表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/120

87:文字の汚い王女様(ナゼルバート視点)

 早朝、王都から辺境へ届いた手紙を、ナゼルバートは複雑な表情で眺めていた。

 執務室には、自分の他に手紙を持ってきたケリーもいる。


(この便箋に何かが書かれているのはわかるが、字が汚くて読めない……!)


 筆跡には覚えがある。間違いなくミーア王女のものだ。

 婚約者時代に義務で手紙のやり取りをしたことがあったが、あのときもミミズがのたくったような文字が解読できず、結局数回で文通は終了した。

 

「ナゼルバート様、私が解読いたしましょうか」

「ケリー、できるの?」

「これでも王女殿下のメイドでしたから、先輩メイドにコツを伝授されております。王女殿下の文字が読めないと務まらない仕事ですので」

「助かるよ……」

「では、失礼します」


 ケリーは手紙を受け取ると、丁寧に読み上げ始めた。

 しかし、内容を聞いていくうちに彼女の声はこわばり、ナゼルバートのこめかみにも青筋が浮く。


「……というわけで、領主ナゼルバートの王都帰還と、王配としての職務遂行を期待するとのことです。なんと一方的で身勝手な手紙でしょう。庭の落ち葉と一緒に焼却しましょうか」

「燃やしてはいけないよ。手紙も証拠として残しておかなきゃ。でも、腹の立つ内容だね。しかも、陛下の意見はなく、ミーア殿下の独断で送ってきたか。王妃の意見という可能性もあるな」

「そうですね、ロビン様でさえ王女殿下の行動をご存じないのかもしれません。彼なら絶対に反対しそうですし。王族たちも一枚岩ではありません」

「ベルトラン殿下やレオナルド殿下から、『そろそろ仕掛けるときだ』というメッセージももらっている。俺はミーア殿下の提案に徹底的に反対するよ……アニエスと離婚しろだなんて馬鹿にするのも大概にしてほしいね」

 

 愛おしい妻と別れ、ミーア王女の伴侶になるなんて地獄だ。

 

「ところで、アニエスは?」

「まだ、眠っておられます」

「そうか。また無理をさせてしまったかな」

 

 毎日毎日、アニエスが可愛くて仕方がない。ナゼルバートは開き直っていた。

 今のこの生活を続けるためにも、王女やロビンはなんとかしなければならない。

 さっそく手紙をしたためたナゼルバートは、王子達に連絡を取るべく動き出したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

1巻 2巻 3巻 4巻
5巻 6巻 7巻 8巻 コミック連載
コミック1巻 コミック2巻 コミック3巻 コミック4巻 コミック5巻 コミック6巻 コミック7巻
書籍発売中です
七浦なりな先生によるコミカライズ


こちらもよろしくお願いします。

拾われ少女は魔法学校から一歩を踏み出す

― 新着の感想 ―
[良い点] あらあら、まぁまぁ、ナゼル様ったら溺愛ですね(*´艸`*)
[一言] 王女様なのに文字汚いのかぁ。 書き取り練習を嫌がって上達しなかったのかね?王妃の子が文字が汚いって教育受けているはずなのに。 練習しても上達しなかったのなら、せめて綺麗な文字を書く王女専用…
[一言] えっ、字汚いの? 王女様なのに? 彼女の教育係は一体何をやっていたのでしょうか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ