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天才すぎる義姉

――いつだろう、私が才能(魔法)を気にしなくなったのは。


――いつだろう、私があなたを好きになったのは。


 あなたのおかげで、私は人生をやり直せた。



――――



「魔法の才能がないお前は、歴史あるタラッサ公爵家に必要ない」


 16歳になった私は、父からそう言われて公爵家を追放された。

 私は王国の公爵家の第一子の長女として生まれた。第一子ということで、両親や領民からとても期待を寄せられた。


 この国、セイドリーテ王国の貴族というのは才能至上主義だ。

 特に一番重要なのは魔法の才能だ。

 だが、家を追放されるほど、私はそこまで才能が無かったわけではない。


 私が要らなくなったのは優秀な姉のせいだ。



 私が12歳の頃に姉が養子として家に来た。その時のことは今でも鮮明に覚えている。


「初めまして、私はフェールです。よろしくお願いします」

「フェールはとある方から預かった子でね、もうすでに魔法の才能を開花させているらしい」


 父はそう言って義姉を私に紹介した。姉は当時、14歳だった。だがその美貌はすでに完成されていた。サファイヤのような澄んだ青髪と瞳、肌は陶磁器ように真っ白、纏う危なげな雰囲気は同性の私ですら、くらくらするほどだった。


 だがその美貌以上に鮮明に覚えているのは、その瞳に宿る狂気だった。その澄んだ青色の瞳は底の見えないほど深い。何か目の奥に暗い感情を宿しているようだった。

 私はその瞳に畏怖した。



 それから姉が来てからというもの私の生活は変わってしまった。


 姉は持ち前の美貌だけではなく、何に関しても才能があったのだ。


 まずは貴族にとって一番重要とされる魔法の才能。魔法の才能というのは、基本的に成人の時に行う元服という儀式によって開花されると言われている。

 だが姉は成人前にして魔法の才能を開花させ、王国でも滅多に使える人のいないとされる上位の魔法を使いこなしてた。


 次に頭脳。貴族にとっては魔法の次に大事な才能とされている。

 この才能も姉は凄まじかった。もう当時の時点で驚異的な頭脳を見せていて、いろいろな発明や画期的なシステムを作ったのだ。

 例えば通信機。これは対となる魔道具どうしで長距離でも話せるという画期的な発明だ。

 他には王国軍の階級システム。これは戦争の際に大いに役に立つ画期的な考えだった。


 かく言う私も、成人前にしては魔法の才能も頭脳もとても優れていて、両親や領民から期待されていたが、姉は両者とも私の才能を上回り、両親や領民の期待は姉に移った。


 確かに姉の才能に嫉妬はしたが、姉は才能があるからといって傲慢さはなく、私に対しても嫌味なく接してくれた。今思えばこれは勘違いだった。

 そんな姉のことを私は瞳以外は嫌いになれなかった。


 そんなある日、私は気になり姉に聞いたことがある。


「お姉様は、なんでそんなに凄いの?」


 姉は私をその考えの読めない青い目で見つめた。


「そうね、愛する人のためかしら。今度は誰にも邪魔させない……」


 姉の瞳からは狂気が溢れていた。その時の危なげな雰囲気は、まるで毒を持った青いトリカブトのようで、ゾッとした。



 そんな姉が成人を迎える時が来た。


 その日は、王国一の才能と名高い姉の元服姿を見ようと人々が公爵家の前に集まっていた。


 姉は青いドレスを着ていた。青い髪と瞳に傾国の美貌、青いドレスに白い肌。纏う危なげな雰囲気。その姿に領民全てが魅了された。


 元服の儀式を執り行う司祭がやってきた。

 司祭は領民を見渡すように目線を一周させる。何かを確認しているようだった。

 

 司祭は確認が終わると、姉の前に出てきて手をかざす。


 すると姉が光に包まれた。

 

「フェール・タラッサを神はお認めになられた!」


 その言葉を聞いた。領民が騒ぎ立つ。


 次の瞬間、姉の魔力が急激に増えた。


 そして、姉の身体から膨大な青い魔力が溢れ出る。


 青い光を纏って光を浴びるその姿はまるで


ーー深海で太陽の光を浴びる人魚のようだった。


 その神秘的な光景に領民たちは大歓声を上げた。


 その時は私ですら、心が高ぶって興奮をしていた。嫉妬する気にもなれない……流石、お姉様だと。


 領民や両親は騒ぎ立る、今日の夜は祭りになるだろう。

 みんなが興奮して大歓声の中、私はお祝いの声を掛けようとお姉様を見た。だが私は声を掛けられなかった。


 周りの人々は感動して喜んでいる。

 感動の余り、涙を流している者もいる。

 だが……そんな中、


ーーお姉様だけは、凄まじいほどの殺気を瞳に込めて誰かを睨んでいた。


 だが、瞳以外は笑顔で領民に手を振っている。


 私以外、その狂気に気付いていなかった。


 そして、その視線の先にいたのはーーだった。


 私は流石に勘違いだろうなと思い、そっと心に蓋をした。

 

この作品は不死の英雄~彼女に振られて異世界転生~という作品のヒロイン視点の物語です。もしよかったらこちらの作品も見てみてください。胸の熱くなる展開盛りだくさんです。

https://ncode.syosetu.com/n7600ha/

こちらのURLもしくは下の方にあるリンクから飛べます。

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