第29話 3つの秘密
「ソヴリン討伐、おめでとうございます!」
「……あれ? 俺、どうしてここにいるんだっけ?」
気がつけば、またあの白い靄の世界。
扉を見つけた覚えはない。つまり――今回は自称神様のほうから接触してきたらしい。
まぁ、どっちでもいい。せっかくだ。少しでも情報を引き出してやる。
「考え込んでますね。ソヴリンを倒せたんですから、もっと喜んでいいのですよ?」
「そりゃ嬉しいさ。でも、喜ぶならイザベラとダグと分かち合いたい。あんたじゃなくてな」
「え? それはつまり、私とは喜びを分かち合いたくないと?」
「拒絶してるわけじゃねぇ。ただ、アンタには別に聞きたいことがある。質問のほうが先だ」
俺がそう言うと、自称神様はふっと笑った。
「いいでしょう。ご褒美として、一つだけ答えてあげます」
「お、本当か!?」
「えぇ。ただし一つだけ。しかも答えられないものもあります」
「なんでもじゃないってわけか」
「当然です。乙女には隠しておきたい秘密が山ほどあるんですから」
乙女ねぇ……。
「じゃあ、答えられない質問をした場合は無効ってことでいいんだな?」
「そうですね。あ……でもそれだと、私が隠している秘密を探る手掛かりになってしまいますね」
「ちっ」
「ふふっ。仕方ありません、3回までは秘密を探る質問を許しましょう」
なるほど。4つまで試せるってことか。
下手に時間をかけりゃ切り上げられる。さっさといく。
「まず1つ。アンタはどんな神様なんだ?」
「秘密です。これで1つ目」
「2つ目。どうしてソヴリン討伐をさせようとしてる?」
「秘密です。2つ目ですよ」
「3つ目。なんで俺がイザベラのナビゲーターに選ばれた?」
「……秘密、かな。3つ目です」
……ん? 3つ目だけ妙に間があった。
俺が選ばれた理由に、なにか深い事情でもあるのか。
まぁ教える気はねぇだろうが、3つ並んだ秘密の1つってだけで意味があるはずだ。
適当や偶然じゃなく、理由がある。
それが分かっただけでも収穫だろう。
「じゃあ最後だ。俺の前世のことはイザベラたちに話すなって言われてるが……あれって、もしあいつらが自力で気づいたらどうなる?」
「その場合は咎めませんよ。本当に自力なら、ね」
「なるほど。なら俺が無理に阻止する必要もないわけだ」
「はい。もっともルースさんの場合、阻止しようとすればするほどボロを出しそうですけど」
「ぐっ……反論できねぇ」
たしかに何度も危ないことがあった。
変に誤魔化すより、自然にしてたほうがマシかもしれねぇ。
「さあ、ご褒美はここまで。次の任務を伝えましょう」
自称神様が大きく息を吐き、声の調子を変える。
「ルース。東の大陸を目指しなさい。そして次のソヴリンを討つのです。検討を祈っていますよ」
「東の大陸……?」
そもそも今いる大陸がどこなのかすら知らねぇんだけどな。
そう考えているうちに、白い靄が薄れていく。意識が地上へと戻っていった。
「ルース!!」
「ルース!? 大丈夫なの!?」
目を開けると、イザベラとダグが心配そうに覗き込んでいた。
どうやら俺は嘆きの凍界で騎士を氷漬けにした直後、気を失っていたらしい。
「ん、おぉ……大丈夫だ。ほら、元気だろ」
腕をぶんぶん振って見せる。実際、違和感はない。
だが二人の表情は晴れないな。
「……おい。俺が気絶してる間に、何かあったな?」
「それは……」
「落ち着いて聞きなさいよ」
そう前置きをしたイザベラが話し始める。
氷漬けにされた騎士の身体が、2つの光に変わって弾け飛んだという。
1つは赤く燃える光。これは空へ消えていった。
もう1つは、火炎の塔の周囲を飛び回り――気絶していた俺の体へ吸い込まれていった、と。
「はぁ!? 俺に!?」
「うん……間違いない」
「オイラも見たよ」
マジかよ!?
でも、見物する瞳とかで見ても、特に変化ないんだよなぁ。
くそ、これは次に神様に会ったとき必ず聞くべきだな。
モヤモヤは残るが、とりあえず前進だ。
崩れ落ちた火炎の塔の跡地に、俺たちは2つの石碑を建てた。
1つは、3人でソヴリンを討ち倒した記念碑。
もう1つは、バルドの墓。
風に舞う砂の中、並んだ二つの石碑を見上げながら、俺は拳を強く握った。
次は東の大陸――待ち受けるソヴリンが、どんな化け物だろうとな。
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