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ドンゾコナビ ~滅びの世界で少女導く~  作者: 内村一樹
2章:埋め尽くす者

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第32話 俺様の獲物

 背の高いこの木は長いツタを使って動物を捕まえ、死骸しがいを根元に落とすことで自身の養分にしてるみたいだ。


 つまり、イザベラは危うく気の養分にされるところだったってわけだな。

 恐ろしい話だぜ。

 でもまぁ、それがここのルールってことなのかもしれねぇな。


「で、あの鳥はどうするの?」

「助けようよ」

「そうだな、ダグの言うとおり助けてやろうぜ」

「もちろん助けるのには賛成だけど、私が言ってるのはどうやって助けるかって話」


 イザベラが吊るされた枝よりもはるかに高い場所に吊るされている薄緑色の鳥。

 俺達には気づいてるみたいだけど、身じろぎ一つしないほどに弱っちまってるみたいだぜ。


「ダグ、あそこまで登れそうか?」

「う~ん。ちょっと時間かかるかも」

「いったん地面に降りて、氷の塔を建てるのはどう?」

「それでこの木ごと倒したりしないって自信があるなら、それでもいいんじゃねぇか?」

「あぁ……やっぱりやめときましょう」


 きっとイザベラは、火炎の塔が崩れる光景を思い出したに違いない。

 確信があるわけじゃねぇけど、そうなっちまう気がするんだよな。


 かといって、小さな氷柱でチマチマと登ってたんじゃ時間がかかりすぎるからな。

 やっぱり、ここはダグに任せた方がいいだろう。


「イザベラはどうする? ここで待っておくか?」

「ううん。下に降りとくよ。ツタを使えば降りれるから、2人は早く助けに行ってあげて」

「分かった。それじゃあダグ、行こうぜ!」


 木の幹と垂れてるツタを使いながら降り始めたイザベラを見送った俺たちは、改めて欠乏と結合(ユニオン・ラック)を発動した。


 なるべく太い枝を辿たどりながら上を目指す俺達。

 途中、氷柱突(アイシクル・スラスト)で即席の足場を作りながら、俺たちはようやく目的の枝までたどり着いた。


『ひえぇぇぇ……こりゃ高いなぁ』

「ルース、この枝、折れないかな」

『ちょっ、怖いこというなよな!?』


 でも確かに、ダグの体重に加えて薄緑色の鳥まで枝に吊るされてるんだよな。

 そう考えると、足元の枝が心もとなく見えてきたぜ。


『……念のため、まずは俺があの鳥の拘束をいてみるぜ。鳥だから、ツタさえほどければ自分で飛べるはずだろ』

「うん。分かった」


 欠乏と結合(ユニオン・ラック)が解除されるのを待った俺は、ツタを腰に巻き付けてから枝の上を進んだ。

 俺だけなら、細い枝でも折れることはねぇだろ。

 それにもし足を滑らせちまっても、ダグがツタを持っててくれるから安心だぜ。


 枝から垂れてるツタを掴み、鳥の身体に降りる。

 あとは鳥の身体を縛り付けてるツタを切ってやればいいんだよな。


 とりあえず、氷柱突(アイシクル・スラスト)で小さな氷柱つららを生み出して、切ってみるか。


「もう少しだからなぁ、ちょっと我慢しててくれよ」

「クエェ」

「お、返事できるのか。賢い奴じゃねぇか」


 ブチブチッと切れていくツタ。

 すると拘束が緩んだことを感じたのか、鳥が翼を広げようと身じろぎをする。


 ガクンと強い振動を感じた俺が慌てて腰のツタを握りしめた瞬間。

 吊らされてた鳥が落下し始めちまった!!


「ヤバッ!?」

「ルース!!」

「ダグ! 俺のツタを切れ!! まだ完全にほどけてねぇんだよ!!」

「でも」

「早くしろ!」


 焦る声に押され、ダグは俺を繋いでいたツタを切った。直後、俺の身体も空へ投げ出される。


 鳥はいくつもの枝に衝突しながら落ちて行ってるおかげか、まだそれほど落ちてないみたいだぜ!


「間に合えっ!」


 小さな俺の身体は、枝をすり抜けながら急降下する。

 やがて鳥のふわふわの羽毛に追いつき、しがみついた。


 氷柱で最後のツタを切り払うと、視界いっぱいに羽毛が広がり、力強い羽ばたきが響いた。

 成功だ。鳥は自らの翼でゆっくり降下を始めた。


 背中に乗ったまま見上げれば、ダグが枝を飛び移りながら降りてきている。地上では、心配そうなイザベラが手を胸に当てて見上げていた。


 無事に救えた。それだけで胸が軽くなる。


 地面に降り立った俺はイザベラの頭へ飛び移り、改めて鳥を見やった。近くで見ると意外と大きい。ダグやイザベラが背中に乗れるほどだ。


「ほら、食べなよ」


 イザベラが差し出したケイブベリーを、鳥は警戒しながらも啄んだ。すぐに気に入ったようで、次々と口に運ぶ。


「デッカい」

「だな。それに、羽がフワフワで気持ちよかったぜ」

「なによその感想! それよりこの鳥、人を知ってる感じがしない?」

「どういう意味だ?」

「だって、逃げ出そうとしないじゃん」

「そういわれてみればそうだな」


 普通なら警戒して飛び去ってもおかしくないのに、落ち着いたまま俺たちのそばにいる。不思議な安心感すら漂わせていた。


 ―――そのときだった。鳥がピクリと硬直し、森の一点を鋭く睨んだ。


「おい、なんか様子がおかしくねぇか?」

「そうね、なんだか怯えてるみたい」

「もしかして、アブねぇ奴が―――」


 俺が言いかけた瞬間、枝葉をかき分けてそれは姿を現した。


 巨木のような胴体、根や枝葉でできた四肢。頭頂からは無数のツタがウネウネと動き、その正面には人の顔を歪めたようなものが埋め込まれている。

 吐き気がするほど異様で、目を逸らしたくなる。


「な、なんだよ……コイツ……」


 イザベラもダグも、即座に身構えた。俺の中でも警鐘が鳴り響く。見ただけで分かる。これはやばい相手だ。


 逃げるか――そう思った矢先、化け物が口を開いた。


「俺様の獲物を奪うのは誰だぁ……んぁ? おやおやぁ? 見た顔が混じってんじゃねぇか」


 しゃ、しゃべった!? しかも「見た顔」って……誰のことだ?


 まさかと思い、イザベラとダグを見る。次の瞬間、俺は理解した。


「ダグ! どうしたんだ!?」

「ぁ……ぁ……」


 ダグの全身が小刻みに震えていた。恐怖というより、記憶を抉り出されたような反応。


「おいダグゥ……てめぇ、俺様の獲物を横取りしようとしてんじゃねぇだろうなぁ? お仕置きのこと、忘れたわけじゃねぇよなぁ? てめぇは俺様に逆らっちゃいけねぇんだぜぇ……」

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