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私のものに……

 私が目を覚ますと、そこには光の魔法師がいて、私に回復魔法をかけていた。


 起き上がり周りを見渡す、私はベッドに寝かせられていた、どうやら病室らしい。


 私が部屋を見渡していると、目の前の女性が声をかけてくる。


「あ、起きたんですね。初めまして、おはようございます」

「初めまして、おはようございます」

「私はエイミーです。あなたのことを治療したのですが、どこか痛いところなどはありませんか」

「はい、大丈夫です、ありがとうございます。あ、私はルーイというのですが、戦いの後どうなったか知っていますか」


 昨日、私が意識を失ってからの話をエイミーに尋ねる。


「私も現場に着いたときは全て終わっていたのであまり詳しく分かりませんが、私が現場に着いたときは、クオンさんが敵の中隊長を倒していて、周りにはクオンさんたちの部隊のお仲間の死体が散乱していました。それを見てクオンさんは落ち込んでいました……だけどお仲間さんたちは満足そうな表情をしていました、きっと後悔は無かったのでしょう」


 エイミーの話を聞いていくと、どうやらあの後、何かあったらしい。

 私が意識があるときはヴォルフたちは大怪我をしていたが、まだ生きていた。

 多分、私が意識を失ってからヴォルフたちにも何かがあったのだろう、そして満足そうに死んでいったと……


 確かに悲しいが、私はクオンが無事ならばそれでいい……それでいいはずなのに、何故か涙が止まらない。


 ベッドのシーツに私の涙が垂れる。


 確かにヴォルフとは喧嘩ばかりしていた、だが嫌いじゃなかったし、部隊のみんなとは長い間一緒に楽しく笑いあっていた。

 なんだかんだ戦争になる前の訓練時代と戦争になってからはずっと一緒にいて、魔法のことなど関係なしに昨日まで笑いあっていた。そんなみんなが死んだのだ、涙が出ないはずがない……


「私が慰めるよりも、クオンさんを呼んで来た方がいいですよね、呼んできますね」

「……ありがとうございます」

「奥の方に着替えとタオルと水があるので、それで汗などを拭いて、着替えてもらってもいいですよ」

「わかりました」



 エイミーが部屋から出ていくと、私はタオルを濡らして、汗を拭いていく。

 時間が経つと、身体の汚れと一緒に悲しみも少しは薄れていく感じがした。

 

 私は汚れを落とすと服を着替えるために、ベットの上に座った。


――しかし、その時、病室のドアが急に開いた。


「ルーイ! だいじょうぶ……え?」


 そこには裸でベットに座る私を見て驚いているクオンがいた。


「女?」


 私とクオンは急すぎる展開に、理解が追い付かずに、見つめ合って、お互いに動けないでいた。

 しかし、少し経って状況を理解したクオンは、土下座する勢いで謝った。


「……ごめん! ルーイが女とは知らずに急に入ってしまった」

「クオンが謝る必要はないよ……僕……いや私の方こそ、女だってこと隠しててごめんなさい」


 私は裸を見られた恥ずかしさよりも、クオンに女だということを隠していた自分に嫌悪感を抱いた。しかしクオンは怒ったりはしなかった。


「何か理由があったんだろ?」

「……うん、でも、もうクオンに話すことにします」


 私は昔のことを話すことにした。

 だが、裸を見られている恥ずかしさが急に襲い掛かってきた。


「でも、その前に服を着たいから後ろを見ててよ」

「あ……ごめんなさい、男に裸を見られるのは不快だよな」


 クオンが後ろを向いた。

 私は服を着ていく。

 

 確か、訓練所にいる時も、みんなと一緒に風呂は入ったことが無かったし、戦争中も裸を見せたことはない。

 だがてっきりクオンは気付いているものだと思っていた、だけど予想よりもクオンは鈍感だったらしい。


「こっち見ていいですよ」


 私が許可を出すとクオンは私のところを見た。

 少し恥ずかしそうだ、きっと裸を見たことを意識しているのだろう。


「ごめん、わざとじゃないけど裸を見てしまった。どうか許してくれ」


 クオンが真剣に謝ると、私は真剣さを見て、少しクスッとした。


「許すも何も怒ってませんよ。恥ずかしいけど、別にクオンになら裸を見られても構いません」


 クオンは私が裸を見られても構わないという言葉を別の意味にとらえたようで、その言葉にはあまり反応を示さなかった。やはり鈍感だ。


「ありがとう。でも男の振りをしていたのは理由があるんだろ?」

「はい、クオンには聞いてもらいたいので話します」


 そのあと、私は過去の話をした。貴族だったことやなんで女の振りをしていたか、魔法の才能がなかったことなどいろいろだ。


「……ルーイもいろいろあったんだな、何も知らないでいろいろ口を挟んでごめんな」


 クオンが謝る必要がない。だって私はその言葉に救われたのだから

 

「謝らないでください。私はあなたに救われたんです。別に魔法が無くてもいいんだって……ありがとうございます」

「それならよかった」

「はい」


 今度はクオンが私に話さなければならないことがあると言った。

 ヴォルフたちの事だろう、だが私以上にクオンは悲しんでいるだろうし、私は別にそのことを知っている。


「実は……」

「言わなくてもいいです。ヴォルフたちのことですよね……エイミーさんに聞きました」


 私がそう言うと、クオンは下を向いた。


「ヴォルフはきっと後悔はなかったと思いますよ……クオンがいない時もずっと兄貴は凄いんだぜって言ってるんです。そんなクオンに認められて、任されて死んで行ったんです。私たちがいつまでも後悔していたら神の元にいるヴォルフが浮かばれません」


 私の言葉を聞いたクオンは顔を上げる。


「そんなことはわかってる。わかってるんだよ……でも人はそんなに器用な生き物ではないんだよ……俺は弱い人間なんだ」


 その落ち込んだクオンの姿を見ると、我ながら最低だと思うが、クオンを自分のものにするには今しかないと感じた。


 私はクオンを抱きしめる。体温が直に感じる、鍛えられた厚い胸板や細見に見えるが筋肉の付いた腕などの固さを感じる、心臓の鼓動を感じる、


 もう私は我慢が出来なかった。クオンの全てを私のものにしたかった。


「後悔がまだあるなら、忘れちゃえばいいんですよ……」

「どうやって? そんな割り切りができるなら、俺はこんなにも不器用に生きてない」


 私は心臓をドキドキさせながらも、クオンに近づく。そして耳元で囁いた。


「なら、私を使って忘れればいいんです」


 しかし、クオンは私の提案にすぐにうんとは言わなかった。


「俺はルーイのことが好きだけど、それは異性としての気持ちなのかわからない。それにルーイだって好きじゃない奴に抱かれるのは嫌だろ?……そんな状態で抱いたところで君を傷つけてしまう」


 私はそれを聞くと、クオンは私のことをしっかりと想ってくれているのだなと感じて、お腹の奥が熱くなった。もう子宮の無いはずなのにだ……


 そして我慢できずに、クオンにキスをした。触れ合うだけのただのキスだ。

 一瞬だったが柔らかい唇の感触に理性が飛びそうだった。


「これが私の気持ちです……嫌でしたか?」


 私は勝手にキスをしたことに不安を覚えた。


「全然、嫌じゃないよ。でも俺はルーイを傷つけたくないんだ。自分の気持ちもわからない状態で君を抱いてもそれは恋愛じゃなくて、身体だけの関係だ」

「私は別に傷つきません……身体だけの関係でもいいです」 


 これは私の本心だ。むしろ私がクオンの重荷になりたくない。


 今度は私はクオンの理性を飛ばすために今度は深いキスをした。お互いの身体が交じり合うような感覚だった。


「私はクオンのことが好きです」


 そう言って私は上着を脱いだ。

 そして、クオンの服の中に手を入れていく。固い胸板の感触が直に感じる。


 私は恥ずかしがりながらも、クオンを見つめる。


 するとクオンがベッドに押し倒してきた。


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