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ドンゾコナビ ~滅びの世界で少女導く~  作者: 内村一樹
1章:焼き殺す者

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第27話 まるで、おとぎ話の

 やっと――父さんの仇を討てる。


 火炎の塔の頂で荒れ狂うスザクを仰ぎ見ながら、私は杖を握り締めた。

 ルースたちなら必ずやり遂げてくれる。入念に準備した作戦だ、失敗なんて許されない。


 絶対に成功させる。私が――必ず。


 祈りのような決意に呼応するかのように、塔の頂から瓦礫がひとつ落ちた。


「1つ目!」


 第一の罠が発動した証。すぐに第二の光が塔から漏れ出し、さらに大きな瓦礫が落下してくる。

 計画は順調。ということは、次は私の出番だ。


 ルースが言った。――今回の作戦で最も重要な役目。

 それは、朱雀を地に叩き落とすこと。


「ちょっと、緊張してきちゃった……」


 汗で滑る手から杖を落とさぬよう握り直す。

 そのとき、塔の頂から小さな影が飛び出した。


 ――ダグ!


 開いたパラシュートと、彼の放つ光が視界に映る。

 作戦は生きている。

 確信と同時に、私は杖を高く掲げ、地を突き立てて叫んだ。

氷震激アイス・クエイク・インパクト!!」


 杖が白光を放ち、魔術が発動する。

 だがこれは序章。浮かび上がる紋章を見て、私はさらに声を張った。


氷河壊(グレイシア・コラプス)!!」


 この魔術は試したことがない。


 でも、アラクネの巣で試した氷結塔(フローズン・タワー)の威力を見てたから、心配はしてなかったよ。


 冷気が爆ぜる。

 放たれた力は杖の先だけに留まらず、触れた先ごとに新たな冷源を生み出し、次々と連鎖していく。

 瞬く間に塔全体を駆け上がり、一秒も経たずして――終焉が訪れた。


 ビギビギッ、と耳を裂く音。

 火炎の塔が、縦に引き裂かれていく。


「マズい!!」


 大地を揺るがす衝撃に立っていられず、私は地に叩きつけられた。


 立ってられない!

 それどころか、叫ぶこともできないよ!!

 威力が強すぎたのは、誤算だったかも!


 這いつくばりながら祈る。瓦礫が直撃しませんように。

 数十秒ののち、ようやく揺れは収まった。


 代わりに、激しい砂埃で何も見えないけどね。


「けほっ、かはっ」


 口を開けちゃダメだった!

 のどが痛い……。

 すぐに砂埃からでたい。


 でも、そういうわけにはいかないよね。


 確認するんだ。

 スザクの死を。

 死んでいなかったなら、私がトドメを刺さなくちゃダメなんだから!


 杖を支えに瓦礫を踏み越え、砂をかき分け進む。やがて目に入ったのは――巨大な翼。


 砂の中から突き出たスザクの翼だ。


 それを見た瞬間、私は頭が真っ白になった。

 覚えているのは、輝く杖、喉を裂く痛み、そして降り注ぐ氷の雨だけ。


『ソヴリンの野郎をぶっ殺して、俺たちが英雄になってやろうぜ! そうやって希望を示してやるのが、大人の役割ってもんだろ』


 かつて聞いたバルドの声をかき消さんばかりに、誰かが叫んでる気がする。


 誰だろ?


 杖を振り上げ続けてた腕に痛みを覚えて、ふとそんなことを考えた私は……。

 その叫び声が、私自身の物だということに気が付いたんだ。


雨氷矢(グレイズ・アロー)!! 雨氷矢(グレイズ・アロー)!! 雨氷矢(グレイズ・アロー)!! 雨氷矢(グレイズ・アロー)!!」


 幾千の氷柱が砂埃を吹き飛ばし、世界を白に染める。

 その中で――影が動いた。


 まさか、まだ生きてるの!?


 恐怖と驚愕、そして腹の奥から沸き上がる熱。

 叫ぼうとした瞬間、腹に衝撃を受けて私は吹き飛ばされた。


「がはっ!?」

「イザベラ!! しっかりしてっ!!」


 腹のあたりから聞こえてくる声は、ダグ!?


「ダグ!? どうして邪魔するの? スザクに、とどめを刺さないとっ!」


 そう言って立ち上がろうとした瞬間、私は再び彼に突き飛ばされた!


「なっ!! ダグッ!!」


 怒りを向けかけた私の目に映ったのは、灼熱の閃光。

 私とダグの間を焼き裂く、熱線。


 そんなものを放つことができる存在なんて、限られてるよね。


「イザベラ!! スザクは死んでないよ!! それに! もう鳥じゃない!」


 砂埃の向こうで響く声。

 鳥じゃない? どういう意味――?


 疑問を口にする間もなく、それは現れた。


 砂を裂き、姿を現す影。

 抜き身の大剣を握る騎士。背にはスザクの名残のように、大きな翼を一対携えてる。


「……なに、それ」


 思わず漏れる呟き。

 答えの代わりに、大剣が振り上げられる。

 瞬く間に赤く輝き、熱線の剣となって振り下ろされ――


 ――おとぎ話に出てくる騎士のようだ、と。

 そんな場違いな感想が、私の脳裏をかすめたんだ。

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