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第11話 俺の武器

 俺が知ってる限りでは、地上に住んでた人間のほとんどはソヴリンによって殺されちまったはずだ。


 じゃあ、この魔導遺跡っていう場所は何なんだろう?


 もしかしたら、ソヴリンから逃げ延びた人間たちが反撃のために作った施設だったかもしれない。


 だけどなぁ。

 今のところそんな様子は見られないんだよな。


 生き延びた人間の子孫がいたり、ソヴリンに対抗するための兵器が眠っていたり。

 そんなものを期待してしまうのは、俺だけだろうか?


 1つ、魔導書:凍界とうかいがあったのは事実なんだけどなぁ。


 正直に言うぞ?


 内容がしょぼくないか?


 確かに、氷の魔術を使えるようになったのは収穫だ。

 でも、それだけで本当にソヴリンに太刀打ちできるとは思えないんだよなぁ。


 もっと、ド派手にあいつらをぶっ飛ばせるような魔術をのこしておいて欲しいもんだぜ。


「ちょっとルース!! 集中してる!?」

「わりぃ、考え事してたぜ」

「霧で身を隠してるからって、気を抜かないでよね」

「分かってるよ。それより、前方に2体いるから右に迂回うかいしろ」


 視界の悪い霧の中、俺たちはそこいらを歩き回ってるガーディアンを避けながら、ひたすら前に進んでる。


 狭い迷路の先にあったこの場所は、訓練にでも使われたんだろうか?

 やけに何もない開けた場所だったんだよな。


 ちなみに、今俺たちを包んでくれてる霧はケトルと堅氷壁ソリッド・アイス・ウォールを組み合わせた新魔術、ミストだ。


 遺跡の入口で発生させた霧よりも、格段に濃いのを作れるから、重宝ちょうほうしてるぜ。


 敵に見つからずに進めるなら、それのがいいからな。


 ぼんやりとした赤い光を避けつつ、歩みを進めるイザベラ。

 俺はというと、彼女の頭の上で周囲を警戒してる。


「このままなら、戦ったりせずに進めそうだな」

「それは良いんだけど。こっちに進んで大丈夫なの?」

「あぁ。このまままっすぐ行けば遺跡の出口っぽい扉があるはずだぜ」

「ホント? それなら急がなくちゃ」


 そう言って足取り軽く歩き始めるイザベラ。

 気持ちは分かるけど、もう少し慎重に進もうぜ。


 なんて注意を促そうとした直後、不意にイザベラが足を止めたんだ。


「ん。どうした?」

「ねぇ、ルース。あいつ、なんか変じゃない?」


 そう言って彼女が指さしたのは、左の方に見える赤い光だ。


「変ってどこがだ? ガーディアンの目だろ?」

「そうなんだけど。なんていうか……他のやつと違う気がして」

「違う?」


 色も形も同じだけどなぁ。


 俺はそれ以外に何か変な個所がないか、ジーッと観察してみることにした。

 その結果わかったことは特になし。


 他のガーディアンたちと同じ赤い目が、霧にぼやけて見えてるだけだ。


 そう。

 俺が観察してた間中ずっと、な。


「おい……もしかして」

「やっぱりそうだよね。あいつ、ずっとこっちてる」

「まさか、霧の中なのに俺たちが見えてるっていうのか? でも、他の奴らは全く反応して無いぞ?」


 俺たちが気づけていない何かが、そいつだけにあるのか?


 そんな疑問を俺が口にしようとした瞬間。


 予想もしていなかった形で、疑問の答えがつまびらかにされる。


 俺たちをジーッと見つめていた2つの赤い瞳の中間に、もう1つ、赤い瞳が現れたんだ。


 それだけじゃない。

 それら3つの瞳を囲むように、いくつもの瞳が姿を現していく。


 そうして気が付けば、2つだった赤い瞳の輝きが霧の中で混じりあい、1つの大きな瞳へと変貌へんぼうを遂げたんだ。


「イザベラ!! 走れ!!」


 目が合った。

 そう感じたと同時に俺は叫ぶ。


 白い霧を切り分けて駆けるイザベラ。


 当然、巨大な瞳のガーディアンは俺たちを追いかけて動き出したらしい。


 周囲にいる他のガーディアンを豪快に弾き飛ばしながら迫ってくる足音は、鳥肌ものだぜ!


「もっと速く走れ! 追いつかれるぞ!」

「走ってる!!」


 そう叫ぶ彼女が手を抜いてるわけないよな。


 ってことはだ、迫ってきてる巨大な瞳のガーディアンはとんでもない速度で走ってるらしい。


 このままじゃ、本当に捕まっちまう。

 仕方がない。

 ここは俺が応戦するしかないな。


 こんな状況で魔導書を開き、魔術を発動するなんて芸当を、イザベラにできるとは思えないからな。


「ここは俺に任せて先に行け!! 絶対に逃げ延びろよ!!」

「えっ!?」


 言い争ってる暇なんかないからな。

 俺はそのまま彼女の頭から飛び降りつつ、堅氷壁ソリッド・アイス・ウォールを展開する。


 足元に展開した氷壁に着地した俺は、迫りくる巨大な赤い瞳に注視した。


 よし。

 少なくとも今は、コイツも俺だけに注目してるみたいだな。


 堅氷壁ソリッド・アイス・ウォールもあるんだ。

 イザベラが見つかる可能性はかなり減らせただろう。


 あとは、いかに時間をかせぎつつ、逃げる方法を探すかがカギになってくる。


「逃げ回ることに関しては、少しは自信があるんだぜ? それに、俺の武器は氷魔術だけじゃねぇからな!」


 迫りくる巨大な瞳のガーディアンは、霧の中に紛れてる俺たちを見つけてきやがった。


 だったら俺も、自称神様から貰った見物する瞳(スペクテイター)で、ガーディアンの弱点の1つや2つを見つけてやろうじゃねぇか!


「手加減なんかしねぇからな! むしろお前が手加減しろよぉ!!」


 勢いを殺すことなく堅氷壁ソリッド・アイス・ウォールに突っ込んでくるガーディアン。


 急いで飛び降りてて正解だったぜ。

 危うく氷壁もろとも粉々にされるところだった。


 って、そんなことよりも今は、こいつの弱点を探れ!!


 突進の勢いで姿勢を崩したガーディアンは、のそのそと起き上がっている。


 その様子を見物する瞳(スペクテイター)で見た俺は、こんな情報を手に入れることになったんだ。


『複眼のガーディアン。モデル名はコキュートス』


 浮かび上がる説明文をマジマジと読んでいると、コキュートスが俺の方を振り返った。


 なるほどな。

 さっきまでは濃い霧のせいで気づけてなかったんだけど。

 いま、はっきりと分かったぜ。


 こいつの瞳は1つの大きなものなんかじゃない。

 いくつもの瞳が集まることで、巨大な瞳を形成してるんだ。


 それらの中の2つだけを開いておくことで、他のガーディアンに紛れ込んでたってことだな。


 でもそうだとすると、少し引っかかることがあるよな。


「まるで、俺たちが霧を使うってことを分かってたみたいじゃねぇか」


 当然、俺のそんな言葉にコキュートスが返事をするわけがない。


 ダンマリか?

 なら、俺の方から動かせてもらうぜ!


「ミスト!!」


 俺も奴も瞳が武器だ。

 だったら、一方的に視認できる状況を作った方が勝ちと思うべきだろ?


 コキュートスが目を複数持ってるっていうのなら、俺だって、色んな種類の目を使い分けることができるんだぜ。


「複眼のルースってか? いや、微妙だな。その通称はお前にゆずってやるよ!」


 すかさず見通す瞳(フォーキャスト)に切り替える。

 これで俺は、霧の中を見通せるぜ!


 さてさて、それじゃあじっくりと弱点を探していくとしよう。

 もちろん、コキュートスがイザベラの方に向かうのを阻止そししながらだけどな。


 ホントに、世話が焼けるぜ。

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