表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
96/120

95:辺境領主VS王女殿下

「ロビン殿、あなたにはあとで話したいことがある。今は私の妻にこれ以上近づかないでもらおう」

「あはは、いつまでそう言っていられるかな~? お前もわかっているはずだよ」

「……ロビン殿こそ。私の妻ばかり見ずに、後ろを確認したらどうかな」

「へっ?」


 彼の後ろでは、目をつり上げた王女殿下が腕を組んで仁王立ちしていた。

 

「ロビン? いなくなったと思ったら、そんなところで何をしているのです?」

「……っ!? あはは~、なんでもないよ~」

「そうかしら?」

「うんうん! ミーアは怒った顔も可愛いね~」

「……はあ。まあいいですわ、そろそろ疲れましたし退場しましょう。目的の人物も見つけたわけですし?」


 そう言うと、ミーア殿下は挑戦的な目つきでナゼル様を見上げた。


「久しぶりですわね、ナゼルバート」

 

 少し離れた場所で、レオナルド殿下とラトリーチェ様が様子を窺っている。

 ナゼル様はミーア殿下に形式的な挨拶をし、ロビン様はそそくさと妻の傍へ戻る。

 

「意外にも辺境生活を満喫していたのかしら。愛人連れなんて、いいご身分ですわね。芋くさ令嬢はどうしましたの」

「隣にいますよ」


 微笑むナゼル様は愛おしげに琥珀色の瞳で私を見つめる。素敵すぎて溶けてしまいそう。


「冗談を。全く別人じゃないの!」

 

 勝ち誇った態度の王女殿下に、ロビン様が小さく告げる。


「ミーア、紛れもなく本人だよ。化粧を取った芋くさ令嬢、意外と美人だったんだ」 

「なんですって!?」


 途端に面白くなさそうな顔に変貌したミーア殿下は、私を見据えて艶めいた唇を開く。


「わたくしの伴侶を誘惑しようだなんて、いい度胸ね。前回の腹いせかしら?」


 あんまりな言いがかりに、一瞬言葉を忘れてしまう。

 

(どうしてそうなるの? 誘惑なんてしていませんけど!)


 むしろ、ロビン様がグイグイ来るので困っていたのだ。

 しかし、当のロビン様はというと……なぜか、嬉しそうな表情を浮かべ始める。


「俺ちゃん、モテモテ~。フゥーッ! 二人とも、俺ちゃんのために争わないで~」

 

 彼の頭の中はどうなっているのだろう。凡人には理解できない。

 隣をそっと見ると、ナゼル様がいつになく無表情になっていた。


(……怒っているわ)


 ずっと一緒にいたからこそわかる。

 まるで人形のような面差しは、かつて「人間味がない」と言われていたらしいナゼル様を彷彿とさせる。


「それはこちらの台詞です。あなたの王配殿が妻にちょっかいを出すので困っています。伴侶の監視は、しっかりとしていただきたい」

「まあっ! 生意気な! わたくしに言い返すなんて、ずいぶん偉くなりましたわね。その鼻っ柱、へし折ってやりますわ!」


 ミーア殿下は堂々とナゼル様を指さして告げた。


「ナゼルバート、命令よ! 隣の芋くさ女と別れて、わたくしの伴侶になりなさい! 不本意だけれど、お母様の意向なのですわっ! 間違っても、わたくしに愛など求めないで。お前は形だけの伴侶、ただ仕事をするためだけの歯車なのですから、大人しく……」

「お断りします」


 表情を変えないまま、ナゼル様が即答した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

1巻 2巻 3巻 4巻
5巻 6巻 7巻 8巻 コミック連載
コミック1巻 コミック2巻 コミック3巻 コミック4巻 コミック5巻 コミック6巻 コミック7巻
書籍発売中です
七浦なりな先生によるコミカライズ


こちらもよろしくお願いします。

拾われ少女は魔法学校から一歩を踏み出す

― 新着の感想 ―
[一言] これ中華式の絶対王朝でしか通らない暴言だよなぁ(白目 西欧式の王政や日本の鎌倉~室町あたりで「一国の主」がこれやったら、その瞬間に貴族や国人が離散してガチで裸の王様になりそう
[一言] もう国に反乱起こしてもいいような気がする(白目)
[気になる点] 王妃のせいか本当に国王の影が薄すぎる。 力がないのか無能なのかわからないけど。 まともに国政してるのだろうか? ちゃんとした統治者がいないと碌なことにならないって事ですね。 [一言] …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ