第28話 1体目:焼き殺す者
俺とダグがスザクの異変に気づいたのは、まだパラシュートで降下している最中だった。
砂埃を突き抜け、視界に映ったのは――スザクの体を破って現れた騎士。
「ルース! なにあれ!?」
『俺が知るかよ!? でも、味方ってわけじゃなさそうだぜ』
「じゃあ、イザベラが危ない?」
『急ぐぞ! 早く下りたりできないのか!?』
「できないよ!」
『だったら切り離せ! この高さなら飛び降りても死にゃしねぇ!』
「やってみる!」
ダグは迷わずパラシュートを外した。
眼下の瓦礫の斜面を利用して、うまく衝撃を逃がし着地する。
やっぱり器用なやつだ。
俺たちはそのまま走り、ギリギリのところでイザベラを騎士の一撃から救い出す。
突き飛ばしたのは後で謝るとして――今は目の前の騎士に集中するしかない。
『ダグ! ヤツの注目を集めろ! イザベラが魔術を使う隙を作ってやるんだ!』
「うん!」
騎士は背に巨大な翼を持ち、振るう大剣からは熱線が迸る。
間違いない、スザクと繋がっている存在だ。
ならば俺たちが囮となり、イザベラに決定打を託すしかない。
不安は拭えない。だが体を止めている暇なんてなかった。
『ダグ! 奴が剣を構えてるぞ!!』
「見えてるっ!!」
『これを使え! 氷柱突!!』
出現した氷柱を掴んだダグが、全力で投げつける。
狙いは騎士の大剣。
氷柱が弾け、わずかに体勢が崩れる。
その隙に振り下ろされた斬撃が砂を裂き、視界が晴れた。
「ダグ! ルース!」
「イザベラ!! オイラたちが注意を引くから! 離れて!!」
言いながらも、ダグは再び氷柱を掴んで投げる。
だが騎士の鎧は硬すぎた。ほとんど傷一つ付かない。
やはり決定打はイザベラの魔術だ。
俺たちの挑発に反応して、イザベラは距離を取る。
彼女の背を視界の端に捉えつつ、俺とダグは騎士と向き合った。
「強そう……」
『何言ってんだダグ。さっきのスザクに比べたら小物だろ。俺達ならやれるさ』
「うん、そうだね! きっとそうだぜ!!」
そう口にしつつも、内心は違った。
騎士の気配は圧倒的だ。
翼が広がる。空気が唸り、砂埃が吹き飛ぶ。
次の瞬間、奴は突風をまとって突進してきた。
「うわっ!?」
『アブねぇ!! ギリギリだったぞ!? 大丈夫かダグ』
「あいつ、速い……」
『だな。油断するなよ』
速度も、剣の威力も、桁違い。
氷柱程度で受け止めれば一瞬で粉砕される。
「次、来るよ!」
連続の斬撃。俺たちはなんとか避けるが、息が詰まる。
やがて騎士は大剣を構えたまま力をため始めた。
『何かくるぜ!』
「ん」
緊張が走る。
翼が羽ばたき、炎をまとった剣が薙ぎ払われた。
風と炎が絡み合い、巨大な鳥の形を成す。
「なんだ、炎なら―――」
『バカッ! 炎の中に羽も入ってるぞ!!』
無数の燃える羽が渦を巻き迫る。
俺は見通す瞳で逃げ場を探し。即座に回避しようとした、その時。
―――体が浮かび上がったんだ!
「なっ!?」
「ルース!?」
まずい、このタイミングでダグと分離か!
長時間共有してたのを忘れてた。
ダグがこちらに駆け寄ろうと踵を返す。だが――
「来るな! ダグ!」
騎士がダグを狙って突進してくる。待ち伏せされていたんだ!
咄嗟にダグと騎士の間に堅氷壁を展開する。
あとは俺の防御だが、さすがに間に合わねぇ!
「堅氷―――」
「氷結塔!!」
「うおっ!?」
轟音とともに足元から氷の塔が伸び、俺は空へと押し上げられた!
「イザベラか!!」
「当たり前でしょ! それより、早くダグと合体しなさいよ!! 私が援護するから!」
瓦礫の上で杖を構える彼女が叫ぶ。
言われるまでもない。だが、炎が塔の根元を溶かし始めた。
「ヤベッ!!」
「ちょっと、ウソでしょ!?」
蒸気が立ち昇り、塔は崩れ落ちる。
その時、視界に文字が浮かんだ。
『見出す瞳の効果を発動。周辺環境の変化により魔導の杖による究極魔導、嘆きの凍界が発動可能』
「なんで今なんだよぉ!? もっと早く発動できるようになってくれぇぇ!!」
叫びながらも、俺は倒れる塔を滑り降り、イザベラに飛び込む。
「イザベラ!! 欠乏と結合するぞ!!」
「はぁ!? でも―――」
「いいから受け止めろぉぉ!!」
イザベラは一瞬むっとしながらも跳び出し、俺を掴んだ。
そのまま欠乏と結合で体を共有する!
そしてすぐに、嘆きの凍界とかいう魔術を発動するぜ!
「なにこれっ!?」
『はっ! こりゃすげぇ!!』
俺たちを包んだのは――氷の巨人。
六本の腕、赤い瞳、全身から冷気を放つゴーレム。
魔導遺跡で見たあの存在に、今、俺たちは入り込んでいる。
『イザベラ!! すぐにダグを助けるぞ!!』
「分かってる!!」
巨体を操り瓦礫を蹴散らし、俺たちは騎士の前へ躍り出る。
四本の腕で奴を掴み、炎を浴びても凍結が即座に広がり溶けない。
『よっしゃ!! このまま騎士を凍らせちまおうぜ!!』
「それ、賛成!!」
握り締める手から冷気が迸る。
騎士の動きが鈍り、やがて全身が氷に包まれた。
静寂。
目の前に立つのは、氷漬けになった騎士。
「……倒した?」
『あぁ。俺たちで、だ』
確かな実感が胸を満たす。
俺とダグとイザベラ。三人の力で、ついに一体目を仕留めたんだ!
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