第42話 やっぱりオイラは
イザベラに強く引かれる手を見ながら、胸の奥に小さな棘が刺さった。
やっぱりオイラは――お荷物だ。
ルースやイザベラたちと一緒にスザクを倒したから勘違いしてただけ。結局、肝心な時に何もできない。
ルースの使う瞳の力や、イザベラの魔術、それからライラの使う不思議な力も。
みんな、オイラにはできないことを簡単にやってのけちゃう。
それに比べてオイラは、ただ素早く走り回れるだけ。
それさえあれば、きっとルースたちの助けになれるって思ってたけど。
現にエオウィンは植物人間を操って、オイラと同じように遺跡を縦横無尽に動かしている。
つまり、オイラにしかできないことなんて何もない。
ずっとそうだった。
洞窟での狩りも、アラクネの糸を織ることも、武具の手入れも。
気づけば全部、エオウィンの方が上手になって、オイラは役立たずになっていった。
――太刀打ちできるわけ、ないんだよ。
「次の角は右に曲がります!」
「分かりました! ダグも! 聞いてるよね!?」
「……うん」
返事をした瞬間、足がもつれて転び、イザベラの手が離れた。
「ダグ!?」
「イザベラ様! 急いでください!」
「分かってます! ほらダグ! 早く立って!! 奴らが来てるから!」
必死に立ち上がった背後で、氷の柱がせり上がる。
「これで少しは時間を稼げますね! さぁ、急ぎましょう! 魔導書はもうすぐそこですよ!」
「ありがとうございますライラさん! って、もう氷にひびが入ってるし!! 急ぐよダグ!」
階段を駆け上がると、広い部屋が現れた。中央の書見台には分厚い本が鎮座している。
ライラが本棚で入口を塞ぎ、イザベラが本に目を通す。だがすぐに顔色が変わった。
「そんな……嘘でしょ?」
「どうかしたのですか?」
「こんな魔術じゃ、セイリュウどころか植物人間も相手できないじゃん!」
使い物にならないよ。
イザベラがそう言ってうなだれた時、本棚を叩く轟音が鳴り、植物人間が雪崩れ込んできた。
「迎え撃つしかないですね」
「仕方ない! 行くわよダグ!」
「う、うん!」
それからオイラたちは、階段から入り込んでくる植物人間たちを食い止めるために、戦ったんだ。
おかげで、新しく使ったナイフの切れ味がどんどん悪くなっちった。
でも、氷柱と髪の鞭を組み合わせて戦うライラがいるから、全然負ける気はしないね。
それに、イザベラが階段を凍らせてくれたおかげで、敵の侵入もかなり抑えることができてる。
「だいぶ片付けることができたみたいね! 二人とも無事?」
「私は大丈夫ですよ」
「オイラも、大丈夫」
「ならよかった」
一息ついた矢先、遺跡が揺れた。
「なっ!? なに!?」
「皆さん! 上を見てください!!」
天井に亀裂。そこから無数のツタが侵入し、鉄をこじ開けていく。
姿を現したのは――エオウィン。
「見つけたぜ! 魔導書は大事に抱えとけよ。死体から探す方が楽だからなぁ!」
「アイツ! ホンっとにムカつく!」
「イザベラ様、それよりも今は逃げましょう! 彼が上にいるということは、下から逃げれるはずです!」
「おぉっと! そう簡単に逃げれると思わねぇ方がいいぜ!? 大体、俺様が何も考えずにこんなことをしたと思ってやがるのか?」
「何を言ってっ!?」
亀裂を広げて侵入して来ようとするエオウィン。
そんな彼を見上げてたオイラたちは、直後、足元から響いてくる振動に気づいたんだよ。
「何かが、近づいてきてる?」
「……もしかして、ルース! まさかゴーレムが動き始めたとかじゃないでしょうね!」
「残念ですが、どうやらその様だ。とルース様は言っています」
「どういうこと!? イザベラ、ゴーレムは動かないんじゃなかったの?」
「多分だけど、あの男が無理やり天井に穴を開けたから、動き出したのかもしれない。どちらにしても、私達も狙われると思うから気を付けて!」
彼女がそう言った直後、足元に振動。階段の本棚が切り裂かれ、爆ぜ飛んだ。
現れたのは緑光を放つ細身のゴーレム。
四本の脚、八本の腕。金属の鎧に鋭い剣を構え、こちらを睨みつけてる。
緑の瞳がこちらを捉え、殺気が迸る。
「さぁ―――お手並み拝見だ! くれぐれも、魔導書を切り刻まれてくれるなよ?」
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