第37話 新しい力
ライラの棲家から北東へ二日。
森のただ中に、場違いなほど無機質な魔導遺跡があるらしい。
「見ればわかるはずですよ」
ライラはそう言ってた。
……そう言われると、ますます早く見に行きたくなるじゃねぇか。
けど二日って結構遠い。
つまり、準備は必須ってことだ。
だから俺たちは即出発はやめて、とりあえずライラが出してくれた果実で腹を満たすことにした。
名前はキーツマンゴー。でかい実の中に「生命の種」が埋まってて、それを取り除いてから食うんだと。
「んぅぅ! これ、すっごく甘い!」
「だな。……俺には甘すぎるけど」
「ルース、好きじゃないの? オイラは好きだよ!」
「わりぃな。俺は大人だから、ケイブベリーくらい酸味がある方が好みなんだよ」
もちろん理由はもうひとつ。
森のものを食えばセイリュウの影響を受ける―――そう聞かされた後だ。素直に果物を喜べるかってんだ。
しかも俺の身体は小さいぶん、影響が強く出る可能性だってある。慎重になるさ。
で、みんなが果実を食ってる間に、俺にはやりたいことがあった。
そう、新しい力の確認だ。
「なぁイザベラ。例の鍵を貸してくれねぇか?」
「ん? どうして?」
「これだよ」
俺は左腕を見せる。
そこには新しく刻まれた、欠乏の文様。
「あっ……そういえば、光ってたね」
「だろ? 力が増えたなら、早めに解放して慣れといた方がいい」
「確かに」
「ルース様とイザベラ様、何を?」
「ルースはね、不思議な力を持ってて、それがまた強くなったの!」
「なるほど、ありがとうございますダグ様」
「雑な説明だが、まぁ間違っちゃいねぇ」
「ちなみに、どんな力なのですか?」
「えっと……」
そういや名前すら確認してなかったな。
たしか「手」を選んだはず。自称神様から「本当にいいんですか?」なんて念押しされて、ちょっと迷ったっけ。
「欠乏の文様:組み立てる手っていう力だ」
「アッセンブル?」
「説明だと『材料を適切に組み立てることで道具を作れる』らしい」
「……それ、当たり前じゃない?」
「おいおいイザベラ、そこから化けるかもしれねぇだろ? 超便利な力になるかもしれないぜ」
「まぁ……そうね」
「なんだかワクワクしますね! それで、どうやって解放するんですか?」
「ライラさん、やけに上機嫌ですね」
「だって、こういう瞬間に立ち会うの初めてなんです! 皆さんは普通なんですか?」
「私も三回目くらいかな」
「気にすんなライラ。イザベラはこういう時、ちょっと斜に構えたいお年頃なんだ」
「あ~そういうことなんですねっ!」
「むっ……!」
イザベラは不満げに唇をとがらせながらも、胸元から叡智の鍵を取り出した。
俺は左腕を突き出し、鍵穴のような模様へ鍵を添える。
ゆっくり差し込み、回す。
その瞬間―――左腕が眩く光った!
「おぉぉ~」
「な、なんですか!? 何か起きたのですか!?」
「ルースの左腕が光ったんだよ!」
「光ったのですか……それはぜひ見てみたかったです」
ライラが肩を落とす。
ダグはといえば、ライラがしょんぼりしてる理由がよくわかってねぇみたいだし。
しかたねぇ、ダグと後で話をしておこう。
それよりも、だ。
俺は光の収まった左腕に、見物する瞳を発動する。
すると、さっき確認できてた組み立てる手の他に、別の力を2つ確認することができたぜ!
1つは、組み合わせる手。
材料同士の性質を掛け合わせて、新しい材料を作れるらしい。
もう1つは、仕組みの手。
道具に思い通りの役割を与える仕組みを構築できるって話だ。
「……難しそうだが、使いこなせれば便利そうだな」
「ちょっとルース! なに一人で納得してんのよ! どんな力なのか説明しなさいよ」
「いや、使ったことねぇから細かくは分からん」
「なら、皆で考えましょう。理解も早いはずです」
「それもそうか」
俺は三人に見えた情報をそのまま読み上げた。
案の定、イザベラもダグも首をひねるばかり。
ただ一人、ライラだけが黙り込んで考え込んでいた。
「ライラさん、何かわかる?」
「う~ん……まず“材料”が何を指すのか、はっきりさせないと駄目でしょうね」
「木の枝とかでいいんじゃねぇか?」
「石とか葉っぱも?」
「分かんないわね。とりあえず試してみたら?」
ごもっとも。
結局、試行錯誤するしかなさそうだ。
見物する瞳と同じく、使えば使うほど便利になるハズだしな。
そうして俺たちは食事を終え、森へ出ることにした。
目的は2つ。
1つは俺の組み立てる手に使えそうな材料を集めること。
もう1つは、遺跡探索に向けての準備だ。
「わぁ~、今すっごく楽しいです! 頑張りましょうね!」
ライラが気合を入れる。
まさか一緒に来る気じゃねぇよな?
……と思ったら、そのまさかだった。
本当に逞しい人だよ、彼女は。
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