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私の努力

 義姉の成人の儀式から2年が経った。


 今日はついに私の元服の日だ。


 私はこの2年間、優秀な姉に少しでも追いつこうと必死に頑張ってきた。

 寝る間も惜しんで努力をしてきた、そのためいつも目の下は隈だらけ。

 まだ魔法は使えないが、成人を迎えて魔法を上手く使えるようにと、魔力操作の練習を常にしてきた、そのため魔力切れでいつもふらふら。

 2年前の私の美貌は見る影も無かった。



 父が声をかけてきた。


「モネ、あんまり緊張しなくてもいいぞ! お前はどうせ当主にならないのだから」


 私はこの2年でタラッサ公爵家の当主候補では無くなっていた。何故ならフェールという私以上に優秀な姉がいるからだ。


「では、私たちはこれからフェールのパーティがあるから元服には一人でいけるな?」


 父と母と姉は私の成人の儀式にはついて来てくれない。姉が伝説級魔法師になったお祝いパーティがあるからだ。

 これはどのくらい凄いかというと、伝説級魔法師は王国でも10人もいないほど稀有である。それに、それぞれが英雄と呼ばれる人たちだ。

 義姉は、その伝説級魔法師に18歳という、王国史上歴代最年少でなったのだ。


「楽しみね! パーティには国王陛下も来てくださるそうよ」


 完全に私の元服の儀式は興味がないようで、母は姉のパーティに国王が来ることを嬉しそうに言った。

 だがそれを聞いた姉は少しだけムッとしていた。いつもは表情を見せない姉がだ。珍しい。


「では私たちは行くが、くれぐれもタラッサ家の恥にはならないようにな。お前は当主にはならないとはいえタラッサ家の一員なのだから」


 父はそう言うと母と姉を連れて、パーティに行ってしまった。父と母の期待は完全に姉に向いている。

 だが私はもう嫉妬などという感情は無かった。姉に勝てるわけがないからだ。だからせめて元服の儀式で神に認められて姉の役に立てるようになろう。私はそう決心した。


「よし……頑張ろう」




 元服の儀式が始まった。

 だが私の心はすぐれなかった。何故なら沢山いるはずの領民達がほとんど見えないからだ。ほとんどが姉の姿を見にパーティに行ってしまったらしい。


 私が落ち込んでいると、目の前に司祭がやってくる。


 司祭は周りを見渡すと私に手をかざした。


 しかし、私の身体は姉と違って光らない。


「モネ・タラッサを神はお認めになりませんでした。もっと神を信仰しましょう。そしたらいつの日か神に認められる日が来るでしょう」


 私はその言葉を聞いて呆然とした。毎日、ふらふらになるまでしてきた努力はどうなるのだろうか? 


 姉のパーティに行かずに私の元服を見に来てくれた領民たちの視線が痛かった。期待していたのに裏切られた、というその視線が。


 その時、日ごろの無理も重なりもう限界だったのだろうか、私は倒れた。



――



「……やはり、私の仮説は正しかったようね」


 私は誰かの声で目を覚ました。


 確か、元服の儀式で倒れて……

 そうだ。私は神に認められなかったようだ。

 目の前には姉がいる。


「あら? 起きたのね、おはよう」


 姉はいつもと変わらずに声をかけて来た。


「お姉様。おはようございます」


 私の心は沈んでいる。この2年間……いや、15年間の人生を無駄にしたのだ。私は神に認められなかった。


「私は神に認められませんでした」


「神ね……」


 姉は何か考え事をしているようだった。


「まあ、そうね……あなたはせいぜい、希少級魔法師になるのが限界ね」


 その言葉を聞いて私は絶望をした。

 魔法師というのは階級がある。下から、普通級、希少級、特別級、伝説級、神話級となっている。


 下級の貴族家では希少級でも許されるだろうが、最上位の公爵家ではせめて特別級で無くてはならない。

 

 私は神に認められなかったが、それでもせめてと少しの希望を持っていた。だがその希望も義姉の一言により打ち砕かれた。

 私、モネ・タラッサの15年間の人生は無駄になったのだ。




 父が私を呼び出す。

 いつも私たち貴族が魔法を使えない平民や奴隷に見せるような侮蔑の表情をしていた。


「まさか、希少級とはな……公爵家の面汚しめ、神童と名高いフェールを養子にして正解だったな。あの子は素晴らしい魔法の才能を持っている。お前のような無能と違ってな……今まで大事に育てて可愛がってやっていたのに、よくも私を裏切ったな!」


 その低い声が怖かった。その侮蔑の視線が怖かった。私の人生を否定されているようで。


「はい、すみません。お父様」

「お前は当主にはならないが、公爵家に泥を塗るなと言ったはずだ」


 私は誰よりも努力はしてきたつもりだ。そんなこと言われたところで私のせいではないだろう……


「すみません」


 だが私は謝ることしか出来なかった。


「まあいい、まだお前は補欠(スペア)という価値があるから家に置いといてやろう」

「ありがとうございます」


 この時、私は努力をして見返してやろうと決意した。


義姉目線の話も投稿しています。 https://ncode.syosetu.com/n0925hc/

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