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15:芋くさ令嬢、処遇が決まる

「王族の醜聞を隠すためだよ。俺の罪は表ではうやむやにされる。ただ、今の状態で王女の伴侶に納まるならば、晴れて無罪だと言われた」

「それって……」

「俺を正式な夫に、ロビン殿を愛人として迎え入れるんだって。で、ロビン殿とミーア王女の子供が男だったら、その子が次の王だ」

「そんな話、ふざけています!」

 

 どこまでナゼルバート様を傷つければ気が済むのだろう。

 

「俺もそう思う。だから、断った。というわけで、俺の辺境送りは変わらない……国王陛下も最初から、俺がこの話を受けるとは期待していなかったようだし、無理矢理結婚させても上手くいかないと踏んだのだろうね」

「国王陛下でさえも、今後の国のことより醜聞隠しを選んだのですか?」

「どうだろうね。陛下と王妃殿下の間で意見が割れているみたいだよ。というのも、さっそくロビン殿が城で色々と問題を起こしているみたいだから。陛下は第二王子に王位を譲ることも検討しているんじゃないかな」

 

 もともと、ナゼルバート様と結婚するのを条件に、王女殿下は次期女王になることを認められていたらしい。というのも、王女殿下は全く政治の勉強をしていないからだ。

 このままでは、国の今後が危ぶまれるレベルらしい。

 ……危ぶまれるって、どれだけ酷いんだろう?

 

「それに伴って、多くの貴族たちが動き出している。ミーア王女と第二王子のどちらに付くか……と」

「普通は陛下の意見に従いますよね? 陛下は今のところ、ミーア王女殿下を王にする予定なのでしょう?」

「陛下も複雑なんだ。現王妃は俺の伯母で、うちの国の、もう一つの公爵家から嫁いできた祖母の血も引いている。二つの公爵家の当主が王妃の味方。そして俺の父を含めた彼らは、ミーア王女の子供を好きなように動かしたがっている。俺が王女の伴侶になるより、却って好き放題できるから歓迎しているかもね」

 

 それって、言い方は悪いけれど……ロビン様はただの種馬ってこと?

 

「うわぁ……」

 

 たしかに、今の王妃殿下はフロレスクルス家の出身で、もう一つのアダムスゴメス公爵家の血も引いていた。

 つまり、フロレスクルス公爵家としては、ナゼルバート様が王女の伴侶になっても、ロビン様の子供が次の国王になっても、どちらでも良くて、「できれば、御しやすい王女殿下とロビン様の子供が王になってくれた方がいいかも」なんて考えを持っているということだ。

 

「そ、そんな身勝手な! 酷すぎます!」

 

 王妃殿下の要望とか王女殿下の我が儘とか、両公爵家の思惑とか諸々のせいで、ナゼルバート様一人が全ての不利益を被るなんて……!

 罪がうやむやにされれば、彼が悪者だと勘違いする人も出てくるだろう。

 憤慨する私を見て、ナゼルバート様は困ったように微笑む。

 

「もう、決まったことだ。彼らは、俺に近くでウロウロされると都合が悪いんだよ」

 

 王族の人たちは、なんて自分勝手なのだろう。許せない!

 だからといって、私に何かできるわけではないのだけれども、理不尽すぎる。

 どうして、こんなに親切で優秀な人が人生をゆがめられ、辺境へ行かなければならないのか。

 

「俺はいいんだ、アニエス嬢。それよりも、君のことだ」

「私ですか?」

「書類の続きには、こう書かれてある。俺が王女との結婚を拒んだ場合、当初の予定通りアニエス嬢と結婚して辺境を治めること……と」

 

 指定された辺境は、この国の端にある小さな領地で、今は王都から派遣された人が上に立っている。

 ところが、魔獣の被害がとにかく多く、なかなか大変みたいだ。

 向こうはナゼルバート様を歓迎したいだろうけれど、罪人という噂もあるので警戒されるかもしれない。行けば、苦労する可能性があった。

 

「俺は最初、君をなんとしてもエバンテール家へ帰す予定だった。けれど、それがいいのかわからなくなってきている。アニエス嬢、顔を怪我しているね?」

「え、ああ、はい。だいぶ、痣は薄くなってきたと思うのですが……いつもと同じなら、一ヶ月もすれば消えるかと」

「……いつも?」

「私のできが悪くって。お父様に殴られちゃうんですよね~」

「やっぱり、エバンテール家へ返す件はなしだ。けれど、辺境へ連れて行くのも……」

 

 ぶつぶつ言って悩み始めたナゼルバート様。横顔もイケメンだ。

 でも、私は予め決めていた答えを返す。

 

「じゃあ、修道院へ行きます」

「反対だ。今の君が行っても、不名誉な噂のせいで針の筵になる」


 間髪を容れず、ナゼルバート様は修道院を却下した。

 

「ええっ!? 平和そうな施設なのに……?」

「修道院は国からの補助金で成り立っている。そして、結婚前の貴族の子女が預けられていることもあるんだ」

 

 それはなんとなく知っていたけれど、国の意向がそこまでダイレクトに反映されてしまうのか……

 家には帰りたくないし、修道院にも行けないとなると、あとは……

 

「じゃあ、辺境についていきます。ナゼルバート様が、お嫌でなければ」

「それも、賛同できかねるのだけれど。辺境では、どんな生活が待っているのかわからないし……」

 

 そうであっても、辺境行きが一番マシな気がする。

 このまま公爵家に居座れるのなら、それが一番だけれど、ナゼルバート様が出て行くのなら確実に無理だろう。

 実家に戻るのは論外だし、修道院へ行く希望も消えた。いきなり市井に出て働くのも自信がない。

 

 ナゼルバート様と結婚という部分がネックだけれど、彼が望まないのなら白い結婚も全然ありだと思う。

 冷遇されなそうだし。子供については、彼が好きになった相手に産んでもらえばいいや。私は出しゃばりませんとも!

ブクマ・評価などありがとうございます。書く意欲が湧きます。

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― 新着の感想 ―
[一言] どうせなら2人で豊かな領地にして、隣の国に入っちゃえ。 隣の国が、まともだといいな。
[良い点] 更新速度が早くて「まだかな~」とやきもきする間も無く最新話が読めるのが何より有難いです。 ぽんぽんと畳み掛けられるように話が続くと、忘れるいとまもなく世界観に浸れるので、なによりの美点です…
[気になる点] 辺境を手中に収めたら貿易拠点というか、商売の地として発展させて隣国と仲良くしちゃえばいいんじゃないですかね…どのみち滅びそうですし
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