とエオウィンを見据えた。

 無言の圧――答えろ、という圧力。


 だが、エオウィンは口元を歪めるだけだった。


「へっ。何もかも説明してもらえると思うな。フェアじゃねぇだろ?」


 この野郎、絶対にさっきの当てつけじゃねぇか!

 でもまぁ良い。

 情報を何一つ得られなかったわけじゃねぇからな。


「イザベラ、もう行こう。今日の目的は果たしただろ」

「はっ!? まだ詳しい話を聞けてないじゃない!」

「聞けても、それが真実かどうか分かるか?」

「そ、それは……」

「俺様が保証してやるぜ。全部真実だってな」

「誰がアンタの言葉を信じるもんですか!」

「イザベラ、ルースの言う通りだよ。帰ろう」


 ダグが間に入ってくれて、イザベラも渋々口を閉じる。ダグの表情は落ち着きを取り戻していた。エオウィンと顔を合わせた意味は、これだけでもあったのかもしれない。


「それじゃあ俺たちは行くけど、改めて、邪魔してくれるなよ?」

「それは俺様のセリフだ。テメェらこそ、邪魔するなら殺すぜ」


 火花を散らすように言葉を交わし、俺たちはその場を離れた。


 洞窟へ戻る道すがら、イザベラが不機嫌そうに吐き捨てる。


「私、やっぱりアイツ嫌いだな」

「そうだね、オイラも仲良くはなれないと思うよ」

「もともと誰かと仲良くなる性格じゃねぇだろ」

「それもそうね」

「そうなのかな?」

「ダグは優しすぎるからなぁ。やっぱり相性が悪いんだぜ」

「アイツが底意地悪すぎるだけだと私は思うけどね」

「でも、オイラが一緒に暮らしてた時は、食べ物とか服とか色々分けてくれたよ?」

「それは本当なの!? 信じられないんだけど……」


 イザベラが目を丸くする。ダグの表情から察するに、嘘じゃないらしい。俺の見立てじゃ、それは“利用価値がある”と判断されたってことじゃないかと思う。口には出さないけどな。


「ところで話は変わるんだけどさ、調和の話、どう思う?」

「んー。オイラは正直、よくわかんなかったよ」

「私は……遺跡が崩れたことで、調和が乱れたんじゃないかって思う。エオウィンの言葉も踏まえると」

「俺も同じことを考えてたぜ」


 鉄の魔導遺跡が崩れたことで、この大陸における調和が乱れた。

 そう考えると、いくつかの疑問に筋が通る。


「『鉄の魔導遺跡』がセイリュウの影響を押さえ込んでたなら、崩壊した後にライラやエオウィンが変身し始めたのも納得できる」

「……じゃあ、遺跡が壊れたからライラはあんな風に? どうして?」

「単純な話だ。遺跡がセイリュウの力を抑えてた。壊れたから、セイリュウの力が増した。それだけだ」

「……なるほど。分かった気がする」


 ダグが頷く。そこからさらに踏み込めば、次の可能性が見えてくるはずだ。


「じゃああの遺跡を作り直したら、ライラは元に戻るのかな?」

「そうね。その可能性はあるけど。それじゃあ元に戻るだけな気がするなぁ」

「だな。思い出せよダグ。俺達が目指してるのはなんなんだ?」

「オイラたちは……ソヴリンを倒す! そっか、それじゃあ、魔導遺跡を沢山作れたら、セイリュウを倒せるかもしれないね!」

「そりゃ、それができれば簡単だけどな」


 あれだけデカい魔導遺跡を、そう簡単に増やせるはずがない。

 でも、考え方の方向性としては、間違って無いはずだぜ。


 要は、セイリュウの力を更に抑え込めば、敵を弱らせることができるかもって話だ。


「ねぇルース。ライラさん。どうにかして元に戻せないかな?」

「ん? そうだな。そっちも考えなくちゃいけないよな」


 遺跡を元に戻せば、セイリュウの力を弱めることができるかもしれない。

 でも、変化してしまったライラの姿まで戻るかは分からないよな。


 ところがどっこい、エオウィンは人間の姿に戻ってたんだぜ。

 考えられる原因があるとすれば、1つしか思い至らない。


「生命の種を、取り除く」

「やっぱり、そうなるのよね」


 恐らくエオウィンの姿が元に戻ったのは、生命の種をライラに奪われたから。

 なら、ライラにも同じことをしてやればいい。

 って、言うのは簡単なんだけどな。


「つまり、彼女と戦わなくちゃいけないってことよね、それ」

「そうなんだよなぁ……ここにきて、予定外の強敵が登場するなんて、困っちまうぜ」

「ライラと……戦う!?」

「ダグも見たでしょ? 今の彼女がおとなしく私たちに生命の種を引き渡してくれると思う?」

「それは……無理だね」

「そうなると、強引に奪うしか無いワケだが」


 昨日見たライラの力は圧倒的だった。森の獣たちもツタも、すべてが彼女を守っている。懐に潜り込み、種を探して奪う――正直、絶望的だ。


「戦いにくい相手よね」

「だな」

「戦わずに、種だけ取れないかな……」

「拘束さえできれば、なんとかなるかもだけど。それすら難しそうだぜ」


 種を取るためには、 森全体を敵に回す覚悟がいる。

 こりゃかなり厳しいな。


「作戦会議が必要ね」

「そうだな、それと情報収集もだ」

「オイラ、頑張るよ!」


 どう動くかの輪郭が見えてきただけでも前進だ。

 そう言い聞かせなきゃ、士気が保てない。


 俺たちは洞窟に戻り、次の戦い――ライラ解放の準備に取りかかった。

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