表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドンゾコナビ ~滅びの世界で少女導く~  作者: 内村一樹
2章:埋め尽くす者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/103

第36話 調和を愛する心

『大地に根を張り、枝葉を広げる植物。

 彼らが得られるものは、空から降り注ぐ陽光と雨のみ。

 だからこそ、葉で光を集め、根で水を吸い上げて生きている。


 その場から歩き出すこともなく、ただ命を蓄える。

 やがて巡り巡って、人間はその命を食すのだ。


 だからこそ人は感謝せねばならない。

 そして、調和を乱してはならない。


 火炎と暴虐を結びつけてはならず、

 流水が怠惰で淀んではならず、

 鉄壁に背信があってはならず、

 森林に貪欲があってはならぬのだ。


 かつての過ちを正すため、ここに記す。


 すでに遅いかもしれないが。

 いつの日か調和を愛する心を持った者が現れることを願って。 』


 ……とまぁ、やたら仰々しい文体で綴られたその文章。

 ライラが「ぜひ読んでほしい」と取り出してきた古い本に記されていた内容だ。


 聞けば、彼女が幼いころ、誰かに読み聞かせてもらっていたらしい。

 親なのか、別の誰かなのかは分からねぇけどな。


「なんだか、分かりにくい内容ね」

「だな。『調和を愛せ』ってのは分かるが、具体的に何をしろってんだ?」

「私もすべて理解できているわけではありません。ただ――ひとつだけ確かなことがあります」


 ライラはツタを操って果実を手元へ呼び寄せ、それを割ってみせる。


「この森は生命を育む場所。そして、森に棲む私たちは必ずその命を食べる。つまり――」

「食べなきゃ死ぬ、って話だろ?」

「なんかオイラ、お腹減ってきたぁ」

「ちょっと我慢しなさい。ごめんなさい、ライラさん。続けて」

「ふふ、大丈夫ですよ。あとでたくさん用意しておきますね」


 穏やかに微笑んだ彼女は、手にした果実を掲げて言った。


「先ほど話したように、この大陸のすべての生物はセイリュウの影響下にあります。なぜなら――森が育む命そのものが、セイリュウだからです」

「へぇ、森がセイリュウ……って、はあ!? どういうことだ!?」

「森の植物が全部ソヴリンってこと!?」

「植物だけではありません。その植物を食べた獣も、さらにその獣を食らった生き物も――すべてです」


 ……とんでもねぇ。

 要するに、この大陸全体がソヴリンそのものってわけか。


「で、デカすぎる……」

「はい。セイリュウとは、それほどの存在なのです」


 ダグが口をあんぐり開けて固まるのも無理はねぇ。

 たしかに「勝てない」と言い切ったライラの言葉も理解できる。


 だが、俺たちは諦められねぇんだよ。

 なにしろ“自称神様”に倒せと言われてるんだからな。

 倒す方法があるはずだ――そう思ったところで、イザベラが口を開いた。


「セイリュウを倒す手段……何か存在しないんですか?」

「ふふ。同じ話をしても、反応は全然違うのですね」

「え? それはどういう意味?」

「イザベラ様も、ルース様も……諦めてはいないご様子」


 まただ。

 まるで心を読まれてるような感覚。


 だが俺が疑問を抱くより先に、イザベラが核心を突いた。


「まさか、私たち以外にも誰かがここに?」

「えぇ。正確な時期は覚えていませんが、以前、とある方々が森にやって来ました」

「マジか!」

「はい。その方々にも同じ話をしました。すると……嬉々として森の奥へ入っていったのです」

「どうして? 普通なら怖がるでしょ?」


 ライラは少しだけ声色を変え、誰かを真似るように言った。


「―――“ソヴリンの力は俺様のものになるぜぇ”」

「……マネする必要なくね?」

「すみません、その方の雰囲気が伝わるかと思って」


  思わず苦笑するイザベラ。けど、真似は正解だ。

 その一言で、俺たち全員が察したからな。


「やっぱり……あの巨木の化け物も、元は人間だったんだな」

「アイツ、大っ嫌い。で、ダグ。あいつとはどういう関係?」


 突然矢を放つみたいな質問に、ダグは渋い顔をして答えた。


「あの人は……エオウィン。オイラが昔お世話になってた人」

「お世話にって、ダグのことしいたげてたって感じじゃないの?」

「オイラが役に立てなかったから、す、捨てられ……ちった」

「やっぱりクズじゃない!」


 ……なるほどな。

 ダグの器用さや生存力は、皮肉にもそのクズのおかげかもしれねぇ。


「待って。私がダグに会ったのは2年前よね? その時すでに一人だった……じゃあ、ずっと1人で?」

「うん」


 2年も。よくぞ生き延びたもんだ。

 怒りに震えるイザベラを横目に、俺は気になっていたことを口にした。


「なぁライラ。森のものを食べると……俺たちも巨木の化け物になるのか?」

「っ!?」


 イザベラとダグが驚いて振り返る。だよな、気になるだろ?


「私は見たことがありませんが……可能性はあると思います。セイリュウの力を望んだ結果、あの方は姿を変えたのでしょう」


 そう言ってライラは、手にしていた果実を口へ運ぶ。


「あっ……!」

「食うのかよ」

「えぇ。私はもう長く森で暮らしていますから。もし気になるのであれば……」


 そう言うと、果実をほじり、中から小さな緑色の種を取り出した。


「これが生命の種です。果実全体にも影響はありますが、この種に比べれば小さい。心配なら、これを取り除いてください」

「なるほど。助かるぜ」


 ライラは果実を食べ終え、指についた果汁を舐め取りながら話を戻した。


「それから、そろそろお話を元に戻しましょうか」


 そういえば、エオウィンとダグの話に逸れてたな。


「セイリュウを倒す方法、でしたね」


 そう言ってから、残りの果実を一息で食べきったライラ。

 指に付いた果汁を舐めとる彼女の姿に、俺たちは視線が外せない。


「倒せるのかどうかは分かりませんが、1つ、このような話を聞いたことがあります」

「些細なことでも大丈夫だから、何か知ってるなら教えて欲しいです!」

「もちろん教えて差し上げますよ。だから落ち着いてください、イザベラ様」

「ライラの言うとおりだぜ。落ち着けよイザベラ」

「う、うっさいわね」


 言い争う俺たちの声を聴いて微笑んだライラ。

 そして彼女は告げたんだ。


 短く、簡潔にな。


「皆さん、魔導遺跡と呼ばれるものをご存じですか?」

面白いと思ったらいいねとブックマークをお願いします。

更新の励みになります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ