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主人公の回 前編
ナースコールもしていないし、こんな時間に先生が来たことだって、今までない。面会時間だって、とうに過ぎているし、面会の人の可能性もないだろう。(いや、面会に来る人なんて、そもそも誰もいないのだが〕
色々なことを頭の中で思案し終えた後、意を決して、横に立つナニかに声をかけようとした時、ナニかの方から口を開いた。
「こんな夜分遅くに失礼致します。私、こういう者です」
そんなコトバと、貼り付けられた様な笑顔とともに、差し出されたモノは名刺だ。(いや、まともに働いたこともないから、それが本当に名刺かどうかは、よくわからないけど)テレビや漫画なんかで、よく見る様なステレオタイプの挨拶の仕方と、差し出されたモノは、カードくらいの大きさの紙であるし、きっとそうであろう。
僕は暗闇の中で、その差し出されたモノをよく見ることが出来ないので、近くにあるライトを点ける。
その時、ナニかと思っていたものは、普通のヒトだとはっきりと認識できた。