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99:暴かれた罪と慌てる二人

「ベルトラン、何故お前がここにいる。お前は……ずっと部屋から出られる状態ではなかったはずだ!」


 動揺した王妃殿下が感情のままに叫ぶのを見て、ベルトラン殿下は口元を緩めた。


「そうだな、誰かさんのおかげで何度か死にかけた。まあ無事に回避できて、今はピンピンしているが。私が歩き回ったら、都合が悪いのか?」


 商人の姿とは打って変わった威厳のある態度で、彼は王妃殿下に嫌味を吐く。

 実際、ベルトラン殿下は何度も王妃殿下に毒を盛られ、危険な目にも遭っていたらしい。


「……というわけで、私は健康に問題がないし、こっそり真面目に勉強したおかげで政務もできる。ナゼルバートに師事した、出来のいい弟のレオナルドも私の味方だ。仮に俺が王位に就けば、ミーアが女王になるより将来安泰だろう」


 レオナルド殿下も、同意するようにうんうんと頷く。

 貴族の中にも、王子たちに期待している者がいて、二人に好意的な視線を送っている。


(王妃殿下がいるから皆静かだけれど)

 

 王妃殿下の機嫌は悪くなる一方で、鼻筋にしわを寄せた彼女はベルトラン殿下に反論した。


「ミーアが王位を継ぐと妾が決めたのだ! お前たちは黙っておれ!」

「王位継承者の決定権は、あなたではなく陛下にあります。そちらこそ黙ってくれませんかねえ……」


 ベルトラン殿下は引かなかった。


「どのみち、ミーアに王位継承は無理だと思いますよ。彼女と隣の男は罪を犯しすぎている」


 隣の男とは、ミーア殿下の後ろにこそこそと移動しているロビン様のことだ。

 彼は王妃殿下に脅えている。


「辺境スートレナでの不正、殺人未遂、修道院での人身売買、令嬢への詐欺行為などなど……お前たちの悪事の証拠は全て掴んでいるんだ。ここで暴露させてもらおう」

「う、嘘よ! 私たちは悪くない!」


 兄の言葉を遮るように、ミーア殿下はロビン様を庇いながら叫んだ。

 

「悪事を働いたのはナゼルバートでしょ? わたくしとロビンは無実だわ!」

「何を馬鹿なことを。ロビンの罪はミーアも知るところだろう。なんせ、人身売買についてはお前も関与しているのだからな。言っただろ、証拠は全て掴んでいると」

 

 

 そうして、その場で彼らの罪状を全部暴露するベルトラン殿下。


「……で、嫉妬から令嬢の実家に圧力をかけ、勘当された令嬢を修道院へ送り、そこから各種権力者に売買していたな。実行犯はロビンだが、ミーアはそれを黙認している。さらに、スートレナでロビンは魔獣を特定の地域に向かわせるよう仕組んで金を得ており、その伝手を使い領主の暗殺未遂まで計画した。未然に防がれたが、ナゼルバートが倒れたら大変なことになっていたぞ」

 

 ミーア殿下は「嘘よ!」を連呼し、ロビン様は一人だけ今にも逃げ出しそうな構えを見せている。


「お、俺ちゃん、急な腹痛が……」

「おっと、逃げるのはまだ早いぞロビン。こっちもお前と同じように証人を呼んでいるんだ。ミーアとお前の罪状を包み隠さず話してくれるそうだ」

 

 笑いを含んだ声で、ベルトラン殿下はロビンに告げる。


「し、知るかっての! 俺ちゃんは、忙しいのっ!」


 走り出すロビン様だけれど、そんな彼をがしっと掴む大きな人影が。


「……やっと会えたな、ロビン。ついに年貢の納め時だ……逃がさんぞっ!」


 力強く彼の襟首を掴むのは、私の護衛として密かにパーティーに参加していたトッレだった。恨みを晴らせる時を迎えた彼は絶好調だ。

 

「ふんぬうっ、大人しくしろ! リリアンヌの悲しみを晴らしてやらねば気が済まん!」

「ちょ、離せよ、筋肉馬鹿!」

「今だ、リリアーンヌッ! ロビンの全ての罪を明らかにするんだっ!」

 

 トッレや二人の王子殿下に促され、最初に証人として登場したのは、かつてロビンに誘惑され、全てを失ったリリアンヌだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 一連のごたごた(王妃の専横、ミーア・ロビンの暴走、国境を持つ辺境ストレーナの領主関連の不祥事、貴族令嬢人身売買にかかわる国内教会の腐敗と令嬢の貴族家の無策)から、国の統治機構が腐りきっている…
[一言] >リリアーンヌッ! トッレはここに至ってそれを天丼するんですかwww リリアンヌさん愛されすぎでしょうwww
[一言] ベルトランが印籠をかかげる黄門様に見える。 ナゼルバート、レオナルドが助さん格さん。 トッレが飛猿? ジュリアンはお銀になって、アニエスは被害者の町娘だろうか?
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