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ドンゾコナビ ~滅びの世界で少女導く~  作者: 内村一樹
1章:焼き殺す者

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第30話 立ちはだかるのは

 俺たちがソヴリン――スザクを討ってから、もう二か月が経った。


 その間ずっと、東へ東へと歩き続けてきた。旅と呼ぶより、ただの移動だな。


 行く先々に残っていたのは、黒く焦げた荒野。見渡す限り、焼け跡しかない。数日は「地下を掘って進んだ方がマシじゃねぇか」と本気で思ったほどだ。


 けれど一週間もすれば、俺たちの考えは変わった。空模様が変わったからだ。


 分厚い黒雲に覆われていた空に、少しずつ青がのぞく。

 なぜあれほどまでに長く曇り続けていたのか――答えはスザクにあった。


 七日間かけて大陸を飛び回り、大地を焼き続けていたあの化け鳥。舞い上がった膨大なすすが、黒雲の正体だったらしい。


 だが、もうあいつはいない。俺たちが討ち果たしたんだからな。


 焼け跡に雨が降り、雲が晴れて虹が架かる。そんな光景を見て、初めて実感が湧いた。――ソヴリンを一体、本当に倒したんだ、と。


 イザベラもダグも、こんなふうに空をゆっくり眺めたことはなかったらしい。だからこそ、二人にはしっかりと味わってもらったぜ。


 そんな2か月間の旅を、俺たちはただ遊んですごしたわけじゃないぜ?

 スザクとの戦いの中で得た新しい疑問を、共有したんだ。


 一番の謎は――スザクを落としたあと、突如現れたあの騎士。

 巨大な翼を持ち、スザクと深く関わっているように見えた。だが、正体は結局わからずじまいだ。見物する瞳(スペクテイター)で確認する余裕すらなかった。次は必ず見極める。それが俺の反省点だ。


 もう1つの疑問が、嘆きの凍界(コキュートス)

 魔導書の名前と同じ術を使ったが、書のどこにもそんな魔術の記述はない。ただタイトルがそれを示すだけ。もしかすると、あの本そのものが術を発動させるために造られたのかもしれない。


 そして最後に――俺の中へ吸い込まれた、あの光。

 正体不明すぎて推測すらできない。最初は「スザクの魂が宿ったのか?」なんてワクワクしたが、文様に変化はないし、新しい力も感じない。翼でも生えてくれりゃ話は別なんだが。


「ま、俺にはお前らっていう最高の足があるしな」

「誰が足よ!」

「オイラは手になりたい!」


 冗談を飛ばし合いながらも、荒野の景色には飽き飽きしていた。食料探しも骨が折れる。だから、数日前の俺は「そろそろ新しい景色を拝みてぇ」なんて思っていた。


 ――そしてその願いは、思ったより早く叶った。


「すっげぇ~!! ルース、イザベラ! あれ全部水だよ!!」

「これは……もしかして、海なの?」

「どうやらそうみたいだな」


 岩場に砕ける波の音。果てしなく広がる青。

 その先に、かすかに陸影が見える。あれが東の大陸か、それともただの島か。今ここで考えても分かりゃしない。


 問題は――どうやって渡るかだ。


「泳いで渡れるような距離じゃなさそうだし」

「オイラ、泳げないよ」

「安心しろダグ。俺も泳げる気がしねぇよ」

「ルースの場合、私たちの何倍もの距離を泳ぐ必要があるもんね」


 自力は不可能。いかだを作ろうにも、木材なんて一本もない。布で舟を作る? さすがにダグの布じゃ沈没一直線だ。


「氷で道を作るのは?」

「そうだな。それが一番現実的かもしれねぇ。でも……」


 俺たちの視線が海へ注がれる。


 ドン、と水柱。遠くの海面から、巨大な尻尾が一瞬だけ覗いた。


「なっ……でけぇ!!」

「あれに見つからずに渡るのは……さすがに無理かな?」

「だろうな。氷で道を作ったとしても、あっという間にぶっ壊されて海中に落ちるのが予想できるぜ」

「じゃあどうする?」


 渡り方の議論は堂々巡り。結論は出ず、イザベラがきっぱり言い切った。


「今日はもう休みましょう。疲れてる時に考えてもロクな案は出ないわ」


 彼女のその提案に乗る形で、俺たちは休憩をとることにした。


 夜。布にくるまって休んでいた俺たちは、暗闇にぼんやり光るものを見つけた。


 「……洞窟?」


 近づくと、内部で小さな光を放つ虫が舞っている。幻想的な光景に導かれるように、ライトアップで中を照らして進む。


 そこで俺たちが見つけたのは――


 一面の緑。


 洞窟を埋め尽くすほどの、鬱蒼とした森だった。


「こりゃ……どう見ても自然の産物じゃねぇな」


 俺は二人に推測を口にする。


 スザクが大地を焼き尽くしたように、東の大陸のソヴリンは植物で世界を覆っている。

 その影響が洞窟を通じてここまで広がってきているんじゃないか、と。


 実際のところがどうなのか、それはやっぱり、この洞窟の先に進まないとわからねぇけどな。



 ―――かくして物語は次の章へと紡がれる。

 立ちはだかるのは『埋め尽くす者』。


 小さな一歩を踏み出したルースたち。


 そんな彼らの行く先に待つ者が1人、光を失ったその瞳で空を見上げていた。

 うねりのある長い髪を風になびかせ、その者は呟く。


「神様……どうかあの子を守る力を、癒す力を、私にお貸しください」


 かすれるようなその声は、誰にも届かない。

 そもそも、その者は声を誰かに届けようとはしていないのかもしれない。


 東の大陸には彼女以外の人間はいないのだから。

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