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闇が日差しを照らせたときは、  作者: いせゆも


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 翌朝、昨日と同じ談話室にジュは屹立する。そこにはおろおろして困っていたか弱い少女はいなかった。

 昨日はニム候補が五人いたのに、今では二人。

 ジュと、黒髪の女性。

 対するはお仕え候補。こちらは顔ぶれが変わっていない。当たり前であるが。

「決めてもらいます」

 試験監督なニム(ミイはニム長と言っていたか)の言葉。部屋に入ったらすぐこれだ。悩む暇もあったものではない。

 ジュの隣に立っている黒髪の女性は動かない。ジュの行動をただ只管に待っている。

 それもそのはずだろう。ジュの考えていることが正しければ、だが。

 さあ、早い処、勝負をつけよう。

 ジュは椅子にふかぶかと座る、金髪の少女の前に立った。

「わたしは、ミナヤ=クロック様。貴方へお仕えします」

 そう言った時、部屋の空気が俄かにざわついた。

 金髪の少女、ミナヤ=クロック。

 黒髪の女性、ニムナ=クロック。

 セゴナにおいて、一番偉い者と言えば、神様そのものなミナヤか、ニムの神様、ニムナか。このどちらかしかない。

 他の四人のお仕え候補が、眼を合わせて驚きあっている。「ミナヤ?」「……いや、ミナヤ様はもっと」などと、そんな感じだ。

 どうやら、お仕え候補の四人は、どこから連れてきたのか、本当に一般人のようで。ジュの選眼は正確だということが、図らずも証明されてしまった。

「よろしいのでしょうか」

 最終確認を取るニム長。鋭い眼光はジュの奥深くに眠っている恐怖心を呼び起こしそうだ。

「――と、言いたいところなんですが」

 ひょいっと、ジュは軽い動作で一歩後ろへ引いた。

「わたしは、誰かを選ぶことができません。選んではいけません」

 ジュそう言い放った時、談話室は談話というその名が泣くほどに沈黙が貫いた。

「それは、試験放棄とみなしてよろしいか」

 ニム長はジュの選択に驚いた様子はまるでなく、まるで台本に書いてあるかのように棒読みで言った。

 ……なるほど、こちらがこうすることまで、お見通しだったというわけか。

「いいえ違います。わたしは貴賤を殊更説いたりしません。誰かを選ぶ。そんなことをしていたら、本当の意味で奉公することなどできません。例えミナヤ様や、ニムナ様がこの部屋にいたとしても。わたしがニムとなるからには、贔屓などしません」

 完璧を目指すのがニムという職業。

 であれば、主人を選り好みしていて、どうして心から使用人となることができよう。

 ミナヤを尊敬するのなら、ニムナを見習うのなら。

 誰の使用人にもあるのが、ニムなのだ。

 ぱんぱん。乾いた音が、色を伴って室内を包む。

 音源では、ミナヤが拍手をしていた。

「やっぱり気が付けたのね。ニムナのことも。まあ、あんだけヒントを与えたら分からない方が鈍いかもしれないけどさ。やり過ぎたかなあって、今では反省してるわ。ま、なんにしろここまで言い当てたんだからさ……文句なしにあんたは今年のニムよ。おめでとう」

「これが今年の私もどきですか。こんなものを登用するなど、ミナヤも趣味が悪い」

「なによー。いいじゃん、こんな素朴っ子も。バランスが取れるでしょ。あー、あとミイ=クイ。外で待ってないで、部屋に入ってきたら? サイサ。妾が許したんだから、職務放棄だとか言わないこと」

「あ、ありがとうございますミナヤ様。それとごめんなさい、ニム長。……やっぱり、協力してよかった! ちゃんと試験の意味を理解してくれた!」

「わ、わ」

 部屋の外にいた黒のツーピースを纏ったミイは部屋に入ってきて早々、ジュを抱きしめた。

 それを見ていたニム長は叱りたさそうにしていながも、ミナヤのお達しが出た手前、なにも見なかったことにしたようだ。抱きしめあう二人の若い女二人を、拍手をしてお茶を濁す。事情が未だ掴めていない、全くの蚊帳の外なお仕え候補までもが、頭に疑問を浮かべつつも、にこやかな笑顔で拍手を送っている。

 こうしてジュは晴れて、ニムとなることができた。

 しかし、ジュがニムとなることで、新たに発生する問題もまた、ある。


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